全日病ニュース

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権限委譲 病院の開設許可は指定都市に、複数県医療法人の監督は都道府県へ

権限委譲 病院の開設許可は指定都市に、複数県医療法人の監督は都道府県へ

権限委譲
病院の開設許可は指定都市に、
複数県医療法人の監督は都道府県へ

【全国厚生労働関係部局長会議】
都道府県はNDB他のデータを2次圏単位等で把握可能に

 

 厚生労働省は全国厚生労働関係部局長会議を1月21、22日に開催。原德壽医政局長は医療提供体制改革をめぐる
諸課題と2014年度の施策を都道府県の担当者に説明した。
 その中で、病院開設等にかかわる事務の都道府県から指定都市への移譲、複数県にわたる医療法人の監督権限の国から都道府県への移譲が検討されていることを明らかにした。
 原局長の説明と関連資料から重要な点を整理した。

 

全国厚生労働関係部局長会議(厚生分科会)における原德壽医政局長の説明(要旨) 1月21日

●医療法等の改正
 医療法等の改正案は2月上旬の閣議決定を目指し、現在、与党と相談をしている。
●医療計画
 医療計画の実効性を高めるために研究会を設置し、都道府県に対する支援策を検討している。2013年度内に報告書等をとりまとめる。併せて、医療計画の評価と見直しを支援するために、参考となる指標のデータを集計・可視化したものなどを収めたデータブックを本年度中に配布する予定だ。
*(資料から)都道府県による医療計画の評価・改善をサポートするために、①NDBレセプトデータ等各種統計の集計・可視化(13年度~)、②データ分析ソフトの開発(13年度)、③上記のデータ等を収載するデータベースの構築(14年度)を進めており、都道府県は指標としてNDB等を情報源とするデータを2次医療圏単位等で把握可能になる。
●病床機能報告制度
 病床機能報告制度は医療法等改正の大きな柱である。都道府県はこの情報を活用して地域医療ビジョンを策定、医療計画に盛り込んでいただく。報告制度、地域医療ビジョンそして新たな財政支援制度によって、医療機関の自主的な機能分化と連携を推進してもらう。
●都道府県の役割の強化
 一方で都道府県の役割の強化も考えている。各都道府県は地域の医療機関が参加する「協議の場」を設置し、医療機関相互で機能分化・連携について協議を行なうことになる。
 ただし、協議が整わない場合には、都道府県知事が病院の開設許可の際に条件を付す、地域で過剰な医療機能への転換の中止要請をする、一定期間稼動していない病床の削減の要請、などの措置を講じることができるようにしたい。
●在宅医療の推進、介護との連携
 医療計画と介護保険事業支援計画を一体に策定するべく両計画の期間を揃える。2018年度以降医療計画を6年に改め、在宅医療など介護保険と関係する部分は中間年(3年)で必要な見直しを行なうかたちにもっていく。
 また、市町村等ごとの将来の在宅医療必要量を地域医療ビジョンに示していただく。さらに、在宅医療を担う提供体制に係る目標や役割分担、在宅療養患者の病状の変化に応じた病床確保のあり方等を医療計画に盛り込んでいきたい。
 在宅医療連携拠点は、モデル事業や地域医療再生基金の事業によって各都道府県で形成されつつあるが、さらに、全国の市町村で取り組んでいただく必要がある。そのために、介護保険法の中に在宅医療連携拠点を制度化し、地域支援事業の包括的支援事業に位置づける。市町村が主体となり、地区医師会等と連携しつつ取り組むことをお願いしたい。
●人生の最終段階における医療
 人生の最終段階に患者の意思を尊重した医療を実現するため、適切な情報提供と説明の上で医療従事者と話し合い、患者本人による決定を基本として進めることが重要と考える。14年度には相談員の配置など体制を整備するとともにガイドラインの周知徹底を図りたい。
●医療従事者の勤務環境の改善
 勤務環境改善への取り組みを今回の医療法等改正に位置づける。具体的には、(1)国が策定した指針等により医療機関が計画的に勤務環境改善に向けた取組を行なう「勤務環境改善マネジメントシステム」の創設、(2)都道府県ごとにこうした医療機関を総合的に支援する「医療勤務環境改善支援センター」の設置などである。
 医療勤務環境改善支援センターの運営は新たな基金の対象事業とし、その詳細と留意事項案を2月の全国医政関係主管課長会議で示す予定だ。
 各都道府県は、医師会、看護協会、病院団体、社会保険労務士会、医業経営コンサルタント協会他の地域関係者や都道府県労働局等との協議の場を設置するなど連携体制の構築に努め、可能な限り14年度中にセンターをスタートしていただきたい。
●新たな財政支援制度
 新たな財政支援制度は都道府県に基金を設け、各都道府県が作成した整備計画に基づき実施する。対象事業は、大きく、(1)病床の機能分化・連携、(2)在宅医療・介護サービスの充実、(3)医療従事者等の確保・養成である。
 国が策定する基本方針や交付要綱の中に、都道府県に、官に偏ることなく官民に公平に配分すること、さらに、地域の医師会など医療関係団体などの意見をよく聞いた上で計画を作成することなどを記載する予定である。
 新たな財政支援制度の補助内容が重複する従前の補助事業は、新たな財政支援制度の中で、より拡充して実施していただくことが可能となる。
 新たな基金の留意事項案は2月の全国医政関係主管課長会議に提示する。
 また、「地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律」の改正後速やか(7月頃を目途)に、基本方針の策定、交付要綱、基金管理運営要領等を発出する予定である。
●自治体への権限委譲
 13年12月20日に「事務・権限の移譲等に関する見直し方針」が閣議決定された。厚生労働省医政局の所管する事務・権限の一部も都道府県と指定都市へ委譲される。
 「国から地方公共団体へ権限移譲する」として検討されるのは、①複数都道府県にわたる医療法人の監督、②医療関係職種養成施設等の指定権限、③国開設病院等の開設承認権限等、である。都道府県から指定都市への権限移譲としては「病院の開設許可等」がある。
 今回の事務・権限委譲のうち、法律改正事項は通常国会に改正法を提出し、15年4月1日の施行を予定している(別掲の資料を参照)。
●地域医療支援病院の承認要件の見直し
 地域医療支援病院の承認要件の見直し案が固まった。この4月1日の施行を予定し、省令と通知の改正を行なう。
 各都道府県は、新たな申請には新たな要件に基づく承認判断を、既に承認されている病院の業務報告(14年10月)については、新要件を満たさない場合は2年程の期間の改善計画を提出させ、必要に応じて都道府県医療審議会等で審議するなどの対応をお願いしたい。
●外国人患者受入環境の整備
 20年の東京オリンピック開催決定を受け、それまでの7年間を外国人患者受入環境の集中整備期間とし、外国人患者が安心・安全に日本の医療サービスを受けられるよう、13年度補正予算より準備を開始した。14年度から医療通訳・外国人向けコーディネーターを育成し、全30ヵ所の拠点病院に配置する事業を行なう。
●看護職員の確保対策
 第8次需給見通し(16年から20年)策定の作業が必要であり、今年5月をめどに「第八次看護職員需給見通しに関する検討会」を開始する。

□「事務・権限の移譲等に関する見直し方針」の医政局所管事項

■国から地方公共団体への権限の移譲
・医療法人(二以上の都道府県にわたるもの)の監督の移譲
・医療関係職種の養成施設等の指定権限等の移譲
・国開設病院等の開設の承認権限等の移譲(検討中) 等
■都道府県から指定都市への権限の移譲
・病院の開設許可等の権限移譲(検討中)

□複数の都道府県にわたる医療法人の監督の移譲

・二以上の都道府県の区域にわたる医療法人の監督等の権限を国(地方厚生局)から都道府県に移譲。国の関与は特段設けない。
・主たる事務所が所在する都道府県の都道府県知事へ移譲。
・都道府県間の連携(一方の都道府県が報告・意見等を述べることができる)について法令上の措置を検討。
・病院等の監督(立入検査、報告、業務停止命令、開設許可の取消等)は従来どおり。

□国開設病院等の開設の承認権限等の移譲(検討中)

・国の開設する病院等(官公庁、国立大学法人、独立行政法人)の開設承認と監督(地方厚生局)は都道府県等(診療所は保健所設置市等)に移譲する予定。国の関与は設けない。
・病院病床数の増床等の協議は、国全体として政策医療等を行う機関の配置を全国的な見地から判断すべきとの観点から、引き続き厚労省で実施。
※国開設病院等の病床については、引き続き、公的病院に対する許可の制限や病床数の増加等に対する勧告の対象とはならない。
・移譲する場合は2015年4月1日施行を予定。

□病院の開設許可等の権限移譲について(検討中)

・病院の開設許可およびそれに付随する事務(変更許可、休廃止届、開設許可取消等)は指定都市に移譲する。
・病院の開設許可については、例えば指定都市と都道府県が協議する等、指定都市と都道府県の間での情報の共有を図るための工夫を講じた上で移譲する。
・移譲する場合は2015年4月1日施行を予定。
【参考】
■病院開設等に係る各種事務
開設許可、変更許可、休止届、廃止届、開設者の管理免除許可、管理者の兼任許可、使用制限命令等、開設許可の取消 等