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地域医療構想達成に向け調整会議を活性化

地域医療構想達成に向け調整会議を活性化

【厚労省・地域医療構想WG】県単位の会議やアドバイザー育成など具体案を了承

 

 厚生労働省は5月16日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(尾形裕也座長)に、地域医療構想調整会議の活性化策を提案し、概ね了承された。構想区域(2次医療圏)単位で設置されている調整会議について、都道府県単位でも設置することを推奨するほか、研修会の実施や「地域医療構想アドバイザー」を育成することで、地域の取組みが進むことを期待する。

 都道府県単位で認識の共有が必要
 調整会議は、将来の医療機能別の病床数の必要量を達成するための方策など、地域医療構想の達成を推進するために、医療関係者や医療保険関係者、学識経験者などが集まって協議を行う場。政府は、今年度に調整会議を年4回開き、地域医療介護総合確保基金も活用しながら、各構想区域で、医療機能ごとに具体的な医療機関名をあげて、機能分化・連携、転換を進めることを方針として定めている。
 2017年度末までの調整会議の実施状況をみると、全341構想区域で1,067回(平均3.1回)、調整会議以外の意見交換会は228回となっている。最も開催回数が多いのは、鹿児島県の姶良・伊佐地区の14回だ。また、2017年度病床機能報告で、未報告の医療機関数は455施設(151区域)あり、そのうち未報告医療機関のあり方を議論した構想区域は33区域。非稼動病棟のある医療機関は1,158施設(285区域)で、そのうち非稼動病棟のあり方を議論した構想区域は66区域だった。
 厚労省は「調整会議の議論が低調との指摘があり、我々もそのように認識している」と述べた上で、調整会議を活性化するための方策を提案した。具体的には、①都道府県単位の調整会議の設置を推奨②都道府県が主催する研修会の開催支援③地元に密着した「地域医療構想アドバイザー」の育成─を示した。
 都道府県単位の調整会議の設置については、都道府県が地域医療構想を推進する上で、認識を共有する機会を定期的に設けることが重要であることが、佐賀県などの事例で明らかになってきたことによる。全日病副会長で織田病院(佐賀県鹿島市)を運営する織田正道委員は、「県単位の調整会議には、各調整会議の代表が集まるため、県全体のコンセンサスを得る場にすることができる。また、高度急性期の医療は構想区域を越えるので、県全体の話し合いが必要になる」と説明した。
 設置を「推奨」としているのは、都道府県で設置することの法的な規定がないため。尾形座長は「何を協議する場であるかを含め、通知で位置づけを明確にすべき」と厚労省に要請した。
 厚労省は、都道府県が地域の実情に合った論点提示などを行うには、事務局機能を強化する必要があることを指摘した。これについては、日本医師会の委員が「事務局は都道府県が主体になるのではなく、都道府県医師会が担い、それを都道府県が支援する形にすべき」と主張した。
 都道府県が実施する研修会では、厚労省が担当者を派遣し、厚労省の研修会と同様のプログラムで行うことを推奨する。費用は地域医療介護総合確保基金を利用できる。
 「地域医療構想アドバイザー」については、大学や病院団体などの意見を踏まえて、地元の有識者を推薦してもらう形で、厚労省にアドバイザー組織を設置する。地域医療構想や医療計画を理解していることに加え、各種統計や病床機能報告のアセスメントができることが条件になる。費用は地域医療介護総合確保基金を利用できる。

 病床報告と病床必要量の比較はおかしい
 同日のワーキンググループでは、医療機能の分化・連携を推進する取組みとして、和歌山県と奈良県の事例が報告された。しかし両県の報告では、構想区域内で急性期が過剰で回復期が不足していることを示すために、病床機能報告制度で報告された医療機能別病床数と「2025年の医療機能別の将来の病床数の必要量」を比較していることから、医療提供側の委員から問題点を指摘する意見が相次いだ。
 織田委員は、「病床機能報告制度による報告と『将来の病床数の必要量』が単純比較できないのは共通認識のはずだ。報告制度は病棟単位で、例えば、50床のうち30床が急性期で20床が回復期と判断しても、全体では急性期と報告するので、50床すべてが急性期とカウントされる。それが病床単位で計算する病床数の必要量とずれが生じるのは明らか」と説明した。
 他の委員からも、「急性期の病院に急性期以外の病期の患者がいてもよいことは前提のはず。急性期の病院で急性期の患者だけではないからけしからんというのはいかがなものか」などの意見が出た。
 2018年度の病床機能報告の見直しに向け、医療機能に関する定量的な基準を判断する検討も行った。厚労省が、高度急性期・急性期と報告している病棟の中で、急性期と考えられる医療を提供していない病棟数を示した。高度急性期・急性期と報告した2万1,265病棟のうち、「幅広い手術の実施」「がん・脳卒中・心筋梗塞等の治療」「重症患者への対応」「救急医療」「全身管理」の全項目で該当のない病棟は1,076病棟、様式2未提出の1,938病棟を合わせると、3,014病棟(約14%)だった。
 定量的な基準については、診療報酬などを用いて、高度急性期・急性期・回復期を区分する埼玉県の事例が同日示されている。今後、定量的な基準の議論をするため、厚労省は今後のワーキンググループで案を示してくると考えられる。

全日病ニュース2018年6月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 地域医療構想の進め方について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180213_4.pdf

    2018年2月7日 ... 地域医療構想の達成に向けて、 「個別の病院名や転換する病床数等の具体的対応
    方針 .... 由書提出、②地域医療構想調整会議での協議への参加、③都道府県医療
    審議会での ..... 都道府県内の構想区域(二次医療圏が基本)単位で推計.

  • [2] 地域医療構想による在宅医療等の新たな需要を議論|第889回/2017 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170301/news01.html

    2017年3月1日 ... 地域医療構想調整会議は、将来の病床の必要量を達成するために構想区域ごとに関係
    者が協議を行う場。 ... 都道府県医療審議会等の前段階として、自治体が地域医師会等
    の有識者を交えて行う◇二次医療圏単位が原則◇調整会議の ...

  • [3] 地域医療構想を踏まえた「公的医療機関等2025プラン」

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2017/170815_2.pdf

    2017年8月4日 ... ところであり、今後、地域医療構想調整会議(同法第30条の14第1項に規定する協. 議
    の場をいう ... 割を踏まえた今後の方針を検討することが重要であり、地域医療構想
    達成に向け、. 各医療 .... 都道府県が策定した地域医療構想を参考に記載すること。 8
    位ざり .... 地域医療構想」は、二次医療圏単位での策定が原則。 ○「地域 ...

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