全日病ニュース

全日病ニュース

ICTを活用した看護業務改善で研究報告会

ICTを活用した看護業務改善で研究報告会

 ICTを活用して病棟における看護職員の動きを把握し、業務の改善と医療安全に役立てようとする研究事業の成果報告会が5月27日に全日病会議室で開かれた。
 冒頭に挨拶した西澤寛俊会長は、「厳しい経営環境の中でも、医療安全に配慮しつつ、業務改善を進め、パフォーマンスを向上することが求められる。本事業で得られた知見が医療の質の向上と医療安全に寄与することを期待する」と述べた。
 続いて永井庸次常任理事が研究開発事業の概要を説明した。事業の正式名称は、「ICT等を使用した看護職員等の動態把握ツールを用いた安全性等に係る医療技術評価事業」で、AMEDの委託研究。
 赤外線ビーコンを病室やスタッフステーションに設置するとともに、ビーコンを感知する赤外線センサーを看護職員が装着することで、病棟における看護職員の動きを把握。さらに電子カルテのアクセスログと突合することにより、病棟看護業務の可視化を図り、看護および介護の業務内容やコミュニケーションの実態を解析。看護業務の改善につなげようというねらいだ。
 研究に参加した病院は、ひたちなか総合病院(茨城県)、練馬総合病院(東京都)、新潟南病院(新潟県)の3病院。急性期3病棟、回復期1病棟、慢性期1病棟の計5病棟において、昨年11月~ 12月に2週間から1か月間、赤外線センサーを使って看護職員の行動を記録し、データ解析を行った。
 永井常任理事は、「これまで看護職員が、どのくらい病室にいて患者を直接ケアしているのか、誰と会話してコミュニケーションをとっているのかが見えなかった。センサーの位置情報と電子カルテと突合することで、その場所で何をしているかが見えてくる」と説明した。
 看護と介護の可視化でも一定の成果が得られた。永井常任理事は、爪切りや体位変換など看護補助者の作業の4割を看護師が行ったというデータが得られたことを報告。「看護と介護の切り分けをどうするのか。在宅や療養病床でどのような形で責任や役割を分担するかが課題になる」と述べた。
 療養病床として研究に参加した新潟南病院統括常勤顧問の和泉徹氏は、赤外線センサーによる分析は看護や介護の力を測るツールになると評価。「少子高齢化で高齢者を介護するパワーは限られる。セルフケアを基本に医療力・看護力・介護力を按分する取り組みが欠かせない」と強調した。
 残業の業務実態を把握
 ひたちなか総合病院データ管理センターの島田裕美看護師長は、時間外業務における業務内容を解析した結果を説明した。
 始業前は、電子カルテを操作している時間が多く、患者の状態を確認した上で業務開始していることがわかる。また、時間内は患者のケアに集中するために、看護記録の入力は後回しにすることが多く、終業後の残業につながっている。急性期病棟では看護補助者の配置が少ないために、看護師が実施せざるを得ない業務内容が多い。「記録入力の時間を確保する必要がある」と島田氏はコメントした。
 そのほか島田氏は、急性期病棟では日常業務がスケジュールどおりに進まないことが多いことや、複雑な看護業務をどうしたら可視化できるかが課題であると指摘した。
 永井常任理事は、「電子カルテベンダーや病院のデータ管理者によるコンソーシアムができれば、赤外線センサーの医療分野における活用に向けてビジネスモデルがつくれるのではないか」と述べ、今後も研究開発を進める考えを示した。

 

全日病ニュース2016年7月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] ICT 等を使用した看護職員等の動態把握ツールを用いた安全性等に係る ...

    http://www.ajha.or.jp/seminar/other/pdf/160509_2.pdf

    2016年5月9日 ... 副委員長 永井庸次. 平成 27 年度国立 ... 「ICT 等を使用した看護職員等の動態把握
    ツールを用いた安全性等に係る医療技術評価事業」を. 昨年度実施いたしました。 本
    研究では、名札型赤外線センサを活用し、電子カルテアクセスログと突合することにより
    、. 入院基本料別、重症 ... 全日本病院協会常任理事・. ひたちなか総合 ...

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。