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ホーム全日病ニュース(2022年)第1018回/2022年10月1日号流通・薬価制度の改善に向けた議論に着手

流通・薬価制度の改善に向けた議論に着手

流通・薬価制度の改善に向けた議論に着手

【厚労省・医薬品有識者検討会】座長に遠藤久夫・学習院大教授

 厚生労働省の「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」は8月31日、初会合を開いた。流通や薬価制度の問題点と改善策を検討し、今年度末にとりまとめを行う予定。座長には遠藤久夫・学習院大学教授が就任した。
 有識者検討会は、「革新的な医薬品や医療ニーズの高い医薬品の日本への早期上市」や、「医薬品の安定供給」といった観点から、流通と薬価制度を議論する。まず現行制度の問題点を整理して中間まとめを行い、それらに対する改善策を年度末にまとめる見通し。
 冒頭にあいさつした伊佐進一副大臣は「薬価と流通には危機感を抱いている」と述べ、「日本の市場の魅力をもう一度取り戻すことが、国民に質の高い薬を届けることにつながる。大所高所の視点で議論してほしい」と要請した。
 流通を議論する場としては「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」、薬価制度を議論する場としては「中医協」がある。
 元中医協会長の遠藤座長は、「既存の会議体では事務局から示されるアジェンダに対応するのに精一杯で、制度全体の見直しを議論する機会はあまりない」と指摘。「当検討会は既存の会議体より自由で多面的、包括的な視点での議論が求められている」と述べ、検討会設置の意義を強調した。
 同検討会は、大学教授など8名の有識者で構成。初会合では、座長を含む8名全員が自らの問題意識を述べた。
 次回は製薬業界からヒアリングを行う予定。委員からは、流通や薬価制度に関する提言を行ってきたシンクタンクの議論も参照すべきとの提案がなされている。
 遠藤座長は、検討会の議論がめざすのは「世界のイノベーティブな医薬品を日本においてできるだけ上市してもらうという、いわゆるドラッグラグ解消という話」なのか、それとも「日本の製薬メーカーの今後の国際競争力を増強すること」なのかを明確にするべきとの考えを示した。
 前者については、過去の薬価制度改定の流れを振り返り、2010年以降、新薬創出・適応外薬等解消加算を導入するなど、大きな制度改正が立て続けに行われてきたことにより市場の不確実性が増し、企業にとって日本の医薬品市場は予見可能性が低くなっていることの問題を指摘した。
 後者については、「現状、外資企業のほうがイノベーションを評価する加算の影響を受けている。この薬価制度のもとで、日本企業の開発力強化を図ることは難しいのではないか」と述べた。日本の製薬企業を育成し、開発力強化を進めようとするのなら、「ベンチャーの育成や産学共同、税制など、薬価とは別の施策で対応すべきではないか」と主張した。
 同検討会は9月22日、検討事項に「産業構造の検証」を追加し、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」と名称を変えて再スタート。委員4名が加わった。

 

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