全日病ニュース

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地域医療構想による在宅医療等の新たな需要を議論

地域医療構想による在宅医療等の新たな需要を議論

【厚労省・医療計画検討会】
公的病院中心の連携はモデルとして適切ではない」との指摘相次ぐ

 また、入院から在宅医療等に移行する患者数の推計に当たり、市町村単位の按分が必要となることを確認した。
 地域医療構想調整会議は、将来の病床の必要量を達成するために構想区域ごとに関係者が協議を行う場。病床機能報告制度で報告された病床数と将来の病床の必要量を比較し、地域が優先的に取り組むべき事項を協議し、地域包括ケアシステムの構築、医療従事者の確保などを検討する。
 調整会議の議論の進め方は、同検討会が昨年12月にまとめた「意見のとりまとめ」で整理した。地域によっては調整会議の議論がすでに始まっており、厚労省は青森県津軽構想区域と岐阜県岐阜圏域の事例を紹介した。
 青森県津軽構想区域では、国立病院機構弘前病院と弘前市立病院を統合した病院が急性期の中核的な機能を担うのに対し、周辺の黒石病院(275床)、大鰐病院(60床)、板柳中央病院(87床)、その他の中小病院は、病床規模の縮小や回復期・慢性期機能への転換を進める内容である。
 岐阜県岐阜圏域では、岐阜県医学部附属病院が県全体の急性期医療の中心となり、岐阜県総合医療センター、岐阜市民病院、松波総合病院と連携し、急性期全体を担う。その他の病院は、救急医療体制を確保した上で、回復期へ移行するとした。
 このような公的病院中心の機能分化・連携の事例に対し、全日病会長の西澤寛俊委員は、「地域医療の現状がまだ病床機能報告制度を分析していないのに、議論を前に進めるのは進みすぎではないか」と指摘した。
 調整会議では、「病床機能報告制度の内容と病床の必要量を比較」する必要がある。しかし現在の公開データでは、病院が担う主な機能しかわからない。2016年度から、電子レセプトを活用した病棟ごとの診療情報が収集されていて、年度末には公表される予定だ。西澤委員は、「病棟単位の情報を共有しないと地域医療構想の協議はできない」と重ねて指摘した。
 これに対し厚労省は、「意見はその通りだが、青森県津軽構想区域については、公的病院が中心で積極的に議論が進み、関係者間で合意できている」と説明した。西澤委員は「地域により事情が異なる。これをモデルとするのではなく、様々なやり方があることを明確にしたい」と述べた。他の委員からも、「2つの事例は偏っている」との意見が相次いだ。
 また、厚労省は病床機能報告制度における医療機能別病床数の2016年末速報値を公表した(表参照)。それによると、高度急性期は15万1,078床で全体の13.6%、急性期は53万732床で47.7%、回復期は12万4,507床で11.2%、慢性期は30万5,796床で27.5%となっている。構成比は2015年度とほとんど変わらない。
協議の場で行政の連携を図る
 協議の場は、医療計画や介護保険事業(支援)計画を作成する際に、医療と介護の整合性を図るために都道府県と市町村の関係者による協議の場を設置し、緊密な連携を図って体制整備を進めるもの。
 厚労省は協議の場の位置づけについて、◇都道府県医療審議会等の前段階として、自治体が地域医師会等の有識者を交えて行う◇二次医療圏単位が原則◇調整会議の枠組みを活用し、ワーキンググループを設置するなど柔軟な運用にする─と説明した。協議の場の議論は7~ 12月の間に行う。
 具体的には、施設整備の計画を立てる上で、医療計画と介護保険事業計画で対応する需要を見込む場合に協議が必要となる。特に、在宅医療等について訪問診療で対応する部分と介護サービスで対応する部分の調整が必要。委員から、調整会議の医療法上の名称も「協議の場」であり、混乱が生じるため、名称の工夫を求める意見が出た。
一般病床C3の患者は外来で対応
 在宅医療等の新たなサービス必要量に関する考え方が議題となった。
 地域医療構想の2025年の病床の必要量の推計によると、現在の入院患者のうち、①一般病床でC3基準未満(1日当たり資源投入量175点未満)②医療区分1の70%③入院受療率の地域差の解消による患者減─を在宅医療等で追加的に対応する患者数としている。その数は29.7 ~ 33.7万人。移行先は医療だと在宅医療と外来受診、介護だと①介護療養からの転換②医療療養からの転換③施設サービス(特養、老健)④居宅サービス─がある。
 C3基準未満の患者について厚労省は、「基本的には外来医療により対応する」とした。ただしこれは、サービス需要を見込む上での想定であり、C3基準未満の患者の退院が強制されるわけではないと説明した。
 外来医療での対応が可能な根拠としては、◇直近で平均在院日数は減少しており、今後の地域医療構想の取組みでも機能分化・連携が促される◇一般病床の効率化で全体として医療需要が減少していることをあげた。
 また、地域医療構想の推計は、構想区域単位であるため、市町村単位の数値がない。このため、在宅医療等の需要を、市町村ごとに按分する必要がある。厚労省は、現時点で分析可能なデータに限界があることから、「一定の過程を置いて、按分や補正を行う」とした。医療計画では、計画の中間年(3年)で、介護保険事業計画の計画期間と同様に、在宅医療の整備目標について見直しを行う。
 これらの整理に対し委員からは、「75歳以上が増えることへの対応として、地域医療構想などの取組みを進めている。しかし75歳以上は(居宅に戻れない)生活障害が急激に増える。現状の延長で在宅等に戻れると考えると誤るのでないか」との意見があった。

 

全日病ニュース2017年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年10月01日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/141001.pdf

    2014年10月31日 ... 医療介護総合確保方針の告示(9月12日)を受ける一方、10月1日の病床機能報告
    制度. 施行を控えた福岡学会は、同報告制度、地域医療構想(ビジョン)、新たな基金
    そして地. 域包括ケア .... 定程度の急性期医療をもつ病院」や「高 ..... 圏域の考え方を
    提示し、検討を求めた。 ...... 岐阜県 長良医療センター 院長 山田堅一.

  • [2] 全日病ニュース・紙面PDF(2014年12月1日号)

    http://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2014/141201.pdf

    2015年1月29日 ... 果、基本的に、事務局(厚労省医政局地域医療計画課)が示した案で臨むことで. 一致
    した。 .... CCU、SCU、HCU等は高度急性期病. 棟(ユニット)であろう ... 尽きぬ疑問の
    報告制度地域医療構想. 衆議院は11 .... 況を報告した。 「データに基づく医療機能
    病床数. の推計方法の検討」と副題がついた報. 告は、9月、10月、11月の3回開いた
    ..... こうした意見聴取の場としては2次. 医療圏単位で設置されている圏域連携. 会議が
    あげられている。圏域連携会議. は、医政 ...... 岐阜県 中津川市民病院 更新.

  • [3] 地域包括ケア病棟 対象患者の拡大や回リハとの機能の違いの明確化が ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20150701/news11.html

    2015年7月1日 ... 地域包括ケア病棟 対象患者の拡大や回リハとの機能の違いの明確化が課題|第850
    回/2015年7月1日号 HTML版。21世紀 ... 入院理由は、全体としては「治療のため」が
    多いが、他院急性期病床から入棟した患者は88%がリハを目的としている。 .... また、6
    月には地域医療介護確保総合推進法が成立し、このための基金や地域医療構想、
    病床機能報告制度、等が具現化 ... 木村 厚(医)木村病院理事長神奈川県須田雅人(医
    )赤枝病院院長〃山本 登(医)菊名記念病院理事長岐阜県山本眞史(医) ...

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