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ホーム全日病ニュース(2019年)第947回/2019年9月1日号AMATや一般病院の災害医療提供体制の役割を今後整理...

AMATや一般病院の災害医療提供体制の役割を今後整理

AMATや一般病院の災害医療提供体制の役割を今後整理

【厚労省・救急災害医療検討会】地域でのネットワーク構築を検討

 厚生労働省の「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」(遠藤久夫座長)は8月21日、大阪府北部地震、西日本を中心とした7月豪雨、北海道胆振東部地震など2018年に生じた一連の災害に対する医療体制をふり返り、今後の体制整備に向けた議論を行った。DMAT とAMAT など他の保健医療活動チームがどう連携するか、災害拠点病院と一般病院が災害時にネットワークをどう構築するか、が今後の課題として認識された。
 国は災害医療提供体制について、◇災害拠点病院の整備◇DMAT(災害時派遣医療チーム)の体制強化◇中長期的な医療提供体制の確保─を軸に対策を進めてきた。その中で、2018年の一連の災害では特に、「医療機関の災害に耐える能力」と「災害時の情報収集とその活用」に関する課題が顕在化している。
 同日の検討会では、今後の災害医療提供体制に向け、これらの3つの軸は変えず、顕在化した課題の解決を図るとともに、DMAT以外の保健医療活動チームや、災害拠点病院以外の医療機関の役割を整理していくとの問題意識を共有した。
 大規模災害時には、JMAT(日本医師会災害医療チーム)やAMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班)、DPAT(災害派遣精神医療チーム)など様々なチームが活動することになり、DMATとの役割分担や連携が重要になる。基本的には、都道府県の保健医療調整本部が統括し、調整を図る役割を担うが、災害医療コーディネーターの役割を含め、地域の実情を踏まえた対応が必要になる。
 全日病常任理事の猪口正孝委員は、「JMATは亜急性期が中心だが、AMATはDMATと同じく急性期にも動くし、亜急性期にも動く。複数のチームが同時に活動する状況になるので、それらすべてを包含した体制の計画づくりを事前に行わなければならない」と述べた。また、「様々なチームが同じ考えを持った研修を受けることも大切だ」と教育内容の共通化を求めた。
 災害時の医療体制については、災害拠点病院を中心とした体制を構築するとしつつも、それ以外の医療機関とのネットワークを構築し、体制整備を図る方向性が示された。災害拠点病院に必要とされる機能は地域によって異なるため、要件は「最大公約数的条件」とする考えで、指定要件を再検討する。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、「二次救急を支える民間病院は災害時でも救急患者を受け入れ、多くの患者を診療する。自家発電設備などで、災害拠点病院だけでなく、一般病院に対する財政的支援が必要だ」と述べた。他の委員からは、「一般病院への支援は大事だが、どのレベルまで支援するかの線引きが求められる」との指摘があった。また、BCP(業務継続計画)を策定し、災害時に一般病院が診療を継続できる体制を備えることの重要性を強調する意見が出た。
 中長期的な医療提供体制の確保については、◇コーディネート体制◇災害医療情報などが論点となった。
 特に、熊本地震で保健医療調整本部や二次医療圏単位での関係者のコーディネート体制に課題が生じ、一定の対応が行われたものの、大阪府北部地震では一部に混乱が生じた。このため、その後、災害医療コーディネート要領を作成した。今後は、実態把握を改めて行うとともに、災害医療コーディネーターの好事例の横展開や質の維持について、検討を進めるとした。
 災害医療情報では、EMIS(広域災害・救急医療情報システム)の機能改修を図る。7月豪雨では医療機関のEMISへの入力が少なく、情報収集の手段として不十分だった。給水や燃料の必要性に関する情報も集まらなかった。このため◇登録機関の網羅性◇入力率◇入力項目◇情報通信環境─について、EMISの改善を図っている。

医療計画の救急医療関連項目を追加
 第7次医療計画の中間見直しにおける救急医療の項目は、追加項目を明示した。プロセス指標として、「転院搬送の受入件数」、「転院搬送の実施件数」、「多職種連携会議の開催回数」などを設ける。「転院・退院調整をする者を常時配置している救命救急センターの数」は重点指標とする方向だ。
 第8次医療計画に向けては、「中核・高次の救急医療機関とその周辺の救急医療機関との間の病院間搬送」、「DNARやACP等を踏まえた救急医療」、「医師の労働状況、生産性の向上を目指した集約状況、タスクシフトによる救急医療に関わる医師の負担軽減」の状況把握を求める意見が出ており、今後の指標づくりの課題とする。

 

全日病ニュース2019年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] AMAT(全日本病院協会災害時医療支援活動班):病院運営支援事業 ...

    https://www.ajha.or.jp/hms/amat/

    ... 診療アウトカム評価事業; 救急災害医療(AMAT); 日帰り各人間ドック提供事業 ·
    病院機能評価支援相談事業 · 看護師特定行為 ... All Japan Hospital Medical
    Assistance Team の略称であり、「災害の(急性期~)亜急性期において、災害医療
    活動の研修を ... 届かなかったことから、民間病院の連携を強固にするべく、当協会では
    災害医療支援活動体制の見直しを図ってまいりました。 ... 多様な医療チーム等との
    連携を含めた災害医療活動の知識・技能を習熟したチームとして、DMATに準ずる医療
    チームの養成を ...

  • [2] 2011年6月1日号

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2011/110601.pdf

    2017年4月1日 ...医療提供体制の2次医療圏間の大き. な格差を考慮した ..... 議論に先立ち、事務局(
    厚労省医政局指導課)は、今後の災害医療体制をどう構築す. るかを集中的に ... ら
    急性期さらには慢性期医療への移行をどう円滑に進めるかという課題が生じている.
    という認識で、 ... 事実上、DMAT(厚生労働省の認めた. 専門的な訓練を ...

  • [3] 「病院の防災対策」:みんなの医療ガイド:お知らせ - 全日本病院協会

    https://www.ajha.or.jp/guide/15.html

    また、「トリアージ」という概念が浸透したこと、「日本DMAT」(災害派遣医療チーム)が
    生まれたのも、阪神・淡路大震災がきっかけです。 ... ただ、発災後間もなくの急性期の
    段階では、医療救護所に医療者が集まることも難しく、医療提供するのは難しいことが
    わかりました。 ... 発災直後(~6時間)」「超急性期(6時間~72時間)」「急性期(72時間
    ~1週間程度)」「亜急性期(1週間~1カ月程度)」「慢性期(1 ... 区市町村、二次保健
    医療圏、都全域と、それぞれの災害医療体制を整備し、それぞれに「災害対策本部」
    を設置。

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