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ホーム全日病ニュース(2018年)第926回/2018年10月1日号都道府県の在宅医療の目標設定に向け議論の整理案...

都道府県の在宅医療の目標設定に向け議論の整理案

都道府県の在宅医療の目標設定に向け議論の整理案

【厚労省・在宅医療介護連携WG】KDBなど市町村単位の情報把握が課題

 厚生労働省は9月10日、「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(田中滋座長)に、需要の増加に見合う在宅医療の供給体制を整えるための方策に関して、議論の整理案を示した。同日の議論を受け、さらに整理した上で、「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告する。
 超高齢社会を迎え、今後高齢者の医療・介護需要は急増する。現時点でも、多くの地域で在宅医療の供給は需要に対し、不足している。療養病棟や介護施設の需要も大きいが、医療資源が限られているので供給を増やそうとしても限界がある。一方、2040年を過ぎると医療・介護需要はピークを迎え、人口減少が本格化することを考えると、ベッド数は増やすべきではないという見方もある。
 厚労省の推計によると、在宅医療の需要は2025年に約100万人、いわゆる「追加的需要」で約30万人の純増を見込み、約130万人程度と推測している。
 「追加的需要」とは、療養病棟で医療の必要性の低い入院患者の一定数が退院するとともに、西高東低の療養病床数の地域差が縮小することを想定した需要のこと。入院から在宅への移行分となる。一般病床の長期入院患者の一定数が早期退院することも見込むが、こちらは主に外来で対応できると想定されている。
 この追加的需要を含め、在宅医療の需要に対応するため、どのように提供体制を整備するかを、都道府県は医療計画に記載している。しかし、今年度からの6年間の医療計画を都道府県別に比べると、目標の設定などにおいて、ばらつきが大きいことがわかった。特に、介護のサービス量の見込みが十分にできていない府県があり、その把握に有効と考えられるKDB(国保データベース)を活用しているのは、13都府県にとどまっている。
 KDB は、市町村単位で保健・医療・介護のデータを集積している。在宅医療圏域は二次医療圏単位だが、市町村単位の介護サービス量を見込まなければ、在宅医療に必要な供給体制を把握できない。
 このため、議論の整理案では、KDBの活用を促すことにした。ただ、KDB を活用するには、専門的な知識・技術が必要になる。全日病副会長の織田正道委員は、「KDBをもう少し使いやすくして、市町村の状況が把握できる工夫をすべき。生活する現場により近いところで、考えることが大切だ」と述べ、都道府県に対し、市町村や地域の提供体制を見える化できる体制づくりを求めた。
 議論の整理案は、基本的には医療計画の3年目の中間見直しで設定する具体的な整備目標を目指している。しかし、それまで待っていると、2025年に間に合わなくなるので、都道府県がすぐに着手すべきものとして、議論を整理している。
 また、都道府県に対しては、医療政策部局と介護保険担当部局の役割分担を図ることが強調された。保健所の活用も明記された。さらに、医師会や病院団体などと課題を共有し、計画的な取組みが行われるよう、課題解決に向けたロードマップの作成を求めている。

 入退院支援ルールの策定促す
 在宅医療には基本的に、①退院支援②日常の療養支援③急変時の対応④看取りの4つの機能があるとされる。
 退院支援については、在宅医療圏ごとに入院退院支援ルールを策定することを明記した。現状で退院支援ルールを決めているのは15都道府県。策定していない都道府県には、先進事例を参考に策定を促す。あわせて、同ワーキンググループとしても、入退院支援ルールの議論を今後行いつつ、取組み状況を確認していく。
 急変時の対応では、まずは後方支援の病院を確保することが課題となる。さらに、病院は後方支援の役割だけでなく、地域の実情に応じて病院が積極的に在宅医療に加わり、診療所と連携することも重要と明記した。
 急変時の対応と看取りに関しては、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の取組みが診療報酬でも位置づけられたことを受け、終末期医療での意志決定を支援するため、介護従事者への研修なども含め、地域住民への普及・啓発を進めていくべきであると指摘している。

 

全日病ニュース2018年10月1日号 HTML版

 

 

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