全日病ニュース

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外来医療の強化、機能分化について

外来医療の強化、機能分化について

【診療報酬改定シリーズ●2022年度改定への対応⑤】
全日本病院協会 医療保険・診療報酬委員会委員(社会医療法人名古屋記念財団) 太田圭洋

【1. 紹介受診重点医療機関入院診療加算】
 2022年度の診療報酬改定では、医療機関の機能分化を進める観点から検討されてきた紹介受診重点医療機関の制度化に伴い新たな点数(紹介受診重点医療機関入院診療加算)が新設された。紹介受診重点医療機関において入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され、入院医療の質が向上することを踏まえ、新たな評価が行われたものである。
 紹介受診重点医療機関とは、医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う医療機関とされ、医療資源を重点的に活用する外来(医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来、高額等の医療機器・設備を必要とする外来、特定の領域に特化した機能を有する外来)として設定された初診、再診の割合が一定基準以上の医療機関が、地域で同役割を基幹的に担う意向がある場合に、紹介率・逆紹介率なども参考に地域医療構想調整会議で協議され2022年度末から指定されていくことになる。
 医療資源を重点的に活用する外来を、各医療機関がどれくらい行っているかは各医療機関から提出されているレセプトデータから計算されることとなる。しかし重点医療機関になるかどうかは、あくまでも各医療機関の意向が前提であり、基準を満たす場合でも医療機関が手上げしない場合には、紹介受診重点医療機関になることを強制されるものではない。
 今回設定された紹介受診重点医療機関入院診療加算800点は、地域医療支援病院が入院初日に1,000点の加算であることから、医療機関にとってかなり魅力的な点数に設定されたということができる。しかし紹介受診重点医療機関になった場合には、特定機能病院、地域医療支援病院と同様に紹介状なしで受診した患者から定額負担を徴収する義務が発生する。2022年10月から定額負担の額は初診で5,000円以上、再診で2,500円以上であったものが、初診で7,000円以上、再診で3,000円以上に引き上げられることとなった。また初診料から200点、再診料から50点が保険給付範囲から控除される制度も始まる。そのためかなりの高次機能の病院以外では、基準を満たしたとしても、紹介受診重点医療機関になるための手上げを行う病院は少ないのではないかと予想されている。
 ちなみに、今回の医療資源を重点的に活用する外来の計算において、高額等の医療機器・設備を必要とする外来として、外来化学療法や放射線治療を行う外来などと同様に、「Dコード、E コード、J コードのうち地域包括診療料で包括範囲外とされているものを算定している外来」も計算されることになっており、J038人工腎臓を請求している外来も含まれることになっている。私の運営する144床の病院は、外来患者に占める透析患者の割合が高く、現在決められている計算方法では、紹介受診重点医療機関の基準を満たす可能性が高いと考えている。そのため本制度が始まった場合に手上げをすべきか否か検討した。しかし今回設定された紹介受診重点医療機関入院診療加算800点は、200床以上の病院に限定されてしまった。そのため、たとえ紹介受診重点医療機関として調整会議で認められたとしても診療報酬上のメリットを享受できないため手上げは行わない予定である。

【2. 電子的保健医療情報活用加算から医療情報・システム基盤整備体制充実加算へ】
 2022年度改定で新設された電子的保健医療情報活用加算は、わずか半年間で廃止となり、10月から医療情報・システム基盤整備体制充実加算に衣替えすることとなった。
 電子的保健医療情報活用加算はオンライン資格確認システムを通じて患者の薬剤情報または特定健診情報等を取得し、当該情報を活用して診療等を実施することに係る評価として初診時に7点、再診時に4点として新設された本改定における医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応の目玉の点数であった。
 しかし、マイナンバーカードを持参した患者が、持参しない患者より自己負担が増えることがマスコミで報道され批判されたことにより、期中に新たに厚生労働大臣から中医協に諮問が行われ中医協で議論された結果、同加算は廃止され、新たに医療情報・システム基盤整備体制充実加算が新設されることとなった。
 今回の加算は、施設基準を満たす医療機関で初診を行った場合に4点、オンライン資格各確認等により情報を取得等した場合に2点とされ、マイナンバーカードを持参し利用した患者の自己負担が減る制度となった。
 また今回の変更に際して、2023年度より保険医療機関には医療DXの基盤となるオンライン資格確認等システムの導入が原則義務化され療養担当規則の改正も行われた。一部の現在、紙レセプトでの請求が認められている一部の医療機関を除き、すべての保険医療機関は2023年4月までに同システムを整備する必要がある。
 今回の期中の異例の改定は、中医協の外部が診療報酬改定に大きな影響を及ぼした事例の一つとなった。近年、個別の診療報酬項目に関して中医協以外の関係者がさまざま関与する例が増加しつつあり、一部では中医協の形骸化との指摘も出されている。今後、今回のような対応が安易に行われないよう我々も注視していく必要があろう。

 

全日病ニュース2022年10月1日号 HTML版

 

 

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