全日病ニュース

全日病ニュース

2040年の医療・介護費用は92.5~ 94.3兆円に

2040年の医療・介護費用は92.5~ 94.3兆円に

【社会保障の将来見通し】就業者数もシミュレーション

 政府は5月21日の経済財政諮問会議に、高齢者人口がピークを迎える2040年までの社会保障費の推計値を示した。地域医療構想や医療費適正化計画の取組みを前提とする「計画ベース」の見通しによると、2040年度の医療・介護給付費は、92.5~ 94.3兆円になると推計。2018年度の49.9兆円に比べ、1.8倍以上に膨らむ見通しだ。対GDP比は、2018年度の8.8%から、11.7 ~ 11.9%に上昇する(図)。年金や子ども・子育て費用などを含めた社会保障費全体では188.2~ 190.0兆円となる。
 これまで政府は、団塊の世代がすべて75歳以上になる2025年までの推計値を示していたが、2040年までを推計するのは今回が初めて。社会保障・税一体改革の先を見据えた議論を行うための素材と位置づけている。
 推計は、将来推計人口を踏まえるとともに、給付費と経済の見通しで一定の前提を置いて行った。医療・介護サービスについては、提供体制の改革や適正化の取組みを反映した「計画ベース」と、現在の年齢別受療率・利用率を基に機械的に計算した「現状投影」の2通りの見通しを作成した。なお、医療については、単価の伸び率の仮定を2通り設定した。経済の前提は、低い成長率を前提とする「ベースラインケース」と「成長実現ケース」の2つのケースで試算した。
 計画ベース・経済ベースラインケースで、2040年度の医療・介護給費費を推計すると、92.5 ~ 94.3兆円となる見通し。幅が生じるのは、医療の単価の伸び率の違いによるもので、医療は66.7 ~ 68.5兆円。介護は、25.8兆円と推計している。
 計画ベースと現状投影を比較すると、医療では2040年度で1.6兆円が適正化されると見込んだ。一方、介護費用は、地域医療介護総合確保基金によりサービス基盤の充実を図ることなどで計画ベースの方が1.2兆円増える。医療・介護を合わせると0.3 ~ 0.4兆円の適正化となる。
 社会保障給付費全体では、年金の73.2兆円( 対GDP比9.3%)、子ども・子育ての13.1兆円(同1.7%)などが加わり、188.2 ~ 190.0兆円となる。対GDP 比は23.8〜 24.0%。

 生産性向上で就業者が▲130万人
 政府は今回、2040年の医療福祉分野の就業者数の見込みも推計した。「計画ベース」で推計すると、2018年度の823万人から、2040年度には1,065 ~1,068万人と大きく増加する。就業者全体に占める割合は、2018年度の8.3%から18.8~ 18.9%となる。
 これに対し、①医療・介護需要が一定程度低下した場合②医療・介護等の生産性が向上した場合の就業者数の減少分を示した。生産年齢人口の減少による人材不足が懸念される中で、サービス需要そのものの減少やICTなどの活用で生産性を向上させれば、就業者数を減らすことができるとした。
 医療・介護需要が一定程度低下した場合は、高齢期の入院・外来の受療率が2.5歳分、より高齢に移行すると想定した。平均寿命の延びや過去10年の受療率の低下を踏まえた。介護も同様に、要介護認定率が1歳分後ろにずれると見込んだ。その結果、医療福祉分野の就業者数は▲81万人(就業者数に占める割合▲1.4%)になる。 医療・介護等の生産性が向上した場合は、ICT、AI、ロボットの活用で、5%程度の業務代替が医療で期待できると想定した。介護でも、例えば、特別養護老人ホームで入所者2人に1人の介護職員が必要であるのに対し、ICTの活用で2.7人に1人の配置にできるなど、5%程度の効率化を見込んだ。その結果、医療福祉分野の就業者数は▲53万人(同▲0.9%)になる。
 両方の効果を合わせると、▲130万人(同▲2.3%)の人員を減らせると推計している。

 猪口雄二会長のコメント
 少子高齢社会において、医療・介護の持続は最大の重要課題である。医療の高度化、介護需要の増、担い手の不足は明らかであり、どのように運営すべきかについては、日本の英知を結集して対応する必要があろう。

 

全日病ニュース2018年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 「病院のあり方に関する報告書」(2011年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2011/01.html

    既刊の報告書や直近の医療情勢にとらわれず、社会構造の変化や経済の将来見通し
    等も踏まえた現実的な対応と、これまで ... 近年の人口の推移は、国立社会保障・人口
    問題研究所が2005年12777万人から2009年12740万人に減少するとした予測通り ...
    厚生労働省患者調査を基にした疾病構造推計によると、2025 年には手術患者数は1.3
    倍、短期入院患者数は1.7倍、慢性期入院患者数は2.5倍程度に増加するとされている

  • [2] 病院のあり方に関する報告書 (2015-2016年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/arikata/2015_2016_arikata.pdf

    予測される超少子. 高齢社会における医療・介護提供体制は既存体系の延長では不
    可能であり、喫緊な検討課 .... 降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計
    人口(平成 24 年1月推計)中位推計」) ... は不足するという見通しの中で取るべき
    選択肢.

  • [3] 「病院のあり方に関する報告書」(2015-2016年版)

    https://www.ajha.or.jp/voice/arikata/2016/01.html

    1 将来推計人口については、特に断らない限り国立社会保障・人口問題研究所(http://
    www.ipss.go.jp/ 外部リンク ... 人口構成の変化の推移・カバーすべき面積・人口密度・
    医療介護従事者の確保の見通しなどから、地域特性を踏まえた対応が求められる。

本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。