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一律の「均てん化」から「集約化」へ

一律の「均てん化」から「集約化」へ

【厚労省・がん診療提供体制検討会】
これまでの議論を整理

 厚生労働省の「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」(北島正樹座長)は8月4日、がん診療の提供体制に関するこれまでの議論を大筋でまとめた。
 がん対策推進基本計画の見直しに向けて検討していたもので、がん診療連携拠点病院を整備することにより、がん医療の均てん化に一定の成果が得られたとしつつ、ゲノム医療など医療の高度化を踏まえ、集約化の検討が必要と指摘している。
 2007年6月のがん対策基本計画策定以来、政府はがん死亡者の減少を目標に、全国にがん診療連携拠点病院を整備するなど、がん医療の均てん化を進めてきた。報告書は取り組みの結果、集学的治療や標準的治療、がん相談支援センター、緩和ケアの提供などで一定の成果があったと評価している。このため、均てん化が必要な取り組みに対しては、「引き続き拠点病院等を中心とした体制を維持する」とした。
ゲノム医療と放射線治療は集約化
 一方で、がん医療の専門化・高度化が進み、様々な医療機器が普及しており、一律の基準を定めることが困難になってきている。分野によっては、一は一部保険適用だが、先進医療で既存治療との比較を行っている段階で、大掛かりな医療機器を用い、高額である。
 一方、IMRT は件数は増えているが、人材不足や質の格差が指摘されている。
 なお、同日の検討会では、がん診療連携拠点病院のアンケート調査結果が紹介されており、そこでは集約化が望ましい領域として、◇病理診断◇最新の放射線治療装置◇希少がん、若年世代のがん◇治験や医師主導臨床研究─があげられた。
医療安全に関する基準を提案
 また、がん診療連携拠点病院に対して医療安全に関する基準を新たに設けることを提案した。一部の大学病院で律の均てん化は見直さざるを得ない状況であることも指摘した。集約化が避けられない分野としては、ゲノム医療や放射線治療をあげた。
 ゲノム医療に関しては、ゲノム情報と医学の両者に精通した医師や研究者、ゲノム情報を解析できる産業界の人材などが協働する体制が必要。質を担保するためには、医療機関や人材は限られており、集約化が課題とした。
 質の担保のためには、「一定の基準を策定するのが望ましい」とし、認定遺伝カウンセラーや臨床遺伝専門医によるグループで遺伝カウンセリングを実施する体制の整備を求めた。検査では、米国の臨床検査ラボの品質保証基準(CLIA)の水準を満たす審査基準を定める必要があると指摘した。
 放射線治療に関しては、個別の療法により状況は様々に異なり、均てん化と集約化のバランスが難しい状況がある。「がんに対する標準治療の中で適切な放射線治療を提供できる体制を推進する必要がある」とし、曖昧な書きぶりになっている。
 その上で、がん病巣のみを正確に照射できる療法として、粒子線治療よりもIMRT(強度変調放射線治療)を優先させることを明記した。粒子線治療重大な医療事故が相次いだことを受け、特定機能病院の基準が変更されることに伴う措置。ただし、がん診療連携拠点病院の病床数や人員配置には差があるため、基準の設定には工夫や配慮が必要とした。
 相談支援体制については、がん診療連携拠点病院に設置されているがん相談支援センターが医療機関内でも認知度が低いため、周知に向けた積極的な取り組みを促した。
 「国立がん研究センターがん対策情報センターがん情報サービス」で公表するがん診療に関する情報については、2016年1月以降の全国がん登録を踏まえ、情報公開を拠点病院以外にも拡大することを求めた。

 

全日病ニュース2016年9月1日号 HTML版

 

 

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