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オプジーボの薬価引き下げで緊急の対応策

オプジーボの薬価引き下げで緊急の対応策

【薬価専門部会】
「期中改定ありきではない」との声も

 中医協の薬価専門部会(西村万里子部会長)は8月24日、抗がん剤のオプジーボをはじめとした高額薬剤が医療保険財政に与える影響を緩和させるための議論を開始した。最適な薬剤使用を促すガイドラインを策定するとともに、緊急の対応策として、オプジーボ(小野薬品工業)の薬価を2018 年度の薬価改定を待たずに引き下げる案を厚労省が示した。しかし薬価の「期中改定」が常態化し、診療報酬の改定財源と切り離されるおそれがあることから、診療側が慎重な対応を求めた。

高額薬剤に3つの対応策
 中医協は7月27日の総会で高額薬剤の対応方針を議論し、今後の検討の進め方を3つに整理した。1つ目は2018年度改定を見据えた薬価制度全体の見直しであり、2つ目はオプジーボを念頭に置いた薬価引き下げの緊急的な対応である。3つ目は薬剤の最適使用推進ガイドラインの策定とその医療保険上の取扱いを決めることである。
 当面の予定では、9月に日本製薬団体連合会、米国研究製薬工業協会、欧州製薬団体連合会からヒアリングを行う。その上で、厚生労働省が最適使用推進ガイドラインの医療保険上の取扱い案を提示する。10月には、厚労省が高額薬剤の薬価に対する緊急的な対応案を示し、来年3月に薬価制度全体を含めた次期改定の考え方について中間報告をまとめる。薬価の緊急対応は来年度予算に関わるため、12月中旬までに決める予定だ。
 これらのうち、厚労省は同日の薬価専門部会で、薬価の緊急対応の案を示した。それによると、対象は①2016年度改定で再算定の検討に間に合わなかったもので、2015年度末までに効能追加等があった薬剤②効能追加等による市場拡大が極めて突出しており、例えば2016年度の市場規模が当初予測の10倍を超え、かつ1千億円超の薬剤─。
 オプジーボがこれに該当するが、現在、薬理作用が類似する医薬品が承認申請されており、類似薬として薬価収載されると見込まれている。
 オプジーボは2014年8月に「根治切除不能な悪性黒色腫」(メラノーマ)を効能・効果として薬価収載され、薬価が定められた。その際の売上げ予測は年間31億円だった。その後、昨年12月17日に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」が効能・効果に加わったことで、売上げ予測は1,260億円になった。さらに、今年2月29日には「根治切除不能な悪性黒色腫」に対する用法・用量の変更も認められている。
 このように薬価収載時の条件が変化したことを受けて、薬価の引き下げが課題となるが、厚労省はそのための方策として3つの前例を示した。薬価を引き下げる現行のルールには、①市場拡大再算定②用法用量変化再算定③効能変化再算定─がある。
 市場拡大再算定は年間販売額が予想を一定以上上回った場合に、薬価改定時に薬価を下げる仕組みである。2016年度改定では14品目が対象になり、それに加えて年間販売額が極めて大きい品目に対する特例再算定が行われた。
 対象になったのは4品目で、そのうちC型肝炎治療薬のソバルディとハーボニー(いずれもギリアド・サイエンシズ)は薬価が32%減額された。
 用法用量変化再算定は、用法用量に変更があった場合の再算定で、例えば、1日2錠が1日3錠になった場合に、1日薬価が同額となるようにし、薬価が3分の2に下がる。効能変化再算定は、主たる効能・効果に変更があり、変更後の効能・効果において類似薬がある場合に、類似薬に価格を近づける再算定。類似薬の市場規模が大きいほど、薬価が下がることになる。
 これらの前例を考慮して、オプジーボの薬価の引き下げを検討する。ただし、効能追加後の市場規模の予測を把握していないため、委員から企業情報を得るよう求める意見があった。
期中改定に慎重な対応求める
 一方、診療側は「期中改定ありきではない」とする強い意見を述べた。高額薬剤への対応は、2018年度改定に向けた現行の薬価算定方式の抜本的な見直しの中で最適使用推進ガイドラインの効果を見極めつつ進めるべきだと主張。「期中改定」に慎重な対応を求めた。
 背景には、薬価改定だけを単独で行うと診療報酬改定との関係が希薄になり、薬価財源が診療報酬に充当されなくなるとの警戒感がある。政府としては、薬価引き下げ財源を財政健全化計画に沿った社会保障関係費の削減に使いたいという思惑があるとみられる。 「期中改定」をめぐって、今後さらなる攻防が展開されそうだ。

 

全日病ニュース2016年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160815/news01.html

    2016年8月15日 ... 薬価改定後に効能・効果が追加され、大幅に売上げが増えたオプジーボの薬価見直し
    も議論する。 ... 2018年度診療報酬改定に向けては、さらに薬価のあり方を抜本的に
    見直す議論を薬価専門部会で行うとしている。 一方、改定時には2016 ...

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年8月15日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160815.pdf

    2016年9月18日 ... たにもかかわらず、2016年度薬価改定. に間に合わなかったオプジーボの特例 ...
    オプジーボは昨年9月に、「根治切除. 不能な悪性黒色腫」を効能・効果に保 ... 議論を
    薬価専門部会で行うとしている。 一方、改定時には 2016年度改定で導.

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