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ホーム全日病ニュース(2019年)第947回/2019年9月1日号訪日外国人患者受入れの拠点的医療機関をリスト化...

訪日外国人患者受入れの拠点的医療機関をリスト化

訪日外国人患者受入れの拠点的医療機関をリスト化

【厚労省・訪日外国人医療提供検討会】救急入院対応で182、一般医療で536施設

 厚生労働省は8月19日の「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(遠藤弘良座長)に、外国人患者を受け入れる医療機関(2019年7月17日版)を公開したことを報告するとともに、現状の整備状況を説明した。外国人患者の救急入院に対応できる医療機関として182施設、診療所・歯科診療所を含む一般的な医療に対応する医療機関として536施設が都道府県別にリスト化された。9月末に2回目の受付けを締め切る。
 来年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、政府をあげて外国人観光客への対応を進めている。医療の対応では、外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関を整備し、周知することが課題だ。すべての都道府県で面的なネットワークの整備を達成することを目指している。
 具体的には、救急患者の入院を受け入れる医療機関は都道府県で1か所以上、一般的な医療に対応する医療機関は二次医療圏に1か所以上を整備する。基本的には、多言語での対応を求めることになる。
 外国人を受け入れる拠点的な医療機関は都道府県に登録され、都道府県はリスト化し周知する。ただ、どのように周知し、活用していくかは今後の課題となっている。リスト化された医療機関を知りたい人が一元的にアクセスできるよう、都道府県が電話対応などでワンストップサービスを提供することが検討されているが、都道府県からは対応困難事例の解決を求められることへの懸念もある。
 医療機関のリストは随時更新していく予定だ。厚労省は1年ごとに更新する見通しを示した。現在、リストは厚労省ホームページにおいてエクセル形式で公開されている。9月末の締め切り後に、特に申し出がなければ日本政府観光局(JNTO)でも公開するとしている。
 厚労省は、リスト化された医療機関の質を担保するとともに、外国人を受け入れる拠点的な医療機関になることに対して、医療機関がインセンティブを持てるよう支援する必要があるとの考えを示した。医療通訳の配置や配置が難しい場合の多言語対応の機器など政府の予算事業で支援策を継続・拡大する方向だ。
 日本医師会の松本吉郎委員は、現状で二次医療圏の整備状況に温度差があると指摘。理由として、「外国人患者が集中して負担が増えるなど、メリットよりもデメリットが大きいと感じる」と述べ、メリットが大きくなるような支援策を求めた。
 また、日本医療法人協会副会長の小森直之委員は、「リストをみると、多言語対応の時間や言語にばらつきがある。医療機関の中には、限られた時間でしか多言語に対応できず、手上げはやめておこうと判断した医療機関があるときく。輪番制を取るなど連携を図ることができれば、積極的になる医療機関が増えると思う」と述べた。

診療報酬通りに請求する病院が9割
 「医療機関における外国人患者の受入れに係る実態調査」(2019年8月更新版)の結果が示された。2018年10月1日~ 31日の間で、回答のあった4,395病院のうち、約半分で外国人患者の受入れがあった。受入れ実績のあった病院の外国人患者数は10人以下が1,170病院で多いものの、千人以上受け入れていた病院も7病院あった。
 ただ、外国人が在留外国人であるか、訪日外国人であるかの判断は病院に委ねられており、正確な把握ではないとの指摘も相次いだ。厚労省は、正確ではないが、全体的な動向を把握するための調査と説明している。
 多言語対応の整備状況を二次医療圏単位でみると、回答のあった5,694病院のうち、医療通訳者が配置された病院がある二次医療圏は126医療圏で38%だった。電話通訳が利用可能な病院がある二次医療圏は164医療圏で49%、タブレット端末・スマートフォン端末等が利用可能な病院がある二次医療圏は170医療圏で51%。これらのいずれかが利用可能な病院がある二次医療圏は236医療圏で70%となっている。回答率が68%であるため、実際の割合はこれより高い可能性がある。
 訪日外国人旅行者に対する自由診療での診療価格は、9割が診療報酬点数表を活用し、1点10円で計算していた。外国人患者受入れが多い185病院に限ると、28%の病院が1点20円で計算していた(有効回答4,971病院)。
 未収金の発生状況は2018年10月1日~ 31日の間に、受入れ実績のある2,174病院のうち、386病院(17.8%)が未収金を経験していた。未収金のあった病院の発生件数は平均6.7件、総額は平均43.3万円だが、100万円を超えるケースもあった。

病院の一般的なコスト増は2.29倍
 東京大学大学院医学系研究科の田倉智之教授が「訪日外国人の診療価格算定方法マニュアルの概要」を説明した。マニュアルの趣旨は、①対象は訪日外国人の自由診療②医療機関が個々に価格を検討③経営安定を目的とした算定法④計算方式は簡便な手法を採用─とした。どのように金額を設定するかは医療機関の自由であることを基本としつつ、コストが適切に反映される考え方を提示している。
 多部門から構成される病院の一般的な診療の場合で、訪日外国人は日本人の2.29倍のコストがかかることを例示した。通訳翻訳・患者紹介・特殊対応など時間・人数・単価の増加分を積み上げ、係数を用いる形としている。
 ただ、委員からは病院の規模や提供する医療など複数のモデルケースを示してほしいとの要望が相次いだ。

 

全日病ニュース2019年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190327_1.pdf

    2019年3月26日 ... 厚生労働省では「医療機関における外国人患者受入環境整備事業(平成25年(2013年
    )~)」等. において医療機関の受入 ... これまで、観光庁が、各都道府県に対して「訪日
    外国人旅行者受入れ医療機関」の選定を依頼. してきました。多くの ...

  • [2] 外国人患者を受け入れる医療機関を都道府県が選定|第930回/2018 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20181201/news07.html

    2018年12月1日 ... 厚生労働省の「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(遠藤弘良
    座長)は11月14日、都道府県が外国人患者を受け入れる医療機関を選定し、公表する
    仕組みを設けることで合意した。医療機関は「重症例を受入可能な ...

  • [3] 外国人受入れ医療機関の選出要件固める|第934回/2019年2月15日 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20190215/news10.html

    2019年2月15日 ... 【厚労省・訪日外国人医療提供検討会】選出されると多言語対応で補助. 厚生労働省は
    1月25日、「訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」(遠藤弘良座長
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