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ホーム全日病ニュース(2019年)第945回/2019年8月1日号理学療法士等が増える訪問看護ステーションへの対応が課題...

理学療法士等が増える訪問看護ステーションへの対応が課題

理学療法士等が増える訪問看護ステーションへの対応が課題

【中医協総会】次期改定に向けた第1ラウンドの議論終了

 中医協協会(田辺国昭会長)は7月17日、2020年度診療報酬改定に向け、前回の「地域づくりにおける医療のあり方」をテーマにした議論の続きで、「介護サービスとの連携」、「精神疾患」、「障害サービスとの連携」を議論した。「介護サービスとの連携」では、理学療法士等が増える訪問看護ステーションの現状に対して、懸念を含め様々な意見が出た。なお、同日で第1ラウンドの議論が終わり次回、4月から始めた議論の結果を整理する。
 訪問看護ステーションは2012年以降、増加傾向にあり、特に営利法人の増加が著しい。医療法人は2018年度で3,460事業所と全体の36%を占めるが、この10年間ほぼ横ばいだ。また、診療報酬改定の後押しがあり、2017年11月時点で機能強化型訪問看護管理療養費を届け出ている機能強化型訪問看護ステーションは「1」「2」を合わせて438事業所となっている。
 訪問看護ステーションの従事者のうち、理学療法士などが占める割合が増加している。2000年には全体の91%が看護職員だったが、2017年には71%に下がった。逆に、理学療法士等(PT・OT・ST)は同時期に5%から22%に上昇した。
 理学療法士等のいない訪問看護ステーションは2017年で45.9%と半分近くを占めるが、全体として、理学療法士等の割合が多い訪問看護ステーションが増加傾向にある。理学療法士等が8割以上の訪問看護ステーションは全体の0.4%に過ぎない。しかし、24時間対応体制加算を届けているのは31.6%で、他の訪問看護ステーションと比べ、24時間対応の事業所が非常に少ないこともわかった。
 全日病会長の猪口雄二委員は、「訪問看護と言うより、リハビリテーションを多く実施する事業所が目立ってきた。理学療法士等が病院から移り人手不足になっているという話もきく。何らかの手を打つ必要があり、例えば、介護保険の訪問リハビリは 通院できない利用者に限定すべきではないか」と述べた。
 他の委員からも、「理学療法士等の多い訪問看護ステーションで24時間対応が少ない。訪問看護ステーションのあり方が問われる」、「医師による指示書に、訪問回数や訪問者も記載する必要があるのではないか」などの意見が出た。一方、日本看護協会の専門委員は、「2018年度改定で一定の対応は図られ、きちんとチェックされている。次期改定でも、医療ニーズの高い人への対応など機能強化のため、大規模化を促進する方向での改定が必要」と主張した。
 介護医療院についても議論があった。2018年度に創設され、2019年3月末時点で150施設・1万28床となっている。転換元は65.8% が介護療養病床、18.3% が介護療養型老人保健施設、15.3%が医療療養病床。支払側の委員は、「転換のインセンティブとなる加算があるにもかかわらず、出足が遅いと感じる。特に、看護配置25対1の経過措置の療養病棟からの転換が進んでいない。次期改定で経過措置は廃止すべきだ」と主張した。
 また、他の委員から、介護医療院の施設数に地域差が大きいことが指摘され、実態把握が求められた。

ギャンブル等依存症対策などが課題
 「精神疾患」については、長期入院患者の地域移行・生活支援の体制への対応などとともに、依存症対策をあげた。◇アルコール依存症◇ギャンブル等依存症◇薬物依存症が課題となる。カジノ解禁の方針を背景に、2018年にギャンブル等依存症対策基本法が成立。法律により、医療提供体制の整備が求められている。
 これに対し、支払側の委員は、「依存症とそうでない症状の線引きが難しい。エビデンスのある確立された標準治療もまだないときく。診療報酬に値する治療効果がきちんと示されなければ、次期改定での対応は難しいのではないか」とけん制した。診療側の委員は、「推計患者数が70万とされる一方で、受診患者数は外来で2,921人、入院で261人。依存症全般にいえるが、このギャップをどう考えればいいのか」と問題提起した。
 「障害サービスとの連携」については、2018年度改定での対応や自立支援医療の状況が示されるとともに、発達障害に関して、詳細な説明があった。
 2016年に改正発達障害者支援法が成立。発達障害の受診は2002年に3.5万人であったが、病気としての認知度が高まるに従い、2017年には23.3万人と7倍近くになった。広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)が代表的な発達障害だ。小・中学校の通常の学級で発達障害と考えられる者は6.5%(2012年度)と推計される。

届出様式の簡素化で負担軽減求める
 診療報酬の事務の効率化・合理化と情報の利活用を見据えた対応も論点となった。
 具体的には以下のような課題があがっている。◇届出項目の重複(例えば、「在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院に係る報告書(様式11の3)」と「在宅支援連携体制に係る報告書(様式11の4)」)◇告示や通知等の記載があいまいな算定要件(例えば、複数の手術を同時に行った場合の記載)◇レセプトの合理化(例えば、処置・手術・検査でのフリーテキスト形式の記載で入力ミスや漏れが生じている)。これらに対する対応を次期改定で講じる方針が示された。
 猪口委員は、「2018年度改定で、施設基準に係る届出が簡素化され、届出を不要とする様式が設けられたことはよかった。しかし、適時調査などに備えて、作っておくことに変わりはないので、実質的には、あまり病院の負担軽減にはなっていない」と、改善を求めた。
 そのほか、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を活用した第三者による調査研究を促進する目的や、先の通常国会で成立した改正健康保険法による被保険者番号の個人単位化、NDB、介護DB、DPCデータの連結に対応した見直しを行う方向性も示された。

 

全日病ニュース2019年8月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190515/news02.html

    2019年5月15日 ... 中医協総会(田辺国昭会長)は4月24日、2020年度診療報酬改定に向け年代別・世代
    別の課題で2回目の議論を行った。 ... また、「2020年度改定は医療・介護同時改定
    ではないが、訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問と、訪問 ...

  • [3] 全日病ニュース・紙面PDF(2017年8月1日号)

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170801.pdf

    2017年8月1日 ... 部門や訪問看護ステーションがある病. 院は約 ... 理学療法士)、OT(作業療法士)、.
    ST(言語 ..... 診療報酬の簡素化やレセプトの見直しを段階的に実施. 厚労省・医療計画
    見直し検討会. 中医協・総会. 一般病床C3未満の取扱いに疑念残る.

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