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ホーム全日病ニュース(2022年)第1018回/2022年10月1日号流行初期医療確保措置の費用負担などを議論

流行初期医療確保措置の費用負担などを議論

流行初期医療確保措置の費用負担などを議論

【社保審・医療保険部会】保険者が負担しても保険料の上昇にはならない

 社会保障審議会医療保険部会(菊池馨実部会長)は9月8日、政府が2日に決定した「次の感染症危機に備えるための対応の具体策」に基づく感染症法改正の内容の報告を受けた。厚生労働省は、流行初期医療確保措置の費用を保険者が負担しても、保険料の上昇にはつながらないとの見解を示した。
 次の感染症危機に備え、政府はあらかじめ医療機関と協定を締結し、感染症流行初期の医療を確保する方針。協定を締結した医療機関に対しては、感染症初期でも感染症流行前と同じ収入を確保できるように「流行初期医療確保措置」を新たに講ずる。
 措置は、感染症に対する診療報酬の特例措置や補助金が充実するまでの一時的な支援との位置づけ。協定を結んだ医療機関が感染症医療を行った月の診療報酬収入が、感染症流行前の同月の診療報酬収入を下回った場合に、その差額を措置により支払う。
 措置に関する費用は、公費と保険者で負担割合が1対1となるよう折半する。各保険者の負担は、対象医療機関に対する直近の診療報酬支払実績に応じて按分することが示された。保険者からの拠出金については、前期高齢者財政調整・後期高齢者支援金といった保険者間の財政調整を実施する。
 感染症の初期にこのような措置で医療機関の収入を確保した後、感染症対応が進み、診療報酬の上乗せや補助金が設けられたあとには、措置を終了する。補助金が設けられ、診療報酬の収入と補助金を合わせた額が前年度の診療報酬収入を上回る場合には、その差額について精算を行い、措置の費用負担を行った保険者等に返還する。
 前回の医療保険部会では、保険者が措置の費用負担を行うことに反対意見が相次いでいたが、2日の議論でも慎重意見が多数出された。措置期間を短期間にとどめるべきとの意見に対し、厚労省は、「たとえば最初の3か月といった短期間を基本とし、必要に応じて延長や前倒しして終了することを検討したい」と返答した。
 日本商工会議所の藤井隆太委員は、措置の費用を保険者が負担することによる保険料負担への影響を質問した。厚労省は、「措置は、協定を結んだ医療機関を対象に、流行前の診療報酬収入を下回った分を補償するもの。感染症発生前の医療費をベースに保険料が設定されていることから、保険料全体が増加するとは考えにくい」と答えた。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「新型コロナの流行が始まった頃は、医療機関に個人用防護具(PPE)もなく、検査もできず、一方で、通常医療の患者も来ないという状況が続いた。2カ月前の診療報酬は入ってくるが、その後の見通しが持てなかった」と述べ、「流行初期医療確保措置」の必要性に言及した。一方で、「どのような感染症が来るかはわからない。感染症によっては、さらに柔軟な対応が必要になる」と指摘した。

 

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