全日病ニュース

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「地域医療ビジョンは病院団体を含む幅広い参画も得て策定すべき」

「地域医療ビジョンは病院団体を含む幅広い参画も得て策定すべき」

医療部会「医療法等改正に関する意見」をまとめる

■社会保障審議会医療部会「医療法等改正に関する意見」(概要) 2013年12月27日

Ⅱ. 具体的な改革の内容について

1. 医療機能の分化・連携及び地域包括ケアシステム構築に資する在宅医療の推進
(1)病床機能報告制度の創設
○医療機関が、その有する病床(一般病床と療養病床)で担っている医療機能の現状と今後の方向を選択して都道府県に報告する仕組みを、医療法上の制度として設けるべき。
○医療機能は高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4区分とし、病棟ごとにいずれかを選択して都道府県に報告する。実際の病棟には様々な病期の患者がいることから、併せて報告する具体的事項は提供している医療内容が明らかとなるようなものとする必要がある。
○各医療機能の内容(報告の基準)は制度開始当初は定性的なものとするが、今後、報告内容を分析して、定量的なもの(指標)としていくべき。
(2)地域医療ビジョンの策定
○都道府県は、医療計画の一部として、2次医療圏等ごとに地域医療ビジョンを策定するべき。
○地域医療ビジョンでは主に以下の内容について定めるべき。
・2025年の医療需要-入院・外来別、疾患別患者数等・2025年に目指すべき医療提供体制-2次医療圏等(在宅医療は市町村等を単位)ごとの医療機能別の必要量・目指すべき医療提供体制を実現するための施策
○地域医療ビジョン策定のためのガイドラインは、都道府県、医療者、医療保険関係者等も参画する検討会で具体的に検討するべき。
○ガイドラインで医療需要の将来推計、医療機能別の必要量を算出する標準的な計算式等を示すが、必要量の算出に当たっては、都道府県が一定範囲で補正できるようにすべき。
○2014年度中に病床機能報告制度を開始、この内容を踏まえて、同年度中に地域医療ビジョンのGLを策定すべき。それを受けて都道府県は15年度から16年度にかけて地域医療ビジョンを策定すべき。その際、各都道府県の策定期限は一定の幅のあるものとすべき。
○地域医療ビジョンは、医師会、歯科医師会、薬剤師会、医療審議会及び市町村の意見を聴くとともに、病院団体を含めた幅広い関係者の参画も得ながら、策定されるべき。
(3)地域医療ビジョンを実現するために必要な措置
○医療機能の分化・連携は、病床機能報告を踏まえた地域医療ビジョンに将来の需要と各医療機能の必要量が示され、もって医療機関の自主的な取組と相互の協議が行われることにより進められることを前提とすべき。
○医療機関相互の協議を実効的なものとするために国と都道府県は以下の措置を講ずる。
①「協議の場」の設置
・都道府県は、医療機関や医療保険者等の関係者が参加し、個々の医療機関の機能分化・連携について協議する「協議の場」を設置。医療機関に、「協議の場」への参加とそこでの合意事項への協力の努力義務等を設ける。
②医療保険者の意見を聴く仕組みの創設
・都道府県が医療計画を策定する際には医療保険者の意見を聴くべき。その際、都道府県ごとの保険者協議会の意見を聴くことも必要。
③医療と介護の一体的推進のための医療計画の役割強化(後述)
④新たな財政支援の仕組みの創設(後述)
○こうした措置を通じて、医療機関による自主的取組や相互の協議を実効的なものとし、地域医療ビジョンの必要量に向けて病床数を収れんさせていくことが基本となる。
○「協議の場」の合意に従わず、過剰な医療機能に転換しようとする場合や「協議の場」が機能しない場合に対処するために、以下の措置を設ける必要がある。
[病院の新規開設・既存医療機関による増床]
・都道府県知事は、医療計画の達成上必要な場合には、新規開設・増床の許可の際に、不足している医療機能を担うことを条件に付し、事後的にその遵守を求める。
[既存医療機関による医療機能の転換]
①過剰な医療機能に転換しようとする場合・都道府県知事は、医療機関に医療審議会での説明や転換計画書の提出を求めた上で、転換にやむを得ない事情がない場合は転換の中止を要請・指示することができる。
・医療機関が都道府県知事の要請等に従わない場合には、現行の医療法上の措置に加えて以下の措置を講ずることができる。
イ)医療機関名の公表
ロ)各種補助金の交付対象や福祉医療機構の融資対象からの除外
ハ)地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・承認の取消し
(注)将来的には、過剰機能病床への転換に診療報酬の対応の是非を検討する必要がある。
・上記措置によっても転換を行なった場合は、過剰な機能に転換した当該病床に限って、国が保険医療機関の指定を行なわないことも考えられ、引き続き検討する必要がある。
②「協議の場」が何らかの事情により機能しなくなり、医療機関の自主的な取組だけでは機能分化・連携が進まない場合
・現行で、都道府県知事は、公的医療機関等の一定期間稼働していない病床の削減を命令することができるが、これに加えて、公的医療機関等以外の一定期間稼働していない病床についても、一定期限までの稼働・削減の要請を行なうことができるようにする。
・都道府県知事は、公的医療機関に、過剰な機能から不足している機能への転換や回復期機能等の充実等の指示を行なうことが、公的以外には要請が、できるようにする。
・要請等に従わない場合は、上記①イ・ロの措置を講ずることができるようにする。
(4)在宅医療の充実、医療と介護の連携の推進等
①在宅医療の充実
○在宅医療の提供体制は、市町村が主体となって地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会及び看護協会等と協働して推進する必要がある。
○在宅医療の提供体制については、市町村の意向を踏まえ、都道府県は適切な圏域を設定し、医療計画の中に在宅医療の提供体制の整備目標を定めることが必要。
②医療と介護の連携の推進
○在宅医療には多様なニーズがあることから、今後構築される在宅医療・介護連携拠点の機能等を活用しつつ、多様なニーズに幅広く対応できるような方向性を目指すべき。
③医療と介護の一体的推進のための医療計画の役割強化
○医療・介護サービスの一体的整備を進めるため、医療計画は以下の見直しを行なうべき。
・医療計画の基本方針と介護保険事業支援計画の基本指針を整合的に策定する。
・両計画の期間が揃うよう、18年度以降、医療計画の期間を6年に改め、在宅医療など介護保険と関係する部分は中間年(3年)で必要な見直しを行なう。
○在宅医療の提供体制や介護との連携推進のため、医療計画は以下の見直しを行なうべき。
・地域医療ビジョンで市町村等ごとの将来の在宅医療必要量を示すとともに、在宅医療を担う医療機関や訪問看護等の目標や役割分担、病床確保のあり方等を医療計画に盛り込む。
・在宅医療と介護の連携等に係る市町村の役割を医療計画に明確に位置づける。
○医療・介護サービスに係る整合的な基本方針や計画を策定・実行するために、国・都道府県・市町村は医療・介護・保健福祉等の関係者による協議を行なう。
(5)国、地方公共団体、病院、有床診療所及び国民(患者)の役割・責務
 病床機能報告制度と地域医療ビジョンの導入を踏まえた国、地方公共団体、病院、有床診療所及び国民(患者)の役割・責務を医療法に位置づけるべき。
2. 地域の実情に応じた医師・看護師等の確保対策
(1)医師確保対策医師の偏在の解消にさらに取り組むため、以下の施策を実施すべき。
・地域医療支援センターの機能を医療法に位置づける。
・地域医療支援センターの機能は病院や大学、公益法人等に委託することも可能とする。
・都道府県知事が、医師不足病院等への医師派遣要請を病院の開設者等に行なうことができることを医療法上、明確化する。
・医療従事者の確保に関する施策等都道府県で必要とされる医療確保に関する施策への協力の努力義務の対象範囲を広げる。具体的には、地域医療対策協議会を構成している医師会、特定機能病院、地域医療支援病院、大学他の医療従事者養成機関等は、都道府県知事からの医師派遣要請を含め、都道府県の施策に協力するよう努める。
・専門医の養成数は、患者数等を基本としつつ、専門医等の分布状況等の地域の実情も総合的に勘案して設定されることが望ましい。
(2)看護職員確保対策
○復職支援として次の措置を講ずるべき。
・看護師等資格者のうち今後離職する者その他一定状況にある者にナースセンターへの届出・登録を義務化する。
・義務対象者以外も届出・登録等を行なうよう努めるものとすることも検討する。
○ナースセンターによる看護職員確保対策は、医師会や病院団体等も入った中央及び都道府県双方のナースセンター運営協議会等で協議して進める必要がある。
(3)医療機関の勤務環境改善
○医療機関の管理者が計画的に勤務環境改善に向けた取組を行うための仕組み(勤務環境改善マネジメントシステム)を創設する。
○より医療従事者の定着率を高める必要がある医療機関に、都道府県が、地域の医療関係団体等と連携して、勤務環境の改善策を助言・指導するなどの対応ができるようにすべき。
3. 新たな財政支援の仕組みの創設
○医療機能の分化・連携の推進、医療従事者の確保、機能分化・連携に伴う介護サービスの充実等のために、新たな財政支援の仕組みを、消費税増収分を財源として創設すべき。
○新たな財政支援は、病院の機能転換や病床の統廃合など計画から実行まで一定の期間が必要なものもあり、都道府県に基金を造成する仕組みとする方向で検討すべき。その際、在宅医療は市町村の役割を念頭においた仕組みとする必要がある。
○医療機関への補助に当たっては、公的と民間を公平に取り扱うことを含め、地域に必要な事業に適切かつ公平に支援が行なわれる仕組みとすべきである。
4. チーム医療の推進
 チーム医療の推進については、チーム医療推進会議の議論を踏まえ、各医療職種の業務範囲及び業務実施体制等について、以下の見直しを行なうべき。
(1)特定行為に係る看護師の研修制度の創設(以下略)
5. 医療法人に関する制度の見直し
(1)持分なし医療法人への移行の促進
○移行を計画的に行なう医療法人を国が認定する仕組みを法律に位置づけ、医療法人による任意の選択を前提に、持分なし医療法人への移行促進策を講じていくべき。
(2)医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直し
○医療法人社団及び医療法人財団の合併に関して法整備を行なうべき。
○医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直しは、医療法人の大規模集約化ではなく、医療法人間の横の連携を強化して地域医療の再構築を進める観点や、地域医療を提供できなくなる医療法人を健全な形で再生する観点から検討することが必要。
6. 医療事故に係る調査の仕組み
 13年5月の「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」を踏まえ、医療事故に係る調査の仕組み等を医療法に位置づけるべき。
7. 臨床研究の推進
 臨床研究中核病院(仮称)を医療法上に位置づけるべき。
8. その他の改正事項
(1)外国医師等の臨床修練制度の見直し
○外国医師等の臨床修練制度について、手続・要件の簡素化を図るべき。
○教授・臨床研究を目的として来日する外国の医師及び歯科医師は、一定要件を満たす場合は診療を行なうことを認めるべき。
○今回の見直しは、外国の医師を日本の医師免許として認めるものではなく、あくまで一定の目的の場合に医師法の特例を認めるものである。
(2)歯科技工士国家試験の全国統一化(略)