全日病ニュース

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医療機能の分化・連携の事業に基金を重点配分

医療機能の分化・連携の事業に基金を重点配分

【厚労関係部局長会議】
制度の持続可能性確保の観点から患者負担増を求める

 厚生労働省は1月19、20日の両日に全国厚生労働関係部局長会議を開催し、都道府県担当者に向けて制度改正や予算事業など2017年度の厚労行政の方針を説明した。神田裕二医政局長は、医療介護総合確保基金の配分について、医療機能の分化・連携に資する事業に重点的な配分を行う方針を示した。鈴木康裕保険局長は、患者負担増の見直しについて、「適切なサービスが受けられる制度を持続可能にするため」と説明して理解を求めた。
 始めに、堀内詔子厚生労働大臣政務官が厚生労働行政全般を説明し、安倍政権が「最大のチャレンジ」と重視する「働き方改革」に言及した。社会保障については、経済財政諮問会議で策定した経済財政再生計画の工程表に沿って、「引き続き重点化・効率化」に取り組むと述べた。2017年度予算案では、医療・介護の見直しで1,400億円程度を抑制している。
 診療報酬・介護報酬同時改定については、「地域包括ケアの構築とあわせ、AI、IoT、ロボット等の革新的技術を、十分なエビデンスをもとに活用・推進していく」とし、これらを報酬に反映させる考えを示した。また、保健・医療・介護の情報をデータベース化し、「ICT をフル活用した次世代型の保健医療システムを構築」する方針を示すなど、最近の医療政策のポイントを説明した。
実質的な地域包括ケア計画に
 神田裕二医政局長は、「2018年度から医療計画と介護保険事業(支援)計画が同時に始まるため、実質的な地域包括ケア計画になる」と述べた。医療計画については、基準病床数と地域医療構想の病床の必要量の関係を整理したほか、地域医療構想調整会議の進め方を紹介した。「調整会議の話し合いが成立しない場合や、医療機関が過剰な医療機能に敢えて参入する場合は、都道府県知事による行政勧告の仕組みがある」と説明した。
 医療介護総合確保基金については、現状で、①病床の機能分化・連携②在宅医療・介護の推進③医療・介護従事者の確保・勤務環境の改善等に使われている。2016年度の状況をみると、①が458億円、②が47億円、③が399億円で、①と②③が概ね半々となっている。
 一方、骨太方針2016では、「基金のメリハリのある配分等により、病床の機能分化・連携を推進する」と明記されている。
 このため神田局長は、医療機能の分化・連携に資する事業に重点的に配分する方針を示した。「在宅医療や医療・介護従事者の確保などへの配分は、地域に不可欠な事業であることに配慮しつつ調整する」と述べた。また、基金以外の他の補助金が使える事業であれば、できるだけそちらを活用するよう都道府県に要請。基金の造成により、予算事業から基金事業に切り替えた事業についても、補助額を精査した上で、予算事業として配分する考えを示した。
 災害医療に関しては、BCP(事業継続計画)を策定している災害拠点病院が14.5%(2013年10月)にとどまっていることに対し、「非常に問題」と指摘。
 2017年度予算案で研修会などの予算を確保したと述べた。
 地域医療連携推進法人は4月の施行を踏まえ、設立の意欲のある医療機関の把握を要請。厚労省として相談に応じるとした。また、「地域医療構想を達成するための一つの選択肢であり、地域の病院が、その役割分担について、腹を割って話し合いをするという意味でも有力な手段になる」と述べた。
 医療従事者の確保・養成等との関連では、「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」の検討状況を説明。10万人規模の医師の勤務実態調査の結果とあわせ、精緻な医師需給推計と働き方の改善につなげるとした。
 新たな専門医の仕組みについては、日本専門医機構の整備指針改訂のポイントを整理。医師の地域偏在の拡大を防ぐため、行政、医師会、大学、病院団体で行う都道府県協議会の運営に関し、厚労省は昨年3月に通知を出している。しかし新たな専門医の仕組みの実施が1年延期され、2018年度になったことから、改めて通知を出す方針を示した。
 看護師の特定行為の研修制度が始まり、2016年8月現在で指定研修機関は28機関ある。しかし20都道府県の設置にとどまり、空白県が少なくないことから、神田局長は「都道府県に最低1カ所は研修機関を作ってほしい」と述べた。全日病などが座学のeラーニングや指導者講習会を開催していることを踏まえ、2017年度においても、助成の予算を確保したことを報告した。
惑星直列といわれる重要な時期
 鈴木康裕保険局長は、医療保険関連だけに限っても、2018年度は診療報酬・介護報酬同時改定、国民健康保険の財政運営の都道府県単位化、医療費適正化計画などがあり、「惑星直列といわれる重要な時期」と強調した。その上で、「一番大切なのは、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年に制度を持続可能とし、患者が適切なサービスが受けられるようにすることだ」と述べた。
 年末の予算編成では、社会保障費を1,400億円抑制するため、医療・介護の制度改正を行うことを決めた。医療保険関連では、70歳以上の高齢者の高額療養費制度、後期高齢者医療制度の保険料軽減の特例措置、入院時の光熱水費に関し、患者の負担増となる。これについて鈴木局長は、「世代間・世代内の負担の公平化を図る」との観点から見直したと説明。高齢者であっても、所得に応じて負担を求めることに理解を求めた。
 薬価制度の抜本改革の基本方針については、革新的だが高額な医薬品の登場を踏まえ、「国民皆保険の持続性」、「イノベーションの推進」、「国民負担の軽減」、「医療の質の向上」の4つが見直しを進める上の観点になるとした。
 蒲原基道老健局長に代わって説明した坂口卓審議官は、今国会に提出する介護保険制度の改正内容を説明。特に、保険者機能の強化等による自立支援・重度化防止に向けた取組みを推進すると強調した。そうした取組みを強化するため、インセンティブの仕組みを制度化していく考えを示した。
 医療保険制度と同じく、負担増の制度改正も少なくない。現役並み所得者の利用者負担は3割となる(2018年8月実施)。第2号被保険者に対する介護納付金の分担方法が加入者割から総報酬割に変わることで、比較的所得の高いサラリーマンや公務員の負担が増加する。
 介護職員の処遇改善については、「2017年度からキャリアアップの仕組みとあわせて、月額平均1万円相当の処遇改善を行う。従来の処遇改善加算Ⅰの要件に加え、経験や資格等に応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期的に昇給する仕組みが要件になる」と述べた。従来の処遇改善加算の届出の計画書は、2月末が提出期限だが、新加算の創設で期限を一定程度延長する方向で検討する。

 

全日病ニュース2017年2月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年1月1日・15日合併号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160101.pdf

    5面/. 医政局長. VS正副会長座談会. 「. 本番を迎える医療制度改革. 」 6. ・. 7面/. 四.
    病. 協. 4. 会. 長. 座. 談. 会. 「. 医. 療. 改. 革. 、 ... 国民・患者により質の高い医療を継続
    して提供できるよう、医療機関の .... 者等の意見、特に高額な設備投資にかかる負担
    大 ... ①病床機能分化、連携、②慢性期の地域移行体制、 ..... 神田裕二(写真正面).

  • [2] 全日病ニュース 2017年1月1日・15日合併号

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170101.pdf

    2017年1月1日 ... 平成30年4月に向けて、診療報酬・介護報酬同時改定、医 ... 療を行うことは患者さんの
    ためになりません。 ... 多様不可解である。 負担の増加は、医療アクセスを阻害する要因
    であ. り、特に老人にしわ寄せが大きい。自然増をどのよ .... 本年は地域医療構想策定
    による病床の機能分化・ ..... 出席者(文中敬称略). 厚生労働省医政局. 神田裕二.
    全日本病院会 会長. 西澤寬俊. 副会長. 安藤高朗、猪口雄二、神野正博、.

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2016年2月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2016/160201.pdf

    2016年2月1日 ... 1月27日の中医協総会に、事務局(厚労省保険局医療課)は、2016年度診療報酬改定.
    の原案となる「 ... 病床機能の分化・連携」の評価指標は「7対1病床・患者の縮小」? ...
    付・負担の在り方についての検討」をテー ..... 神田裕二医政局長.

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