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ホーム全日病ニュース(2022年)第1010回/2022年6月1日号都道府県のガバナンス強化を含め地域医療構想を推進

都道府県のガバナンス強化を含め地域医療構想を推進


首相官邸ホームページから転載

都道府県のガバナンス強化を含め地域医療構想を推進

【全世代型社会保障構築会議】かかりつけ医機能が発揮される制度整備も求める

 政府の全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は5月17日、議論の中間整理をまとめた。都道府県のガバナンス強化を含めた地域医療構想の推進やかかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制改革を求めた。社会保障全体のDXを進めるため、データ活用の環境整備や個人・患者の視点に立ったデータ管理にも言及した。
 中間整理を受け、岸田文雄首相は、医療・介護・福祉サービスに関して、「地域完結型の医療・介護サービス提供体制の構築に向けて、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行い、機能分化と連携を重視した国民目線での医療介護提供体制改革を進める」と述べた。その上で、「政府として足元の課題からスピード感をもって取り組んでいくとともに、中長期的な課題についても具体的な改革事項を工程化する」との考えを示した。

地域医療構想をバージョンアップ
 医療・介護・福祉サービスに関して、高齢化の進展とサービス提供人材の不足などを踏まえ、地域医療構想の推進や地域医療連携推進法人の活用、地域包括ケアシステムの整備をあげ、「これまでの骨太の方針や改革工程表に沿って着実に進めていくべき」とした。その際に、都道府県のガバナンス強化など関連する医療保険制度などの改革と併せて進めるべきであるとした。
 コロナ禍については、「かかりつけ医機能などの地域医療の機能が十分作動せず総合病院に大きな負荷がかかるなどの課題に直面した」と指摘。「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を含め、機能分化と連携を一層重視した医療・介護提供体制等の国民目線での改革を進めるべきである」と明記した。
 地域医療構想は当面の目標が2025年となっている。これについて、2024度からの第8次医療計画の策定とあわせ、生産年齢人口の減少が加速していく2040年に向けたバージョンアップを行い、「病院のみならずかかりつけ医機能や在宅医療等を対象に取り込む」ことを求めた。
 医療・介護情報の活用では、「患者のカルテ等の電子化・共有と活用が重要」と明記した。「国・公的主体によって統一的に管理されるデータ(PHRなどマイナンバーカードで利用できる健康データ)、事業者等が管理する規格化されたデータ(電子カルテ情報と交換方式等の標準化など)の活用に向けて、オンライン資格確認等の環境整備を着実に進めるべき」との考えを示した。
 あわせて、「健康診断等で得られる個人の健康情報を、自分で管理・活用することができる将来像を見据え、個人・患者の視点に立ち、ブロックチェーン等の技術を活用したデータ管理の議論を進めるべき」とした。
 これらのことは、「医療や介護の効果的な機能分化と連携や重複検査・投薬の回避による患者等のメリットが大きいほか、医師等の従事者にとっても、業務の効率化による負担軽減が期待される」とした。さらに、「2次的な活用により、AI等の新しい医療技術の開発や革新的な新薬の創出にもつなげるべきである」とした。
 このほか、「サービスの質の向上」、「人材配置の効率化」、「働き方改革」の観点から、以下を指摘した。〇医療・介護・福祉サービス(障害、児童福祉など)におけるICTの活用や資格の養成課程の見直しなど〇看護、介護、保育などの現場で働く人の処遇改善を進めるに際して事業報告書等を活用した費用の見える化などの促進策のパッケージ〇処遇改善も勘案したタスクシェア・タスクシフティングや経営の大規模化・協働化

世代間対立に陥らない議論を
 医療・介護・福祉サービス以外では、勤労者皆保険の実現・女性就労の制約となっている制度の見直しとして、働き方に対して「中立」な社会保障制度の構築を進めることが必要とし、勤労者皆保険の実現に向け取り組む方針を示した。具体的には、被用者保険の適用拡大を着実に実施し、企業規模要件の撤廃も含めた見直しや非適用業種の見直しなどを検討するとした。フリーランスの「被用者性」をどう捉えるかも検討課題とする。
 家庭における介護の負担軽減では、圏域ごとの介護ニーズを踏まえたサービスの基盤整備を目指す。認知症に関する総合的な施策をさらに推進するとともに、要介護者や家族介護者などへの伴走型支援などの議論を行う。ヤングケアラーの実態を把握し、効果的な支援策を講じることも盛り込んだ。
 全世代型社会保障の構築に向けた全体の考え方としては、短期的・中長期的な課題の「時間軸」を持ち、計画的に取り組むとともに、「地域軸」も意識することを強調した。
 また「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し、能力に応じて皆が支え合い、人生のステージに応じて必要な保障を確保することが基本」であると明記した。「世代間対立に陥ることなく、国民的な議論を進めながら対策を進めていくことが重要である」と指摘した。

 

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