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ホーム全日病ニュース(2019年)第945回/2019年8月1日号医師の時間外労働規制の医事法制での位置づけを検討...

医師の時間外労働規制の医事法制での位置づけを検討

医師の時間外労働規制の医事法制での位置づけを検討

【厚労省・医師の働き方改革推進検討会】来年の通常国会での法案提出目指す

 厚生労働省は7月5日、「医師の働き方改革の推進に関する検討会」(遠藤久夫座長)の初会合を開催した。2024年4月から医師の時間外労働の上限規制が適用されるため、具体的な規制内容について、「医師の働き方改革に関する検討会」が3月28日に報告書をまとめたが、詰めるべき事項は多く残る。今回、特に、医事法制で対応する措置を検討するため、同検討会を発足させた。年内に検討結果をまとめ、来年の通常国会での法案提出を目指す。
 冒頭、吉田学医政局長が挨拶し、「最速で来年の通常国会に法的措置の対応を法案で提出できるよう年内に一定の取りまとめをお願いしたい」と述べ、夏以降に集中的な議論を行い、法的措置に関し委員間で合意を得ることを求めた。また、医師の労働時間を短縮させる手段として最も期待されている医師から他業種へのタスク・シフティングの推進については、別の会議体を厚労省に立ち上げて、議論を進める方針を示した。
 座長に就任した国立社会保障・人口問題研究所所長の遠藤氏は「『神は細部に宿る』と言われており、報告書の大枠に沿って細部を詰めることは大変重要な課題と認識している」と述べた。
 医師に適用される時間外労働の上限規制については、労働基準法に基づく省令で罰則付きの上限時間が設定される。ただ、医師の労働時間短縮を目指した今回の枠組みでは、上限時間だけでなく、医療政策を含めた様々な措置が講じられるため、医事法制として位置づけることが必要とされた。
 今回、厚労省が示した論点では、「医事法制に基づく特定の効果は、当該法律の中で完結している必要があることに留意」としており、医師の働き方改革の対応が、医事法制の中で明確に位置づけられることになる。

B、C水準の詳細や新組織の設置
 検討事項は大きく3つある。◇地域医療確保暫定特例水準(B水準)と集中的技能向上水準(C水準)の対象医療機関を特定する枠組み◇追加的健康確保措置の義務化とその履行確保の枠組み◇医師労働時間短縮計画、評価機能の枠組み─である。
 医師への時間外労働の上限時間は年間で休日労働を含め、960時間となった。ただし、救急医療など地域医療に欠かせない医療を一定規模で行っている医療機関に適用される水準である地域医療確保暫定特例水準(B水準)と集中的技能向上水準(C水準)を別に設けて、上限は1,860時間とした。
 C水準は2つある。「C-1水準」は初期研修医と日本専門医機構の専門研修プログラムに参加する後期研修医を対象、「C-2水準」は先進的な手術方法など高度な技能を習得する医師を対象としている。
 B水準では、認められた医療機関に勤務するすべての医師が対象となるわけでなく、36協定締結時に医師を特定する必要がある。また、同日の会議でも、労働組合側の委員から、1,860時間があくまで上限であり、36協定で個別に上限時間を定める必要があることが強調された。
 B水準が適用される医療機関は、◇三次救急医療機関◇二次救急医療機関かつ「年間救急車受入台数1,000台以上または年間での夜間・休日・時間外入院件数500件以上」かつ「医療計画において5疾病5事業の確保のために必要な役割を担う医療機関」◇在宅医療において特に積極的な役割を担う医療機関④公共性と不確実性が強く働くものとして、都道府県知事が地域医療のために必要と認める医療機関◇高度ながん治療、移植医療等極めて高度な手術・病棟管理、児童精神科等の代替することが困難な医療機関─。これらを合わせて、約1,550施設とされた。
 また、B水準は2036年度までに解消すべき経過措置との位置づけである。そのため、対象医療機関は、医師労働時間短縮計画を立て、2024年度から着実に労働時間の短縮を図っていく必要がある。
 その際に、医療機関における医師の長時間労働の実態や労働時間短縮の取組状況を客観的に分析・評価し、医療機関などに結果を通知する組織として「評価機構」を設ける。「評価機構」は客観性を担保するため、都道府県とは独立した組織とする考えだ。
 C水準のうち「C -1水準」は、初期研修医と日本専門医機構の専門研修プログラムに参加する後期研修医が対象となる。「C-2水準」は、医籍登録後6年目以降の医師で、先進的な手術方法など高度な技能を習得する医師が対象となる。どちらも上限はB水準と同じ1,860時間。上限時間の短縮は目指すものの、B水準とは異なり経過措置との位置づけではない。
 「C -2水準」の適用に当たっては、高度な技能を備える医師を育成することが公益上必要な分野を、新たに設置する審査組織が指定する。「C-2水準」を希望する医師は自ら高度特定技能育成計画を作成し、医療機関の承認を得る必要があるが、審査組織の承認も得なければならない。
 これらの特例水準の要件については、下記の表で整理している。

健康確保措置の履行を確保
 一方、追加的健康確保措置については、B、C水準に義務化される連続勤務時間制限・勤務間インターバル・代償休息などの履行をどう確保するかが論点とされた。具体的には、①日常的な管理②定期的な確認③未実施時の是正④特例水準適用対象の特例との関係などの観点で、履行確保の枠組みを検討する必要があることが示された。
 これらの追加的健康確保措置は医療機関の管理者に義務づけられる。管理者は実施状況を記録し、保存する。確認は都道府県が行う。また、都道府県の医療勤務環境改善支援センターや評価機構が履行を確認する仕組みも検討される。医事法制に位置づけられると、医療法では、医療機関の管理者に課された義務が履行されない場合に罰則(勧告・公表、報告・検査、是正命令等)があり、追加的健康確保措置にも適用されると考えられる。
 これらの論点に対し委員からは、「地域医療構想、医師偏在対策も合わせた三位一体を都道府県を中心に進めるとしているが、十分な体制があるのか心配」、「大学病院が働き方改革への対応で大学が人員確保に頼れば、市中病院は厳しくなる」などの意見が出た。

働き方実態調査を実施
 また、医師の働き方実態調査を9月に実施する。前回調査の10万人を上回る14万人の医師を対象に調査票を配布。インターネットでの回答を可能にするなど回答率を向上させる対策をあわせて講じる。医師に対する労働時間の管理、時間外労働、宿日直・オンコールなどの実態を詳細に把握することを目指す。「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」や7月1日付けで発出された「医師等の宿日直許可基準」と「医師の研鑽」の通知も調査結果に影響を与えると考えられる。

 

全日病ニュース2019年8月1日号 HTML版

 

 

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    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190415/news02.html

    2019年4月15日 ... 厚生労働省の医師働き方改革に関する検討会(岩村正彦座長)は3月28日、2024年
    4月に適用される医師に対する時間外労働規制のあり方で報告書をまとめ ... また、
    その他の事項についても、医事法制を含め法改正が必要かを精査する。

  • [2] 28時間連続勤務制限、9時間インターバル|第932回/2019年1月1日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190101/news04.html

    2019年1月1日 ... 厚生労働省は12月17日の「医師働き方改革に関する検討会」(岩村正彦座長)に、
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