全日病ニュース

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厚労省が医療事故調査制度の改善策を報告

厚労省が医療事故調査制度の改善策を報告

【厚労省・医療部会】
西澤会長が関係者による議論を求める

 厚生労働省は6月9日の社会保障審議会・医療部会(永井良三部会長)に、昨年10月から始まった医療事故調査制度の改善策を示した。与党の議論を踏まえて整理したもので、医療事故調査・支援センター(以下、センター)に届け出る必要がある医療事故であるかの判断を標準化するため、支援団体等連絡協議会を位置づけるなど5項目を示した。
 医療事故調は昨年10月のスタートから8か月が過ぎた。5月末現在の状況では、医療事故報告は累計251件、センターへの相談件数は同1,250件、院内調査結果の報告は同78件。相談では、「医療事故報告の判断」や「手続き」に関する相談が多い。また、センターへの調査依頼は2件となっている。
 同制度は2014年6月25日に公布された医療介護総合確保推進法に基づくが、公布後2年以内の検討規定があり、6月24日が期限になる。そのための検討が与党で進められ、自民党のワーキンググループが6月9日に報告書をまとめた。
 医療行為と刑事責任の関係などについて、現段階で関係者の意見を調整するのは難しく、医師法21条を含め法改正は行わずに、報告は運用の改善措置にとどめるべきとの内容になっている。厚労省の改善策はこれに従ったものだ。改善措置は、次の5項目。
 ①医療事故に該当するかの判断や院内調査の標準化を進めるため、支援団体等連絡協議会を制度的に位置づける。協議会は、支援団体やセンターが情報交換を行う場とする。
 ②医療機関の管理者が、院内の死亡事例を遺漏なく把握する必要があることを明確化する。
 ③遺族からセンターに相談があった場合、都道府県の医療安全支援センターを紹介するほか、相談内容を医療機関に伝える。
 ④支援団体や医療機関の研修の充実、優良事例の共有。
 ⑤センターが医療機関の同意を得て、院内調査報告書の内容に関し、確認・照会を行う。
 これらの改善措置は、すでに一部で実施されている取り組みを普及させるため、制度的に位置づける対応が中心となっている。また、患者団体の要望を反映させたことがうかがえる。
 これらの改善措置に対し、委員から特に異論は出なかったが、全日病の西澤寬俊会長は、関係者で議論することなく、与党の議論のみで決まったことの問題を指摘。6月24日までに、何らかの形で議論の機会を設けるよう厚労省に要請した。他の委員からも、関係者が協議する場を設置するよう求める意見があった。
 専門医機構への要望を報告
 同日の医療部会では、日本医師会副会長の中川俊男委員が、6月7日に日医・四病院団体協議会が日本専門医機構と各学会に対して行った要望について報告した。要望では、新専門医制度への懸念を表明するとともに、新たな検討の場の設置などを求めている。
 その上で、日医の釜萢敏委員が「従来の研修プログラムで来年度も実施すべきであることを医療部会として合意したい」と発言。医師偏在の拡大が懸念される新たな研修プログラムの延期を求めることを提案した。
 全日病会長の西澤委員は、「地域医療の崩壊を防ぐことを最優先し、ここは一度立ち止まるべきというのが基本的な考えだ。幅広い関係者の声もきき、患者・国民にとって納得できる制度にする必要がある。それを考慮すれば、来年4月開始は難しいということになる」と述べた。
 こうした提起に対し、保険者や自治体代表の委員は消極的な態度に終始し、新専門医制度に関し医療部会としての意思を表明することに慎重な発言があった。
 永井部会長は、日医・四病協の懸念や要望を踏まえた調整を医療界で行うことを求め、その結果を受け対応するとして、その場をおさめた。

 専門医機構の新たな理事に神野副会長を推薦
 日本専門医機構の新たな理事を選定する役員候補者選考委員会が6月21日に開かれ、四病協から全日病の神野正博副会長と日本精神科病院協会の森隆夫常務理事を理事候補者として推薦することが決まった。
 選考委員会は、設立時の社員団体や内科系、外科系の社員学会から理事候補者の推薦を受け、選考の結果、理事候補者案24人を決めた。設立時社員である四病協は、これまでの理事1人から2人に増えることになる。

 

全日病ニュース2016年7月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療事故調査制度に係る指針(H27.8)

    http://www.ajha.or.jp/voice/pdf/150821_1.pdf

    平成 24 年 2 月に厚生労働省に設置された「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方.
    に関する検討部会」 .... 1 改善策. 21. 2 対策立案の方法. 21. 3 検証・評価. 22. Ⅸ 診療
    記録の整備. 22. 1 記載に関する問題. 22. 2 診療記録の追記・修正時の注意点. 22.

  • [2] 再発防止に繋げることが事故調査の目的|第842回/2015年3月1日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150301/news07.html

    2015年3月1日 ... 第6次医療法改正で医療事故調査制度が成立し(2014年6月)、全医療機関に“医療に
    起因する予期しない死亡”事例 ... その中で、厚労省は、原因究明・再発防止を目的に「
    医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する ... 対症療法(モグラ叩き
    )ではなく、病因を除去し(根治)、影響を緩和し(緩和措置)、事例から学んだことを
    明らかにし、継続的に学習し、改善できる組織を構築することが重要である。

  • [3] 医療事故調査制度について(再周知)(厚生労働省医政局長:H27.9.17)

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/150925_2.pdf

    厚生労働省医政局長. (公 印 省 略). 医療事故調査制度について く再周知). 平素より
    医療行政に特段のご理解とご協力を賜り、 厚く御礼申し上げます。 地域における医療
    及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備. 等に関する法律 (平成2 6
    年 ...

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