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ホーム全日病ニュース(2018年)第926回/2018年10月1日号医療機関の消費税問題で厚労省に要望書を提出...

医療機関の消費税問題で厚労省に要望書を提出

医療機関の消費税問題で厚労省に要望書を提出

【日病協】税制上の仕組みと補てん不足の救済措置求める

 日本病院団体協議会は9月12日、医療機関の消費税問題に関する要望書をまとめ、厚生労働省の鈴木俊彦事務次官に手渡した。8月29日に四病院団体協議会・三師会としてまとめた提言内容と歩調を合わせ、控除対象外消費税問題を解決するための税制上の新たな仕組みの創設を求めた。また、2014年度に実施した診療報酬での補てんに不足があったことが一因で生じている病院経営の悪化に救済措置を講じるべきと主張した。
 要望項目は右記の表の通りで、4項目からなる。控除対象外消費税問題に対応した診療報酬による補てんにおいて、全体での不足があり、さらに、病院の類型により、ばらつきが大きいことを指摘。特に、大規模急性期で不足が大きく、経営が悪化していることへの対応を訴えている。
 項目①は、補てん状況の検証で、厚労省の計算間違いにより、不足が明らかになるのが遅れたことを問題としている。3年前の検証でわかっていれば、2018年度診療報酬改定で対応することもできたが、来年10月まで放置されることになり、傷口を深めたとの認識を示した。計算間違いは厚労省への信頼を失わせることにもつながり、今後詳細な調査が中医協の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で行われることが必要とした。
 項目④も、消費税5%から8%への引上げ時の2014年度の診療報酬による対応で、補てん不足があったことに関連する。病院全体の補てん不足は90.6%、特定機能病院に至っては61.4%である(2014年度)。この状況は来年10月まで続くため、「有効な救済措置」を求めた。
 ただ、鈴木事務次官は、診療報酬で時限的な救済措置を講じることは難しいとの認識を示すとともに、前回の診療報酬改定でも病院経営の実態をみて、総合的な対応を行っているとの回答があったという。要望書提出後の会見で、日病協の山本修一議長は、「経営が悪化した病院に、低利の政策融資を与えることも一つの考え」と述べた。
 項目②と③は、四病協・三師会の8月29日の提言に歩調を合わせている。消費税10%以降の対応として、診療報酬で補てんした後に、個々の医療機関で生じる控除対象外消費税の過不足に対しては、新たな税制上の仕組みにより対応することを求めている。
 診療報酬による補てんについては、現状の補てん方法は医療機関ごとのばらつきが大きいことを踏まえ、「病院類型別に公平となる」ことを強調している。ただ、どれだけきめ細かく補てんしたとしても、必ず個別の医療機関で過不足は生じるので、新たな税制上の仕組みによる対応が不可欠となる。
 全日病の猪口雄二会長は会見で、「病院関係者には、依然として、診療報酬を課税化して、個別の医療機関ごとに還付を受けられる『課税化』を主張する意見もある。しかし、政治的に、あるいは国民の理解を得る上でも、診療報酬の課税化はかなりハードルが高い。このような状況で、新たな税制上の仕組みが創設され、個別の医療機関で控除対象外消費税の過不足に対応できるようになれば、我々の主張は満たされると言える」と述べた。

 医療機関の消費税問題に関する要望
 近年、病院経営は悪化しており、特に大規模急性期の経営悪化は顕著である。控除対象外消費税が経営悪化の大きな要因となっており、今回それを裏付けるように、2014年度診療報酬改定における消費税引上げ相当額の補てん結果の計算違い、さらに補てん不足が公表されたので、その経過を簡単に述べる。
 2014年4月、消費税が5%より8%に引き上げられた。その際、非課税である社会保険診療報酬においては、初診料、再診料、入院基本料、等に消費税分を補てんするという手法がとられた。
 2015年2月、四病院団体協議会、日本病院団体協議会は、病院に関する消費税補てん状況の調査を行い、全体の補てん率は平均値76.1%、中央値84.2%でばらつきが大きい。特に400床以上の病院では70.5%しか補てんされていない、等を発表した。また全国医学部長病院長会議も、国立大学病院における補てん率は60%台に過ぎないと発表していた。
 しかし、2015年11月、厚生労働省の調査結果では補てん率全体102.07%、病院102.36%、特定機能病院98.09%、等であり「補てん状況にはばらつきはみられるものの、マクロではおおむね補てんされている」ということが公式見解とされた。
 ところが2018年7月になって、2015年の調査では計算違いがあり、実際の補てん率は、2014年度全体90.6%、病院82.9%、特定機能病院61.4%等、2016年度全体92.5%、病院85%、特定機能病院61.7%、等であったことが発表された。
 日本病院団体協議会は、厚生労働省が行う調査の信頼性が失墜したともいえるこのような結果を受け、消費税問題への対応として下記を要望する。

①今回の診療報酬における補てん不足、計算違いの原因について、詳細な調査を行うとともに、その結果をすべて公表ること。
②医療機関における2019年10月の消費税引上げ時の対応については、今後方針が決定される。仮に診療報酬での対応が必要となった場合、上記調査の結果も踏まえ、すべての医療機関、特に病院機能別に公平となる補てんを行うこと。
③診療報酬による対応は②の手法を用いても、個々の医療機関における補てんのばらつきは必ず残る。そこで、各医療機関の消費税補てん相当額と控除対象外仕入れ税額を比較し、補てんの過不足がある場合、税制上での対応を可能とする新たな仕組みを創設すること。
④病院経営の悪化の原因となっている控除対象外消費税、特に2014年度以降の補てん不足に対し、有効な救済措置を創設すること。

 

全日病ニュース2018年10月1日号 HTML版

 

 

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    2018年5月1日 ... 現状の控除対象外消費税の対応では、病院への診療報酬補てんが十分でないとの
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    HTML版。21世紀の医療を考える「全日病 ... 消費税非課税となっている医療を直ちに
    課税化することは困難であることを考慮し、現状の診療報酬による補てんを ...

  • [3] 平成30年度税制改正要望書

    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/170803_8.pdf

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