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ホーム全日病ニュース(2019年)第947回/2019年9月1日号医薬品業界から薬価制度見直しでヒアリング...

医薬品業界から薬価制度見直しでヒアリング

医薬品業界から薬価制度見直しでヒアリング

【中医協・薬価専門部会】委員からは業界提案に厳しい意見

 中医協の薬価専門部会(中村洋部会長)は7月24日、2020年度の薬価制度改革に向け、業界ヒアリングを行った。2018年度に抜本改革が行われ、現在はその影響を把握している段階にある。医薬品業界は、社会保障給付費抑制のために薬価が狙い撃ちされているとの不満を表すとともに、抜本改革による新薬創出等加算の見直しの問題点などを指摘した。ただ、中医協委員からは医薬品業界の主張に対し、厳しい指摘が相次いだ。
 ヒアリング対象となったのは、◇日本製薬団体連合会(日薬連)◇米国研究製薬工業協会(PhRMA)◇欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)◇日本医薬品卸売業連合会(卸連)◇再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)◇日本バイオテク協議会─の6団体。
 日薬連はまず、最近の社会保障関係費の抑制が薬価改定に依存していることに不満を示した。政府の予算編成において、高齢化などを背景に社会保障関係費は毎年増加しており、社会保障給付費のシーリングが設定され、一定額を減らすことが求められてきた。その手段として、薬価改定に頼ってきた面がある。2016年度は1,749億円、2017年度は196億円、2018年度は1,766億円、2019年度は493億円を薬価改定で捻出した。4年累計で4,204億円、抑制額全体の75%を占める。
 日薬連の多田正世会長代理は、「一定の貢献はするべきと考えるが、限界がある」と訴えた。国内の医薬品市場はマイナス成長であり、各製薬企業が従業員を減らすなどして対応していることも強調した。その上で、「新薬」「長期収載品と後発品」「基礎的医薬品等」に分けて要望を行った。
 「新薬」については、新薬創出等加算を受けることのできる対象を決めるための「品目要件」の拡充や「企業指標」の廃止をPhRMA やEFPIA Japanが強く求めた。
 新薬創出等加算は薬価引下げを一定期間行わず、薬価を維持する加算だ。新薬創出等加算については、厚生労働省の医薬品開発要請に応じるとの企業要件を満たせば、事実上、すべての新薬が対象になるという問題があった。このため、抜本改革で、革新性の高い医薬品のイノベーションを評価する上で、メリハリをつけるため、加算対象品目を限定する「品目要件」や加算係数に差を設ける「企業指標」を新たに設けた。
 日薬連などは、「品目要件」に対して、医療上の必要性の高さや革新性・有用性の観点を評価すべきと主張した。具体的には、先駆け審査指定制度や条件付き早期承認制度などで優先的に審査された品目などを対象に加えるべきとした。「企業指標」に対しては、「企業規模の影響を強く受ける評価で公平性に欠ける」と主張。一定の基準を満たせば該当するのではなく、企業間の相対評価で加算率が決まるため、「医薬品開発を行う上で、予見性に乏しい」として、廃止すべきとした。
 しかし、これらの主張に診療側・支払側双方から厳しい意見が出た。
 診療側の委員は、「新薬創出等加算の要件はこれまで甘かったので見直した。企業指標が企業規模に応じたものになるのも自然だと思う。廃止を主張するのであれば、代替案を提示してほしい」と求めた。支払側の委員も「企業指標は撤廃すべきではない」と述べるとともに、「企業指標は製薬企業同士に競争させるために相対評価としている。また、依然として多くの新薬が該当するので、予見性が低いというのも納得できない」と述べた。

製品総原価の開示「限度ある」と主張
 原価計算方式については、抜本改革で、類似薬効比較方式と同様に、価格全体に補正加算をかける見直しを行うとともに、製品総原価の開示度に応じて加算率に差を設けることにした。しかし、過去最高薬価となったCAR-T細胞療法のキムリア(ノバルティスファーマ)の薬価算定においても、加算率の高い開示は行われず、「製薬企業側のインセンティブとして機能していない」との指摘が出ている。
 これに対して、日薬連などは、類似薬効比較方式で算定する品目を拡大し、原価計算方式で算定する品目を減らすことを提案した。具体的には、「臨床的位置づけ等の医療実態」を勘案すれば、類似薬の対象を拡大できると主張。開示には、企業秘密などの観点で「一定の限界がある」とした。しかし、支払側の委員は、製品総原価のブラックボックス状態が続くとして反対した。
 費用対効果評価の仕組みが本格的に導入され、最大で有用性加算部分の90%が引き下げられることに対して、日薬連などは、新たな「有用性系加算」を設けることを主張した。具体的には、「感染や過誤の防止など医療従事者の負担軽減・リスク低減を評価するキット加算」を有用性系加算に統合することなどを提案している。
 薬価収載後に効能追加などがあり、市販後のエビデンスなどで革新性・有用性が新たに認められた品目については、改定時に改めて評価することを要望。後発品については、初収載の薬価引下げに対し、後発品企業のコスト回収や安定供給を確保するため、「見直すべきではない」とした。
 長期収載品の薬価については、「長期収載品に依存しないビジネスモデルへの転換を進めるという点に異論はない」としつつ、2018年度の薬価制度抜本改革で新たに導入した段階的薬価引下げのルールによる「期間」の短縮は「拙速に行うべきではない」と訴えた。医薬品の安定供給の観点から、「引下げ率の下げ止めや影響の大きい企業への円滑実施措置を継続すべき」と主張した。現行で、下げ止めは改定前薬価の50%、円滑実施措置では激変緩和のための係数を設けている。
 また、基礎的医薬品については、医療上必要な医薬品を継続的に安定供給するため、「対象範囲のさらなる拡充や要件の見直しが必要」とした。不採算品目算定や最低薬価の充実も求めた。しかし、支払側の委員は、「単に長く使われているとか、不採算であるとの理由で対象にするべきではない」と釘をさした。
 そのほか、卸連は「未妥結減算制度や流通改善ガイドラインの趣旨の徹底」、FIRMは「再生医療等製品は別カテゴリーで、その革新性・画期性の価値を十分に反映し得る新たな価格算定方式の検討」を主張。日本バイオテク協議会は「ドラッグリポジショニングによる新薬の特例算定改定案」を示すとともに、ウルトラオーファン加算の新設などを求めた。

 

全日病ニュース2019年9月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 中医協・薬価部会> 関係業界から薬価制度抜本改革でヒアリング

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20170601/news04.html

    2017年6月1日 ... 中医協の薬価専門部会(中村洋部会長)は5月17日、薬価制度の抜本改革への意見を
    きくため、関係業界から ... 関係団体は日本製薬団体連合会(多田正世会長)、PhRMA
    ( パトリック・ジョンソン在日執行委員会委員長)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)(オーレ
    ・ムルスコウ・ベック会長)、日本 ... 薬価制度改革全体に対し、日薬連は「医療の質の
    向上に貢献する革新的な新薬の創出を薬価制度が後押し」することを ...

  • [2] 急性期指標の取扱いに慎重論相次ぐ

    https://www.ajha.or.jp/news/backnumber/pdf/2017/170601.pdf

    2017年6月24日 ... これに対し日本医師会の委員は、 .... 中医協・総会. 中医協総会(田辺国昭会長)は5月.
    17日、次期診療報酬改定に向けた入院. 医療の議論で、地域包括ケア .... 薬価制度
    改革全体に対し、日薬連は ... EFPIAは「薬剤費の効率化で生まれ.

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