全日病ニュース

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医療広告ガイドラインでウェブサイトを規制

医療広告ガイドラインでウェブサイトを規制

具体的な禁止事項を示し適切な情報提供促す

 厚生労働省は5月8日、医療広告ガイドライン(医業もしくは歯科医業または病院もしくは診療所に関する広告等に関する指針)を公表した。昨年の通常国会で成立した医療法改正の省令・告示改正に伴うもので、過度な規制とならないよう配慮しつつ、美容医療などへの苦情を背景に、規制を強化するガイドラインになっている。以下でそのポイントを紹介する。広告規制の見直しは6月1日に施行された。

 (広告規制の趣旨)
 医療機関の広告は医療法などで制限してきたが、ウェブサイトは規制対象とせず、ガイドラインにより関係団体などの自主的な取組みを促してきた。しかし美容医療に関する相談件数が増加し、消費者庁から法的規制が必要との建議がなされた。2017年の通常国会で成立した医療法等一部改正で、医療機関のウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽・誇大の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とした。
 その際、広告可能事項を限定すると、詳細な診療内容など患者の求める情報提供が妨げられることから、一定の条件のもとに広告可能事項の限定を解除することにした。
 医療機関の広告に対しては、①医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べて著しい②医療は極めて専門性の高いサービスで、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質を事前に判断することが非常に困難─との基本的な考え方がある。限定的に認める事項以外は、原則広告は禁止される。
 虚偽の広告は、罰則付きで禁止となる。虚偽とは言えなくても、①比較優良広告②誇大広告③公序良俗に反する内容の広告④患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告⑤治療等の内容または効果について、患者等を誤認させる恐れがある治療等の前または後の写真等の広告─は禁止となる。

 (広告規制の対象範囲)
 広告は、患者の受診などの「誘引性」と医療機関の「特定性」があるものと定義される。例えば、新聞記事は特定の医療機関を推薦する場合でも、「誘因性」があるとはされない。ただし医療機関のウェブサイトに掲載する体験談は広告に該当する。

 (禁止される広告の具体例)
 ○虚偽広告
・「絶対安全な手術です!」
→絶対安全な手術等は、医学上あり得ないので、虚偽広告として取り扱う。
・加工・修正した術前術後の写真等の掲載 →あたかも効果があるように見せるため加工・修正した術前術後の写真等は虚偽広告として取り扱う。
 ○比較優良広告
・膵臓がんの手術では日本有数の実績
・「芸能プロダクションと提携しています」
→他の医療機関と比較して優良である旨を広告することは、事実であっても著しく誤認を与える恐れがあるため禁止される。ただし最上級を意味する表現を除き、合理的な根拠があれば、客観的な事実の記載を妨げるものではない。著名人との関連性の強調は、患者を不当に誘引する恐れがあるとされる。
 ○誇大広告
・「知事の許可を取得した病院です」
→病院が都道府県知事の許可を受け開設するのは当然のことで、それを強調して特別な許可を得た病院であるとの誤認を与える場合は、誇大広告である。
・「○○手術は効果が高く、おすすめです」
→科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず有効性を強調するのは、誇大広告である。
 ○患者の主観に基づく体験談
 体験談は個々の患者の状態で異なるもので、誤認を与える恐れがあり、医療広告として認められない。なお、個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ、第三者が運営する口コミサイトの体験談の掲載は、医療機関が広告料など費用負担に便宜を図って掲載しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない。
 ○品位を損ねる内容の広告
・「今なら○○○円でキャンペーン実施中!」
・「無料相談された方全員に○○○をプレゼント!」
→医療に関する広告は、患者などが広告内容を適切に理解し、治療等の選択に資するよう客観的で正確な情報の伝達に務めなければならないことから、医療と直接関係ない情報を強調することは、広告として適切ではない。

 (広告可能事項の限定解除の要件等)
 医療法により広告可能とされた事項以外は広告してはならない。しかし患者が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの観点から、一定の要件で広告可能事項の限定を解除し、他の事項を広告することができる。具体的には、ウェブサイト等が対象となる。

 (広告可能な事項)
 以下は原則として広告可能である。
 ▽診療科名▽住所等▽診療時間▽臨床研修病院など制度による指定▽地域医療連携推進法人への参加▽入院設備や人員配置▽医療従事者の略歴等▽医療安全や個人情報保護の措置▽紹介医療機関や共同利用設備▽療養計画書など提供する情報▽手術・検査など医療の内容▽手術件数など▽健診や予防接種などサービス提供─など。

 (相談・指導など)
 虚偽・誇大広告により、患者などが適切な医療の受診機会を喪失したり、不適切な医療を受けないよう都道府県の担当係を決め、相談窓口を明確にする。具体的な窓口としては、医療安全支援センターや保健所の医療法担当部署等が想定される。適切な苦情相談体制を確保し、当該苦情相談が窓口の連絡先については、自治体のウェブサイトや広報誌などを通じて、住民に周知する。
 広告違反の指導・処分に際して、都道府県には、個別事例に応じた柔軟な対応を求める。広告違反疑い事例に対しては、都道府県が広告の中止や是正を指導・命令することができる。行政指導の際に、任意調査を行うが、従わない場合は立入り調査ができる。悪質な場合は広告の中止を命令できる。
 虚偽広告である場合や命令に従わない場合は、刑事告発し罰則を課すことができるほか、行政処分として開設許可の取消しを検討することになる。

 

全日病ニュース2018年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 医療広告ガイドライン

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180509_2.pdf

    2018年5月8日 ... 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針. (医療
    広告 ... あり方に関する検討会等における議論を踏まえ、別紙1のとおり、「医療法施行.
    規則等の一部を改正する ... る指針(医療広告ガイドライン)」は、地方自治法(昭和 22
    年法律第 67 号)第. 245 条の4第1項 ...... ① 医療は人の生命・身体に関わるサービス
    であり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当. なサービスを受け ...

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