全日病ニュース

全日病ニュース

ホーム全日病ニュース(2022年)第1018回/2022年10月1日号かかりつけ医の具体的な機能や定義を論点に議論

かかりつけ医の具体的な機能や定義を論点に議論

かかりつけ医の具体的な機能や定義を論点に議論

【厚労省・第8次医療計画検討会】かかりつけ医個人の機能と地域で担う機能は区別すべき

 厚生労働省の第8次医療計画検討会(遠藤久夫座長)は9月9日、かかりつけ医機能をめぐり議論を行った。厚労省が、「具体的なかかりつけ医機能」、「かかりつけ医機能の意義と定義」、「かかりつけ医機能を発揮させるための制度整備」を論点として示し、各委員による幅広い観点でのフリーディスカッションにより、議論を深めた。
 かかりつけ医機能については、新経済・財政再生計画の改革工程表2021で、かかりつけ医機能の明確化とそれが有効に発揮される具体的方策を2022~2023年度に検討を進め、結論を得ることになっている。ただ、骨太方針2022に「かかりつけ医機能が発揮される制度整備を行う」ことが明記されたことから、関係者の注目を集めている。
 結論の期限が2023年度であるとはいえ、来年度までに一定の考え方がまとまっていないと、第8次医療計画には反映できない。また、2024年度診療報酬改定や医療費適正化計画、介護保険事業支援計画、健康増進計画にも関わるため、検討の加速化を求める意見が出た。
 厚労省は同日、「受診の場面からみた、保健医療のニーズ」のイメージを示し、かかりつけ医機能として担われることが想定される具体的内容を示した(右図を参照)。「発症前」、「発症・急性期」、「回復期」、「慢性期」、「急変時・看取り」の各ステージに応じて、7つに分類した。具体的には、「予防」、「初診」、「逆紹介」、「継続診療」、「高齢者医療」、「地域との関わり」、「共通するもの」が示されている。
 全日病会長(日本医師会副会長)の猪口雄二委員は、「かかりつけ医個人が担う機能と、地域や医療機関の連携により担う機能を区別したほうがよい」と指摘。「例えば、予防に関するものや継続診療の提供は、かかりつけ医個人が担う機能だが、在宅患者の急変時対応や看取りなど、高齢者医療に特有の24時間365日対応する必要がある医療は、地域や医療機関の連携により担う機能と考えるべきだ」と主張した。
 また、現状の都道府県の医療機能情報提供制度における「かかりつけ医機能」(8項目)が住民・患者にあまり知られておらず、項目を改善した上で、住民・患者に積極的に周知すべきとの意見が複数の委員から出たことに関連しても発言した。
 猪口委員は、「『地域の医療機関等との連携』や『在宅医療支援、介護等との連携』など4項目は、報告する内容を充実させたほうがよい。しかし、それ以外の4項目はすべて診療報酬の項目であり、今回のかかりつけ医機能の議論の結果により変わり得る項目であるため、ここでその是非を議論するのは難しく、位置づけが異なる」と指摘した。
 診療報酬の項目としては、「地域包括診療加算」、「地域包括診療料」、「小児かかりつけ診療料」、「機能強化加算」がある。これらの報告について、報告されている医療機関数と、その診療報酬を届け出ている医療機関数が異なるとの問題も指摘されていた。
 一方、健康保険組合連合会専務理事の河本滋史委員は、「かかりつけ医機能を明確化し、それを担っていることを行政に届け出ることにした上で、住民・患者に見える化することが求められる。健保組合もそれをサポートすることができ、そのためには、被保険者がどの医療機関のかかりつけ医を受診しているのかを確認することも必要になってくる」と述べた。

全日病総合医研修などを活用
 かかりつけ医の定義については、日医・四病院団体協議会が2013年8月8日に発表した提言が知られている。「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」であることを基本に、具体的な機能を列挙している。
 全日病副会長の織田正道委員は、「基本的には、これを骨格に、かかりつけ医個人の機能と、地域や医療機関の連携により担う機能を区別した上で、デジタル技術の活用や地域包括ケアシステムなど最近の重要な視点を加えれば、かなり網羅されたものになると思う」と述べ、かかりつけ医の定義とした。
 また、政府の「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議報告」(2022年6月15日)が、「かかりつけの医療機関が組織的に関わる仕組み」がないために、地域の医療機関が果たすべき役割を果たさず、「要請」に基づく対応をせざるを得なかったと記述していることに対し、違和感を表明した。
 具体的には、「この報告書が前提としているのは、新型コロナの第1波から第3波にかけてで、まだ新型コロナの性格も不明で、PPE が不足し、検査も満足に受けられなかった時期だ。それがオミクロン株になって、今は中小病院を含め地域の医療機関が積極的に対応している。もっと新しい知見に基づいた議論も行ってほしい」と求めた。
 その上で、有事と平時の関係について、「平時から医療機関連携ができている地域は、有事になっても連携がうまくいく傾向がある」と指摘。「平時を基本とし、その上で有事の役割分担を明確化することが大切である」と述べた。
 かかりつけ医機能の明確化が求められることの背景として、増加する高齢者医療と在宅医療に対応する医師が不足しているという問題がある。
 織田委員は、「複数疾患を抱える高齢者に対応するため、総合的な診療能力を持つ医師が求められるが、日本専門医機構の総合診療専門医の育成を待っている時間はない。日医のかかりつけ医機能研修制度や総合医育成プログラムを修了した医師の積極的な活用が解決策の一つになる」と主張した。
 日本医療法人協会会長の加納繁照委員は、「紹介受診重点外来を担う病院は200床以上で、200床未満の地域密着型の中小病院は、かかりつけ医機能と入院機能を担うことになる。そこへの評価をしっかりと考えてほしい」と強調した。

 

全日病ニュース2022年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
本コンテンツに関連するキーワードはこちら。
以下のキーワードをクリックすることで、全日病サイト内から関連する記事を検索することができます。