全日病ニュース

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在宅医療専門診療所のモデル化に反対

在宅医療専門診療所のモデル化に反対

【厚労省・在宅医療WG】
地域の取組みをヒアリング

 厚生労働省の「全国在宅医療会議ワーキンググループ」(新田國夫座長)は2月16日、在宅医療に関するエビデンスや医療連携、普及啓発モデルの蓄積に向け、議論を行った。医師4名以上の診療所で、重症患者の在宅医療や看取りを24時間体制で実施する事例の紹介があったが、在宅医療専門の診療所は、あくまでかかりつけ医が提供する在宅医療の補完的役割との観点から、「全国的に普及させる在宅医療の姿ではない」との意見が委員から出た。
 同WG は、全国在宅医療会議に報告するため、◇在宅医療に関するエビデンスの蓄積◇在宅医療に関する医療連携、普及啓発モデルの蓄積について議論している。前回の議論では、「在宅医療が入院や外来医療と対立しないことを前提に置くべき」、「医師の行動を変えていくエビデンス作りを学術団体が行うべき」といった意見が出ている。
 在宅医療に関し、厚労省は、「医療の選択肢の一つとして、自ら主体的に考え、選択できるような環境を整備することが重要」と指摘。選択に資する情報を客観的なデータに基づいて示すことが必要とした。具体的には、◇疾病の進行や治療等、患者がたどるプロセス等◇在宅医療に適した患者の状態、環境条件等◇在宅サービスの有効性、手法の標準化─をあげた。
 これらのエビデンスの蓄積とともに、在宅医療の提供体制を着実に進めるため、「医療機関間の連携モデルや構築に至るプロセス等を整理、収集する」、「国民の視点に立った、わかりやすい普及啓発を実施するため、地域の取組み事例を整理、収集する」としている。
 四日市市と福井市の事例を紹介
 こうした観点から、同日は三重県四日市市の「いしが在宅ケアクリニック」と福井県福井市の「オレンジホームケアクリニック」の事例が紹介された。
 「いしが在宅ケアクリニック」の石賀丈士理事長は、「年間100名以上看取るクリニックは全国に3,200カ所必要なのに、現在50カ所しかない」と指摘。年間100名以上看取り、重症患者を含めた24時間対応の在宅医療を提供するには、医師4名以上の在宅特化型が必要と主張した。
 「オレンジホームケアクリニック」の紅谷浩之院長は、生活を軸にした在宅医療を強調。在宅での治療方針を相談する「アドバンスケアプランニング」により、患者の価値観を整理することで「入院回避」ができるとした。
 これらの発表に対し、個別の取組みとして評価する声が上がる一方で、全国的に広げるモデルケースとして位置づけることには、慎重な意見が出た。特に、地域の在宅医療はかかりつけ医が中心的に担い、在宅医療専門の診療所はそれを補完するとの観点から、反対意見があった。しかし石賀理事長は、「このような取組みを広げ、在宅医を増やす必要がある」と述べた。
 全日病会長の西澤寬俊委員は、在宅医療専門の診療所が多数の在宅医を抱え、交代制で訪問診療などを行うことは医師と患者の関係を希薄にする可能性があることに懸念。「病院・診療所などの複数の医師が患者情報を共有し、どのように連携し、関わるかが課題」とした。また、在宅医療における介護職の役割の重要性を強調した。
 厚労省が関係者の役割を整理
 また、厚労省は在宅医療を推進するための関係者の役割を位置づけた。学会、研究機関、関係団体、行政、国民に分けて役割を整理し、在宅医療の手法を標準化し、医療従事者を教育する学会の役割や研究実践する研究機関の役割を強調した。委員からは、関係団体の役割を強調すべきとの意見があったほか、関係団体が中心になるとしても、行政の支援が不可欠との意見が相次いだ。これらの意見を踏まえ、報告の文案修正を行うこととした。

 

全日病ニュース2017年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース 2017年2月1日号

    http://www.ajha.or.jp/voice/topnews/backnumber/pdf/2017/170201.pdf

    2017年2月1日 ... 在宅医. 療に関するエビデンスや医療連携、普. 及啓発モデルを蓄積し、親会議の全国.
    在宅医療会議に報告するのが目的。 「在 .... 本方針を薬価専門部会での検討スケジ.
    ュールに沿って ..... 供する診療所が相当数ある◇ターミナ ... 【資料】2018年度の診療
    報酬改定に向けた現状と課題 (2016年12月14日・中医協資料から抜粋).

  • [2] 第5章 医療提供体制:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版 ...

    http://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/05.html

    急性期医療を担う病院は、急性専門病棟と地域一般病棟に分化することが望ましい。 ...
    在宅療養支援. 一次医療圏・生活圏において、在宅医療の支援は極めて重要な課題で
    ある。在宅療養支援診療所との連携、 ..... は、その各々の死亡率を有意に減少させた
    という報告をはじめとして、プライマリ・ケア領域の重要性を示すエビデンスは多くある。

  • [3] 第7章 医療従事者:「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版 ...

    http://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/07.html

    チーム医療推進の際には、診療において、患者の意思の尊重を基本に、各職種が常に
    専門的な知識と技術の向上を図りながら ... 今後、すでに専門領域の知識・経験を
    有する医師の再教育を含む総合診療医の育成と、病院、診療所への配置を進めるべき
    である。 .... 看護職の医療における重要性に鑑み、あわせてエビデンスに基づく医療政策
    を推進するためにも、看護師の登録制度を推進し、潜在 ... 国は「2025 年に向けさらなる
    在宅医療等の推進を図るためには、個別に熟練した看護師のみでは足りず、医師
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