全日病ニュース

次期医療計画で２次医療圏の見直し促す

【厚労省・医療計画検討会】
90医療圏が見直し対象か　５疾病・５事業は現行どおり

　厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」（遠藤久夫座長）は６月15日、次期医療計画に向け一般的な入院医療を完結させる２次医療圏の設定方法や計画に記載する５疾病・５事業をめぐり議論。２次医療圏では、人口や医療資源が少ない医療圏の見直しを求めることとなった。５疾病・５事業は現行どおりとする方向を示した。
　厚労省は人口20万人以下で、流入率が20％未満、流出率が20％以上の医療圏に見直しを促している。しかし見直し基準に該当する87医療圏のうち、実際に見直したのは５医療圏にとどまる。
　さらに、地域医療構想の構想区域と２次医療圏を一致させることを念頭に、地域医療構想の推計結果を当てはめると、人口減少などにより、90医療圏が見直し基準に該当するというデータを示した。
　また、５疾病・５事業との関係では、人口が少ない医療圏で30分以内の治療に間に合わない患者の割合が増えているという分析結果を紹介。特に、心筋梗塞でアクセスが悪くなる医療圏があると指摘した。このため心筋梗塞や脳卒中は、緊急時の搬送体制を勘案し、圏域内で完結できる適切な医療圏を設定すべきとした。一方、がんなど緊急性が相対的に低い医療では、広域的な圏域の設定が必要であるとした。
　５疾病・５事業について厚労省は、基本的には現行どおりとする考えを示した。５疾病は、①がん②脳卒中③急性心筋梗塞④糖尿病⑤精神疾患。５事業は①救急②災害時③へき地④周産期⑤小児となっている。
　なお、厚労省は、５疾病に関連し、高齢化の進展に伴い今後さらに増加する疾病については、「予防を含めた地域包括ケアシステムの中で対応する」ことを論点としてあげた。５疾病以外については、医療の対象としない考えともとれるが、これに対して全日病会長の西澤寛俊委員は、医療計画との関係が不明瞭であるとして論旨を明確化するよう求めた。厚労省は「医療計画の対象にしないとの趣旨ではない。フレイルの予防などを想定している」と回答した。
　また、肺炎を追加すべきとの意見に対しては、脳卒中の後遺症である場合が多く、脳卒中で対応できるとの見解を厚労省が示した。肺炎患者の約７割が75歳以上の高齢者で、その７割以上が誤嚥性肺炎。誤嚥性肺炎を引き起こす嚥下障害の原因疾患の約６割が脳卒中であると説明した。この説明に対し、「肺炎は全身機能の低下が原因である場合が多い」との反論があった。