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ホーム全日病ニュース(2022年)第1010回/2022年6月1日号病院の入院料算定回数や看護職員数のばらつきは大きい

病院の入院料算定回数や看護職員数のばらつきは大きい

病院の入院料算定回数や看護職員数のばらつきは大きい

【入院・外来医療等の調査・評価分科会】次回、相関関係みるためシミュレーションを実施

 厚生労働省は5月19日の中医協の入院・外来医療等の調査・評価分科会(尾形裕也分科会長)に、10月から診療報酬により実施する看護の処遇改善の制度設計に向け、入院料や初再診料の算定回数や看護職員の分布などのデータを示した。いずれのデータでも、算定回数や看護職員数は病院によりばらつきが大きいことが明らかとなった。厚労省には、診療報酬の算定回数(患者数)と看護職員数の相関をみるためのシミュレーションの実施が求められた。
 これまでの中医協総会や分科会の議論で、制度設計の難しさを指摘する様々な指摘が出た。厚労省は今回、処遇改善の対象となる看護職員に対し、確実に処遇改善を行うという観点から、「救急車の年間受入件数200件以上の施設または三次救急医療施設」(2,785施設)を対象に、2020年10月~ 2021年9月のNDBやDPCデータ、病床機能報告を用いて、分析を行った。
 対象病院の各入院料の届出状況をみると、全体の1万8,318件のうち、急性期一般入院料1が最も多く7,298件(39.8%)、次いで特定機能病院一般病棟7対1入院基本料の1,321件(7.2%)、急性期一般入院料4の1,154件(6.3%)、ハイケアユニット入院医療管理料1の657件(3.6%)、地域包括ケア病棟入院料2の666件(3.6%)。特定入院料を含め幅広く分布している。
 急性期一般入院料1を算定する対象病院(1,365施設)の入院料算定回数は、最小値が2,702回、第1四分位数(25%)が5万2,259回、中央値が8万1,814回、第3 四分位数(75%)が11万6,336回、最大値が21万470回で、大きくばらついていた。地域包括ケア病棟入院料1~4を算定する対象病院(1,006施設)の入院料算定回数は、最小値が5,277回、第1四分位数(25%)が4万2,500回、中央値が5万9,299回、第3四分位数(75%)が8万3,424回、最大値が14万4,194回で、大きくばらついていた。
 対象病院の初再診料の算定回数においても、大きなばらつきがあった。
 対象病院の病棟別の病床稼働率は右上図の通り。最小値が34.2%、第1四分位数(25%)が67.1%、中央値が79.9%、第3四分位数(75%)が89.0%、最大値が121.8%で、特に、病床稼働率が低い対象病院でばらつきのすそ野が広くなっている。入院料の算定回数の違いは、施設の規模によるところが大きいが、病床稼働率による影響も大きい。
 次に、看護職員の状況をみていく。対象病院全体の部門別の看護職員の所属場所は、病棟が70.3%、手術室が5.7%、外来が12.0%、その他が11.9%となっている。
 急性期一般入院料1を算定する対象病院(7,298病棟)の看護職員配置数は、最小値が15.7人、第1四分位数(25%)が26.0人、中央値が29.3人、第3四分位数(75%)が33.0人、最大値が43.5人で、大きくばらついている。地域包括ケア病棟入院料1~4を算定する対象病院(1,047施設)の看護職員数は、最小値が9人、第1四分位数(25%)が18.0人、中央値が21人、第3四分位数(75%)が24.1人、最大値が33人で、大きくばらついている。
 これらのデータを踏まえ、各病棟に配置されている看護職員数は、各入院料の配置基準に対応して、それぞれ異なるが、同じ入院料を算定している病棟当たりでも、1床当たりでも、分散の度合いが大きいことがわかった。

病院ごとの係数設定を提案
 全日病会長の猪口雄二委員は、「どの集計をみても、ばらつきが大きい。ばらつきの背景には、病院の特性があり、グループ化して突合しても、近似値にはならない。精緻化は困難で、むしろ、DPC制度の機能評価係数Ⅱのように個別病院ごとに係数を設定すればよいのではないか」と提案した。
 全日病常任理事の津留英智委員は、「対象病院の中で、DPC対象病院はどの程度あるのか」と質問。厚労省は、「2022年4月1日時点で、DPC対象病院は1,764病院。看護の処遇改善の対象となる病院に、DPC対象病院以外の病院が相当数含まれる」と回答。係数を設定する場合、出来高病院には新たに設ける必要があることを示した。
 また、津留委員は、「今回の処遇改善が『地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員』が対象となっていることを踏まえると、コロナが収束すればなくなることも想定する必要があるのか」と質問。後から、処遇改善分を診療報酬から引きはがすことも踏まえ係数を設定することが簡便であるとの見解を示した。
 係数の設定には、複数の委員から賛意を示す意見が出た。
 そのほかの委員からは、対象病院の中で一定のグループ化を行い、特定の入院料に加算することで、診療報酬の上乗せ分と必要額の過不足を小さくする対応が可能であるかをみるため、入院料の算定回数(患者数)と看護職員数の相関をシミュレーションすることを厚労省に求める意見が相次いだ。

 

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