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ホーム全日病ニュース(2019年)第947回/2019年9月1日号医療機器業界から保険医療材料制度見直しでヒアリング...

医療機器業界から保険医療材料制度見直しでヒアリング

医療機器業界から保険医療材料制度見直しでヒアリング

【中医協・保険医療材料部会】医療機関への支援困難との指摘も

 中医協の保険医療材料専門部会は8月7日、2020年度の保険医療材料制度の見直しに向け、関係業界からヒアリングを行った。
 ヒアリング対象となったのは、◇日本医療機器産業連合会(JFMDA)◇日本医療機器テクノロジー協会(MTJAPAN)◇先進医療技術工業会(AdvaМ ed)◇米国医療機器・I ⅤD工業会(AMDD)◇欧州ビジネス協会(EBC)医療機器・IVD 委員会◇日本医療機器販売業協会(医器販協)◇日本臨床検査薬協会(JACRI)の7団体。
 JFMDAは、イノベーション評価について、2018年度に導入したチャレンジ申請の見直しを求めた。チャレンジ申請は医療機器が保険適用された後に、追加的なエビデンスを得られれば、その使用実績を踏まえ、再評価を受けられるもの。現行では、C1(新機能)、C 2(新機能・新技術)に適用されるが、B1(既存機能区分)、B2(既存機能区分・変更あり)の製品についても適用することを要望した。
 また、再評価を行うに当たり、患者への臨床的な効果に差がなくても、「検査、併用薬、入院期間の削減や医療従事者の負担軽減など」につながる場合の補正加算としての評価を求めた。事例として、カテーテル治療において、カテーテル挿入部位を確保するのに用いる橈骨動脈専用シースは一般的なシースと比べ、低侵襲で患者の回復が早く、入院期間も短縮されるが、現行では一般的なシースと同一の機能区分であると指摘した。
 要望に対し診療側の委員からは、「優れた改良に対しては何らかの評価が必要」との意見がある一方で、「C1、C2で導入したばかりで、拡大は時期尚早」(支払側)、「医療従事者の負担軽減を価格で評価するのは不適当」(診療側)など慎重な意見が出た。「小さな改良は医療現場で日々行われるものときく。すべて申請されれば、大量の申請になるのではないか」との質問に、業界側は「申請に手間がかかるので、それほど多くならない」と回答した。
 原価計算方式の医療機器に対しては、「製品総原価のうち、保険医療材料等専門組織での開示が可能な部分の割合(開示度)に応じて、加算率に差をつける」ことを提案した。しかし、支払側の委員からは「医薬品でそのような仕組みを導入したが、開示を促すようには機能していないことがわかった」と否定的な反応があった。
 また、製品総原価を示すに当たっての医薬品との違いを問われ、業界側は「医療機器はカメラやモーターなど他の企業が作った部品を組み合わせるものが多く、完成品を一つの企業だけで作ることのある医薬品とは異なる」と説明した。
 JFMDA、AMDD、医療機器・IVD委員会は、オンライン診療やICTを用いた情報共有・連携が進む中で、「サイバーセキュリティ管理」の重要性が増していると主張。「外部の情報通信機器が接続されるオンライン診療を安全に普及させるために、患者の要配慮個人情報の漏洩防止、医療機器や医療情報システム内の情報の保護など継続的に必要なサイバーセキュリティ管理を行うのに必要不可欠な専用スタッフや外部委託その他の費用を手当てするための診療報酬上の評価」を要望した。
 さらに、医療画像情報のクラウド化を促進するための診療報酬上の評価も求めた。
 要望に対し支払側の委員からは、「サイバーセキュリティ対策は企業努力で行うのが、他の業界では当たり前。診療報酬で上乗せするのは筋違い」との厳しい意見が出た。クラウド化についても、「初期費用はかかるかもしれないが、ランニングコストは下がる」と断じた。
 医器販協は、医療機器の流通経費について、医療機関での「保守・修理」、「立会い」、「預託在庫管理」など医療機器販売業者による「適正使用支援業務」が果たしている役割を強調。その上で、医療機関での「立会い」の業務負担など、医療機器メーカーとの役割分担を含め、「近年、様々な要因により、販売業者が行う適正使用支援業務が持続困難になってきている」と訴えた。
 支払側の委員がその理由を問うと、「日本の医療機関は欧米と比べ、症例数は少ないが様々な治療を行うため、医療機器の取扱いに販売業者が関わる程度が大きい」と説明。支払側の委員は「医療機器を効率的に使用するため、医療機関の集約が課題になる」と主張した。しかしこれに対しては、「流通経費を減らすために、医療機関へのアクセスに関わる提供体制を変えてほしいという主張をする気持ちは全くない」と明確に否定した。
 JACRI、AMDD、EBC は主に、対外診断用医薬品の医療上の有用性・革新性に対する評価を設けることを主張した。現行では、既存項目との測定原理の類似性から診療報酬項目の点数を準用するため、医療上の有用性・革新性が直接的には評価されていないとして、改善を求めた。
 そのほか、◇ 臨床現場即時検査(POCT検査)を現行の検査と異なる仕組みにして、質の高い在宅医療に貢献◇「感染防止対策加算1」の施設基準を変更して、薬剤耐性(AMR)対策を推進─を主張した。

 

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