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第2例目は植込み型補助人工心臓による長期在宅治療

第2例目は植込み型補助人工心臓による長期在宅治療

【患者申出療養評価会議】
大阪大学医学部附属病院が実施

 厚生労働省の患者申出療養評価会議(福井次矢座長)は2月6日、制度発足後2例目となる患者申出療養を了承した。技術名は「耳介後部コネクターを用いた植込み型補助人工心臓による療法」。心臓移植が必要な重症心不全患者であるにも関わらず、心機能以外の理由で基準を満たせない患者が対象になる。
 大阪大学医学部附属病院が実施。体内から伸びる配線であるドライブライン感染の有無などを評価しつつ、6例を想定し5年間の臨床試験を実施する。
 将来的に保険収載を目指す。
 患者申出療養は、患者の申し出を起点に、保険外併用療養を受けられる新たな仕組みで、昨年4月に始まった。
 先進医療などと同様に、保険診療と保険外診療を併用できる。
 2例目は、植込み型補助人工心臓による療法となった。重症心不全に対しては、心臓移植が最終的な治療手段になる。しかし、国内ではドナー不足が深刻で、ほとんどの患者が植込み型補助人工心臓(LVAD)の補助を受け、待機している。一方、海外では心臓移植に関係なく、重症心不全患者に有効な治療として、LVAD が普及している。このような治療を長期在宅治療(DT)と呼ぶ。
 DT は、国内では保険が認められていないが、昨年治験が開始された。しかしDT も心臓移植の基準をほぼ踏襲しており、多くの患者が心臓移植を希望しても治験に参加できないのが現状。
 今回の患者申出療養は、重症心不全だが基準を満たせず、治験を受けられない20歳以上の患者に、植込み型補助人工心臓による治療法を可能とするものだ。
 重症心不全患者に対し、全身麻酔下で人工心臓植込み術を実施する。米国Jarvic Heart 社の「Jarvik2000植込み型補助人工心臓システム耳介後部モデル」を用いる。最低月1回の外来受診で、術後を管理し、観察期間は6カ月。5年間で6例を予定する。単施設(大阪大学医学部附属病院)による非対照探索的臨床研究で、主要評価項目は「ドライブライン感染の有無」、副次的評価項目は「脳合併症、全生存率、QOL」となっている。
 心臓移植・DT 治験の除外基準としては、◇65歳以上◇肝臓・腎臓の(不可逆的)機能障害◇他の疾患による予後が5年以上(悪性腫瘍等)◇ HIV ◇インスリン依存症糖尿病◇重度の呼吸器疾患─などがある。最初の患者は、腎機能障害に該当したため、患者申出療養を利用することになった。
 費用は、60日間の入院で、保険外が1,613万7千円、保険診療が982万3千円、患者負担が419万6千円と見込んでいる。患者負担は高額療養費などにより、軽減される。
 3月6日までに告示され、大阪大学医学部附属病院が実施する予定だ。委員からは、1例目の抗がん剤の併用療法と同様に、先進医療や治験の基準を緩めた臨床研究であるため、先進医療と患者申出医療との違いを整理すべきとの意見が出た。また、保険収載された場合の医療費への影響を懸念する意見もあった。

 

全日病ニュース2017年3月1日号 HTML版

 

 

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