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ホーム全日病ニュース第806回/2013年8月1日号円滑なコーディングに診療情報管理士...

円滑なコーディングに診療情報管理士の配置と位置づけが不可欠

円滑なコーディングに診療情報管理士の配置と位置づけが不可欠

円滑なコーディングに
診療情報管理士の配置と位置づけが不可欠

【DPC評価分科会】
コーディングガイド案を検討。環境整備上の課題が多く提起。15年度活用開始は微妙か

 

 中医協・診療報酬調査専門組織のDPC評価分科会は7月26日の会合でDPC/PDPSのコーディングガイド(案)について検討。委員からは、記述に追加書き込みを要する項目や課題が多くあげられたため、分科会は、ガイド作成を進める厚生労働科学研究班(伏見班)にさらなる文案づくりを要請することを確認した。
 事務局(厚労省保険局医療課)はガイド案を今秋に再度報告してもらい、最終案を目指したいとしている。
 コーディングガイドは、「不適切な事例が散見されるなど医療機関でコーディングの質に大きな差がある」などの指摘があることから、昨年4月のDPC評価分科会で研究班に制作を委託することが決まった。
 その後、昨年12月7日の分科会に松田委員は、ガイドの草稿を示すとともに、その中で、「医学的に疑問とされる可能性のある傷病名」の選択例として心不全など5つの項目をあげ、それらのコーディング処理の考え方を示した。
 一方、研究班はガイド案(ver1.0)を2012年度厚労科研報告書としてまとめた。
 これを受け、分科会はコーディングに関する特別調査を実施、現場の状況を探るとともにガイド案に対する意見を得ることを決め、4月に、コーディングを円滑に実施している5病院を招いてヒアリングを行なうとともに、選択結果に外れ値が多い病院に対するアンケート調査を行なった(調査結果の概要は別掲)。
 この日の分科会は、ガイド案およびヒアリングとアンケートからなる特別調査の結果(総括)をふまえ、委員からver1.0に対する意見を聞いた。
 各委員からは「MDCごとに上6桁の適切な解釈を明らかにするなど、もっと詳しいものにした方がよい」など踏み込んだ提案が多く出た。
 中には、「密度の低い診療を伴うアップコーディングは診療報酬の引き下げ招来につながる。適切なコーディングこそDPC病院の安定運営に寄与するという意識を啓蒙すべきではないか」という意見も出た。
 その一方、コーディングの方法だけでなく、適切な病名選択を担保する環境整備にかかわる課題の提起が相次いだ。
 具体的には、(1)卒前教育から国家試験にいたる過程でDPCとコーディングの勉強と試験に取り組む必要がある(厚労省は文科省等の関連機関に提案すべし)(2)都道府県は保険医登録を行なう医師にDPCの教育を課すべきである(3)院内のシステム構築にかかわるガイドも作るべきである(4)診療情報管理士の介在を明確に位置づけるために“仮病名”をつけることを認めるべきではないか(5)コーディングの標準化は医師だけでなく、全国の審査委員会の医師達や行政官にも徹底しなければレセプトをめぐるトラブルは解消しない(6)このガイドに現場の意見を反映させて改訂を重ねていく枠組が必要などの指摘がなされた。
 ガイド案に厚労省の通知・事務連絡等をセットしたものがコーディングマニュアルになる。
 事務局は、この日の意見を参考にさらなる記述の改善を研究班に求め、今秋にも最終型に近いものを分科会に報告する旨を明らかにした。
 2015年度改定におけるコーディングマニュアルの導入を見込んでいる事務局だが、「今秋に最終案がまとまらない場合は次回改定に導入するのは難しい」とも受け止めており、15年度からの活用開始の見通しは微妙だ。

 

対象病院へ移行申請の期限は9月30日

 7月26日のDPC評価分科会に、事務局はDPC準備病院の募集日程案を提示、了承された。
 それによると、2014年度改定にあわせた準備病院の募集期間は、この9月1日から9月30日(予定)までとなる。
 改定施行日に行なわれる準備病院から対象病院への移行については、対象病院への参加申請時に要件を満たしていることが条件であり、その移行確定時期(基準を満たす期限)は、これまで改定前年の10月31日であったところ、今回は9月30日と1ヵ月早まる。

コーディング特別調査の結果を踏まえた考察(要旨)

●コーディングの手順について

・ヒアリング調査では、入院時・退院時に医師によってDPCコードが入力された後に診療情報管理士や医事課職員が内容を確認する体制をとっている医療機関が多かったが、診療情報管理士や医事課職員がDPCコーディングを行った後に医師が確認する体制をとっている医療機関も認められた。
・アンケート調査では、退院時にコーディング内容を医師が「要請時のみ確認」する医療機関が27.3%となっており、医師が直接コーディングに関わっていない医療機関も存在することが分かった。
・アンケート調査では、退院時に診療情報管理士や医事課職員によるコーディング内容の確認「あり」が9割程度となっているが、逆に1割程度は医師以外による確認が行われていない医療機関が存在することが分かった。

●「適切なコーディングに関する委員会」について

・「開催回数」については、アンケート調査の対象となった医療機関では通知で定められている最低回数である年2回のみ実施している医療機関が49.2%であったのに対し、ヒアリング調査の対象となった医療機関ではほぼ毎月開催されており、適切なコーディングに向けて積極的な取り組みを行っている医療機関においては頻回に委員会を開催していることが示唆された。

●コーディングガイドに対するご意見について

・アンケート調査によれば、コーディングガイドに従って再コーディングした場合、「040130呼吸不全」、「050130心不全」とコーディングされた症例の4割以上が変更になると答えた医療機関が大半を占めており、コーディングガイドがより良いコーディングのために有効である可能性が示唆された。

●その他

・アンケート調査において、「調査対象となった5つの診断群分類においてなぜ適切なコーディングがなされていないのか」について集計した結果、理由として「コーディングの理解不足」、「診療行為を優先したコーディングのため」といった内容が最も多く上げられており、コーディングの考え方の医療機関内での周知が重要である可能性が示唆された。
・また、アンケート調査において、「小児が多いため」「高齢者が多いため」といった理由も挙げられており、「小児」や「高齢者の不全症」について、コーディングルールの整備が必要であることが示唆された。
・電子カルテで使用されている標準病名マスター(ICD-10対応の傷病名マスター)において病名自体が収載されていない例、ICD-10の「.9」コードしか表示されない例等があること、またそれらの問題に対応するための病名マスターのメンテナンスが難しい場合等、適切なコーディングの推進において電子カルテや請求システムが問題となっている場合があるという指摘があった。
・適切なコーディングを行う体制を作るためには、診療情報管理士の役割、位置づけ等の明確化が必要なのではないかという指摘があった。