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ホーム全日病ニュース(2022年)第1010回/2022年6月1日号2022年度診療報酬改定は、どのような改定なのか?~入院医療を中心に~

2022年度診療報酬改定は、どのような改定なのか?~入院医療を中心に~

2022年度診療報酬改定は、どのような改定なのか?~入院医療を中心に~

診療報酬改定シリーズ●2022年度改定への対応① 全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会 委員長  津留英智

I.初めに
 新型コロナ禍で迎えた2022年度診療報酬改定は、大方の予想に反してきわめて厳しい改定となった。我々医療保険・診療報酬委員会では、その改定内容と、取り組むべき課題・対応について、本紙面を通じ《連載シリーズ》としてお伝えしていく。

II.2022年度診療報酬改定の基本方針
 2022年度改定の基本方針について、基本的視点と具体的方向性の(1)に「新型コロナ感染症への対応」が明記され、(2)には前回では(1)に記載されていた「医師の働き方改革」が記載されたが、その中に看護師処遇改善に係る内容が記載されたことは異例であった。また、「医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価」、「外来医療の機能分化等」が再掲されたことも、特徴としてあげられる。

III.2022年度診療報酬改定率
 今回改定率については、最終的には2021年12月22日の財務・厚労両大臣の折衝を経て診療報酬本体+0.43%と決定されたが、その過程においては、昨年秋の財政制度等審議会財政制度分科会資料において、『躊躇なくマイナス改定にすべき』、『なんちゃって急性期病床が増加した』、『薬価改定財源の診療報酬本体への振り替えなど、フィクションにフィクションを重ねたもの』等々の罵詈雑言が見られた。
 看護職員等処遇改善に+0.2%、不妊治療の保険適用に+0.2%、リフィル調剤に▲0.1%、小児感染症対策に係る加算措置の期限到来▲0.1%で実質診療報酬本体は+0.23%となり、これに薬価▲1.35%、材料価格▲0.02%を加えて、ネット▲0.94%となった。また両大臣からは意見として中医協に対し、『湿布薬処方の適正化』にまで細かく言及され、結果として湿布薬処方は月70枚が月63枚までと改められた。

IV.入院から在宅まで切れ目のない医療提供体制
 改定概要として厚労省より示されたポンチ絵(図1)では、2018年度改定で当時の迫井正深医療課長が示した「新たな入院医療の評価体系」が、2020年度改定で見直しされたものの、新型コロナ感染拡大により経過措置延長を繰り返し、実現できなかったが、今回更なる医療機能の分化と医療連携の強化が盛り込まれた。感染対策向上加算を含め、加算の拡大、充実、新設という言葉が見られる一方、地域包括ケア(以下、地ケア)病棟における、自院一般病棟からの転棟割合適正化に見られるような、適正化、実績評価、要件化、減算等の言葉も多く見られ、これらの内容を見てもおおよそ今回の改定財源をどこから抜いてどこに充てたのかが読み解ける。

V.入院医療に係る評価の見直し
 各入院基本料の見直し等については、《連載シリーズ》次号以降に詳説を委ねるが、急性期一般入院料について、「重症度、医療・看護必要度」による評価の見直しにより、「心電図モニターの管理」が削除されたことは、特に内科系救急を主体とする医療機関へのダメージが大きかった。
 また、地ケア病棟入院料の見直しにおいて、自院一般病床からの転棟割合を6割未満とし、それ以外にも減算項目を設け、満たせない場合にはその全てが掛け合わせと言う厳格化が断行された。自院のポストアキュートとして地ケア病棟を運用してきた病院には容赦ない裁きが下された形だ。ここに及んでの梯子外しは、今後の地域医療構想での協議にも少なからず影響が出そうだ。
 また、地ケアには、二次救急医療機関又は救急病院等を定める省令に基づく認定された救急病院であることが要件とされたが、2024年4月からの「医師の働き方改革」の影響で、既に一部の大学病院では、宿日直許可を取得できない医療機関には今後医師は派遣出来ない旨の通知を出す動きもあり、救急の要件化に対し、そもそも救急を担う医師が確保出来ないことが懸念される。

VI.まとめ(~ 2024年度ダブル改定にむけて~)
 紙面の都合で主に入院医療を中心に述べたが、新興感染症にも対応し、増え続ける高齢者医療費に直接的にメスを入れるべく、急性期一般入院料Ⅰを「重症度、医療・看護必要度」の見直しでハードルを上げ、急性期充実体制加算の新設によりスーパー救急化し、地ケア病棟入院料からは数多くの要件見直しの厳格化で財源を引き剥がすと言う、入院料として、もはやどこにも逃げ場のない改定とも言える。
 これが2024年度ダブル改定に向けた医療提供体制の新たな姿の提示であるとすれば、例えば地域で二次救急を支えているケアミックス型医療機関は大幅減収が避けられず、その存在意義を根底から否定することに繋がりかねない。地域で現実的に医療崩壊が発生しないのか、今後とも厚労省からの様々なデータも見ながら、次回改定に向けての中医協の動きに注視していきたい。

 

全日病ニュース2022年6月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第 4章

    薬価交渉に臨む会員病院に改めて提供. 全日病は「いわゆる未妥結減算について(注意. 喚起)」と題した西澤寬俊会長名の文書(7月29日. 付)を全会員に送付。

  • [2] 全日病ニュース 2017年2月1日号

    2017/02/01 ...が始まることになる。 埼玉県では今後急速に高齢者が増加. し、これに伴って医療需要も急増する。 入院患者は2013年から2025年にかけて.

  • [3] NEWS 8/1 - 全日本病院協会

    体化し、8月内に政省令を改正する。同時に、その内容を分かりやすく表現した ... 調整が、2025年に向けた分化・連携の ... た未妥結減算に留意しつつ、薬価交渉.

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