全日病ニュース

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介護療養病床の現状をヒアリング

介護療養病床の現状をヒアリング

【厚労省・療養病床の在り方等に関する特別部会】
医療区分・ADL区分の問題点を指摘

 社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」(遠藤久夫部会長)は6月22日、療養病床の関係者からヒアリングを行い、介護療養病床が果たしている役割や、老健施設等への転換の実情について意見交換した。療養病床の関係者からは、現行の医療区分・ADL区分の問題点を指摘する意見があり、全日病の西澤寬俊会長は特別部会で議論することを提案した。
 ヒアリングに出席したのは、▷有吉通泰参考人(医療法人笠松会有吉病院院長、福岡県宮若市)、▷猿原孝行参考人(医療法人和恵会理事長、静岡県浜松市)、▷矢野諭参考人(医療法人社団大和会多摩川病院理事長、東京都調布市)の3人。
 有吉病院は、医療療養型56床(療養病棟入院基本料Ⅰ)、介護療養型90床(ユニット型療養型介護医療施設サービス(機能強化A))の計146床で、介護療養は全室個室である。医療療養、介護療養ともに看護師の配置は法定数を上回っており、有吉参考人は「24時間看護を提供するためには、法定数では足りない」と主張した。
 有吉氏は、医療療養病棟が緩和ケアやターミナルケアに果たしている機能を強調するとともに、実際には亜急性期や急性期の機能も果たしていると述べた。
 有吉氏は、介護療養病床の廃止に異議を唱え、「現状の介護療養型の機能強化Aを存続させることが一番望ましい」と主張した。提案されている新類型に関しては、案1の「医療機能を内包した施設系サービス」を支持したが、その場合でも現行の人員配置は必要と強調した。
 猿原参考人は、介護療養型医療施設を老健施設に転換した事例を報告した。介護療養型医療施設として運営していた湖東病院の309床から140床を老健施設に転換(残りの169床は介護療養型を継続)。その際の建築費や補助金、借入れの詳細を説明した上で、転換の結果、年間で1億3,440万円の減収になったことを明らかにした。
 猿原氏は、深夜や早朝の時間帯に死亡する患者・利用者が多いため、死亡診断書を書ける当直の医師が必要と強調。そのため169床残している介護療養型医療施設を転換する考えはないとし、「最低基準の病院機能は必要だ」と述べた。
 矢野参考人は167床の介護療養病床を、すべて20:1の医療療養病床に転換し、さらに一部を地域包括ケア病棟(49床)、回復期リハ病棟(58床)に段階的に転換した経緯を説明した。矢野氏は、医療療養病床の地域における存在意義は依然として大きいと指摘した。
 また、地域包括ケア病棟について、地域における貢献が大きく、収益面でも有利で、病院全体の診療の質の向上に寄与すると述べた。
 新類型については、医療区分1の該当患者の中にも不安定な重症患者が存在するため、オンコール体制ではリスクが高いとし、「同一施設内に当直医師がいることは必須」と述べて、医療機能内包型のうち医師が当直体制をとる案1-1を支持した。
 矢野氏は、医療区分1の患者の中にはADL区分が高い重症者がいるにもかかわらず、医療区分1では医療療養病床に入院するのは難しいとして、現行の医療区分は不適切であると指摘した。
 西澤委員は、「現行の医療区分とADL区分に大きな問題がある」と発言し、特別部会で議論するよう提案した。遠藤部会長は、「診療報酬について、この部会で議論するかは検討したい」と答えた。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、今回のヒアリングは介護療養病床に重点を置いたものであるとし、25対1の医療療養病床の関係者からもヒアリングを行うよう提案した。

 

全日病ニュース2016年7月1日号 HTML版