全日病ニュース

厚労省と医療・介護団体が災害対策で意見交換

【被災者健康支援連絡協議会】「災害拠点病院だけでなく全病院に支援を」猪口常任理事

　被災者健康支援連絡協議会（代表＝横倉義武・日本医師会会長）は８月５日、約１年ぶりに会合を開いた。厚生労働省や各団体から災害対策の取組み状況を聞いて意見交換した。今後は定期的に開催し、情報交換することを確認した。
　同連絡協議会は、医療・介護関係の42団体で構成される。岡山・広島の豪雨災害に対応するために開いた昨年８月以来の会合には、15団体の代表と厚労省・環境省の担当者が出席した。
　厚労省は、「救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会」の議論を踏まえた災害拠点病院の指定要件の改正や、広域災害・救急医療情報システム（EMIS）の機能改修などの対応、病院の業務継続計画（BCP）策定状況調査の結果などを報告した。
　７月17日に発出した災害拠点病院の指定要件の改正通知では、電気の確保について３日間程度、自家発電機等により病院機能を維持できるよう燃料の備蓄要件を明示するとともに、水の確保では少なくとも３日分の病院機能を維持できる水を確保することが望ましい旨を示している。
　EMISの機能改修については、①入力項目（医療機関のライフラインの情報が不足）②入力率（医療機関のEMIS入力率が低い）③情報通信環境（停電時にEMISを利用できない）―を課題にあげた。
　その上で、入力項目については、電気・水道等に関する項目を追加するなどライフライン情報収集強化を図るとともに、入力率を高めるためにはユーザーインターフェースの改善やe-Learningの導入、通信環境の改善ではスマートフォンアプリの開発などの対応策をあげ、今年度中に機能拡充を行う方針を示した。
　また、厚労省が７月31日に公表した①病院の業務継続計画（BCP）策定状況②病院の非常用電源の確保及び点検状況③病院の耐震改修状況―の３つの調査結果を紹介した。
　BCPの策定状況では、災害拠点病院736のうち、735病院が策定しており、策定していない１病院は、今年度中に指定を返上する予定であることを示した。
　病院の非常用電源の点検状況調査では、法定点検未実施の病院があり、その理由として「患者の継続的な医療提供のため実施調整が困難」などをあげた。この結果を踏まえ、７月31日付で「非常用電源等の法定点検未実施の病院への適切な対応に係る周知について（依頼）」と題する通知を各都道府県に発出したことを説明した。
　耐震改修状況では、2018年の病院の耐震化率は74.5％（2017年調査は72.9％）、災害拠点病院等の耐震化率は90.7％（同89.4％）と耐震化が進んでいるものの、都道府県別でみるとばらつきがあることを指摘した。
　BCP未策定の災害拠点病院の指定返上について、全日病の猪口正孝常任理事は、「指定が先に行われ、後から要件が決まったため、返上する病院が出たのは残念だ。しばりがきつくなって脱落すると、『角を矯めて牛を殺す』になりかねないので、災害に関心を持ってその地域で拠点になろうとしている病院がついていけるような方策を考えてほしい」と要望した。
　また、災害拠点病院の３日分の水の確保の指定要件に関連して猪口常任理事は、「東日本大震災の経験では、生き残った民間病院に患者や住民がどんどん集まった。しかし、行政に食料が足りないとSOSを送っても計画外ということで、災害拠点病院以外には支援が来なかった。そのため、全日病はAMATという形で互助的に支援するシステムをつくっている。災害拠点病院だけでなく、全病院に対応する支援にしていただきたい」と発言した。