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ホーム全日病ニュース(2022年)第1010回/2022年6月1日号看護の処遇改善の制度設計めぐり様々な問題指摘される

看護の処遇改善の制度設計めぐり様々な問題指摘される

看護の処遇改善の制度設計めぐり様々な問題指摘される

【日病協・代表者会議】病院ごとに係数を設定する案も

 日本病院団体協議会は5月20日に代表者会議を開いた。10月から実施する看護の処遇改善について、前回に引続き、診療報酬により制度を設計することをめぐり、様々な問題が指摘された。処遇改善の対象となる看護職員が勤務する病院に対して、看護職員1人当たり月額1万2,000円相当を確実に手渡すという制度設計の技術的な難しさとともに、対象病院や対象者が限定されることへの不公平を指摘する意見があがった。
 現在、診療報酬による制度設計を中医協総会と入院・外来等の調査・評価分科会で議論している。5月19日の入院・外来等の調査・評価分科会では、対象となる「救急医療管理加算を算定する救急搬送件数が年200台以上の病院または三次救急を担う病院」の入院料・初再診料の算定回数と看護職員の配置状況のデータが示され、両者とも病院ごとにかなりばらつきが大きいことが示された(1面記事参照)。
 今後、厚生労働省がデータをもとにシミュレーションを実施し、特定の診療報酬の算定回数(患者数)と看護職員の配置状況の相関関係などを分析することで、診療報酬による上乗せ分と必要額との過不足が許容できる範囲に収まる方法を検討することになっている。しかし、そのような方法では限界があるため、同分科会では、DPC 制度の機能評価係数Ⅱのように、病院ごとに係数を設ける案が、全日病会長の猪口雄二委員から提案された。日病協では、その意見に賛同する意見が出た。
 また、診療報酬が「診療サービスに対する対価」であるのにもかかわらず、診療サービスそのものとは直接的な関係がない看護職員の賃金水準と職員数に対応させることが、診療報酬を形骸化させるといった意見が出た。
 過不足が許容できる範囲に収まる概ね妥当な制度設計が行われたとしても、対象病院や対象者が限定されることの不公平は解決しない問題を指摘する意見も相次いだ。
 対象者については、医療従事者間の不公平感をもたらしかねない上に、同一法人内で、共通の賃金を設定している場合、対象外の看護職員に対しても病院の持ち出しで処遇改善を実施せざるを得ないとの指摘があった。
 日病協議長の小山信彌・日本私立医科大学協会参与は、「本来は、補助金で対応すべきもので、診療報酬で制度設計することの問題は大きい。それでも診療報酬で制度設計するのであれば、看護職員全員を対象にすべきだ」と述べた。
 また、最近の物価高の影響を懸念する意見も出た。給食費を含め光熱費など費用が上昇している中で、病院収入は診療報酬が中心で価格転嫁ができない。現在進行形で物価高が続いていることから、事態の推移を見極めた上で、病院団体として調査を実施し、対応を検討するとの考えが示された。

 

全日病ニュース2022年6月1日号 HTML版

 

 

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