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2018年度診療報酬改定が意味するもの、今後の方向性について

2018年度診療報酬改定が意味するもの、今後の方向性について

【診療報酬改定シリーズ 2018年度改定への対応①】医療保険・診療報酬委員会 委員長 津留英智

 2018年度診療報酬・介護報酬同時改定をむかえ、同時に第7次医療計画、第3期介護保険事業計画、第3期医療費適正化計画、その他新専門医制度の開始、医師の働き方改革、地域医療構想の推進など、様々な医療制度の変革に対して、各会員病院ではその対応に日々追われているものと思う。今回、全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会では、9回シリーズで今回の改定について、①改定の意図をどう受け止めるのか、②経営的なメリットをどう考えるのか、③算定要件を満たすための課題、④算定に当たり留意すべき事項等を踏まえ、各回ある程度テーマを絞った内容で連載を行う(各回のテーマは右表を参照)。

 2018年度改定を取り巻く環境
 我が国の医療・介護が抱える基本的な問題として、⑴社会保障費(医療介護財源)の問題、および⑵人口減少、少子高齢“多死”社会の到来、高齢者人口増加の都道府県偏在の問題があり、それに対応して現在推進されている地域医療構想、地域包括ケアを後押しする形で、今回の医療・介護のダブル改定を迎えた。
 診療報酬本体は+0.55%(前回2016年改定+0.49%)だったが、薬価の▲1.65%、材料価格▲0.99%込みで、全体改定率▲1.19%となり(前回2016年改定▲0.84%)、より厳しい改定となった。2018年度診療報酬改定の概要(図)として、Ⅰ地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携、Ⅱ新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実、Ⅲ医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、Ⅳ効率化・適正化を通じた制度の安定化・持続可能性の強化―の4つの内容が示され、これらを基本として、今回の診療報酬改定が構築されている。

 次期改定に向けた課題
 今回も平成30年度診療報酬改定に係る答申書附帯意見が提示され、次回改定まで引き続き検討することになっている。特に入院基本料については、入院医療機能により適切な評価指標や測定方法等、医療機能の分化・強化、連携の推進に資する評価の在り方の見直しが行われる予定だ。今回の改定の大きなポイントである、入院基本料の詳細については、次回以降のシリーズ連載に委ねるとして、今後、医療資源投入量と医療ニーズのデータをさらに解析し、入院基本料評価体系(特に急性期入院基本料)が見直しされ、場合によっては、高度急性期病院は、看護必要度に代わるDPCデータによる医療ニーズ評価のハードルがさらに上がり、それ以外の地域包括ケアを支える急性期病院群との棲み分けがなされることも予想される。
 また、今回導入された「かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価」、「介護医療院の創設」等が、地域包括ケアの構築にどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視が必要だ。
 「医療従事者の負担軽減、働き方改革」についても評価の在り方を検討となっており、医療現場での混乱を出来るだけ避ける努力をしつつも、医療界全体の問題として働き方改革への取組みが求められている。

 消費税による財源確保は実現するか
 次期改定に向けてのポイントとして、消費税増税による社会保障費(医療費)財源の確保が本当に実現するのか、控除対象外消費税問題をどう解決していくのか、また地域医療構想において、公立・公的医療機関の空床・非稼働病床を明らかにし、経営の効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しを図ることができるのか、これらの見通しはまだ明らかとは言えない。
 2015年時点で公立病院数893(地方公営企業病院と地方独立行政法人の計)の経常損益が542億円の赤字(これは補助金約6千億円繰入後)、これに加え別途設備投資補助金を約1,800億円受けている実態があり、これを国(総務省)や各都道府県がどの程度本気を示し実効性をもって改革を推進することが出来るのかが問われている。
 重要課題は山積しており、これらの問題は限られた財源の中で、今後の診療報酬改定に少なからず影響を与えるものとなる。

 

全日病ニュース2018年6月1日号 HTML版

 

 

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    2017年10月15日 ... 2018年度医療・介護同時改定を睨む. 【医療保険・診療報酬委員会】. 医療保険・診療
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  • [2] 全日病事務局からのお知らせ:お知らせ - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/topics/jimukyoku/

    2018.03.01 ○平成30年度診療報酬改定について(外部サイト:厚労省) 外部リンク;
    2018.02.28 ○看護師等免許保持者の届出 ... 【参考】医師の働き方改革に関する検討
    会 中間的な論点整理(骨子案) PDFリンク; 2018.01.26 ○平成29年度厚生労働省
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  • [3] 加藤厚労相に2018年度診療報酬改定を答申|第911回/2018年2月15 ...

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    2018年2月15日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は2月7日、2018年度診療報酬改定の内容を了承し、加藤
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    2025年を見据え、医療機能の分化・連携や地域包括ケアシステムの構築を目指す
    とともに、働き方改革への対応も ... 答申後の会見で中医協委員の猪口雄二・全日病
    会長は「急性期入院料の大幅な組み換えや、超高齢化社会の進展、 .... 社会保障審議
    会医療保険部会・医療部会が策定した基本方針(12月11日)に沿って、項目 .

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