全日病ニュース

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厚労省 新型法人は医療法人。社員に法人を想定、新たな概念の医療法人を想定か?

厚労省 新型法人は医療法人。社員に法人を想定、新たな概念の医療法人を想定か?

【医療法人の事業展開等に関する検討会】
新型法人の参加法人経営への関与、病院直営、株式会社への出資等に慎重論が多数

10月10日の「医療法人の事業展開等に関する検討会」に、事務局(厚労省医政局医療経営支援課)は、「新型法人」の一歩踏み込んだイメージと論点(別掲)を提示し、議論の深化を図った(10月15日号既報)。

 前回(9月10日)の検討会で「非営利ホールディングカンパニー型法人」を「新型法人」と仮称することで一致したが、事務局はこの日、「地域連携型医療法人」と仮称することを提案。「新型法人」を医療法人の1類型に位置づける考えを明らかにした。
 ただし、社会医療法人のように医療法を改正して新たに位置づけるか否かについては「まだ決めかねている」と答えた。
 医療法人運営管理指導要綱や各都道府県の設立認可基準の上で医療法人の社員は自然人にかぎるとされている。
 医療法人や社会福祉法人を傘下法人に想定する新型法人の法人格を「地域連携型医療法人」とした事務局は、自然人規制を撤廃するのか、あるいは、現行医療法人制度とは異なる、まったく新たな概念の医療法人を想定しているのかについて説明を惜しんだ。
 論点で「2以上の事業地域で病院等を開設している法人」も「対象を当該地域の病院に限って」参加を認めるとの考えが示され、「自治体病院等も同様の取り扱いとする」ことが提起された。
 「自治体病院には法人格がないが」という疑問に、事務局は、「例えば国立病院機構や日赤等が法人として参加した場合に、傘下の当該地域の病院のみが新型法人の傘下に入り、全国組織との間に(事業方針等の)調整機能を設けるという考え方だ。自治体病院も同様の考え方で参加できるのではないか」と説明した。
 これは、全国組織の法人が新型法人の参加法人になるが、具体的には指定された当該地域の病院が参加法人の権利・義務等を執務するという考え方になる。
 この論でいくと、地方自治体は地方自治法で地方公共団体という法人格が認められているので、県立病院の場合は県が、市立病院の場合は市が参加法人となって、当該地域の病院が実際上の権利・義務等を執務することが考えられる。
 論点には、こうした問題以外にも、「新型法人による参加法人経営方針への強い関与」「新型法人の病院等経営」あるいは「株式会社への出資」などの提起がなされたが、全国組織の参加を含め、新型法人が組織するグループの効率的経営を可能とする考え方に対して、構成員は総じて慎重な反応を示した。
 この日の検討会には、「附属病院を別法人化し、同病院を中核として近隣病院を包含したメディカルセンターを構築する」として「新型法人」に名乗りを上げている岡山大学附属病院の構想が紹介された。
 この構想について、日医の今村委員は、「その件で岡山大学附属病院と話し合いをもち、色々疑問点を指摘したところ、この構想は考え直すとの回答を得た」ことを明らかにした。
 議論の中で、社会福祉法人の委員は、公益法人並みの公益性担保を目指して改革が予定されている社会福祉法人が医療法人中心の「新型法人」に参加することへの違和感を表明した。
 検討会に出席した社会・援護局の西辻総務課長も社会保障審議会福祉部会で議論が進む社会福祉法人制度改革の全体像を説明し、検討上の参考とするよう求めた。
 事務局は、また、医療法人に株式会社と同様の分割を認める考えを示し、議論を求めた。事業を分割譲渡する場合、現行では病院廃止の届出や新規の開設許可が必要となるが、分割が法的に認められると手続きの大幅な簡素化が図られる。
 対象は持分のない医療法人だが、社会医療法人と特定医療法人は除かれる。
 事務局は、具体的に対象となる医療法人は、約5万(1人医師医療法人を含む)あるうちの7,000ほどにとどまることを明らかにした。

「地域連携型医療法人(仮称)」のポイントと論点(要旨)

1. 新型法人の事業地域範囲
 2次医療圏を基本として、地域の医療事業を実施するのに適当な範囲を新型法人が定め、都道府県知事が認可する範囲としてはどうか。
2. 新型法人の参加者
・参加法人は複数であることを前提としてはどうか。
・地域内の医療事業実施者は、法人・個人問わず対象としてはどうか。介護事業実施者の参加をどう考えるか。
・2以上の事業地域で病院等を開設している法人は、新型法人と当該法人の事業実施方針が異なる場合の調整規定を設けた上で、対象を当該地域の病院に限って参加を認めてはどうか。自治体病院等についても同様の取り扱いとしてはどうか。
3. 新型法人のガバナンス
・社団の場合は、現行の医療法人と同様に社員総会は各社員1議決権とし、理事も社員総会で選任してはどうか。
 財団の場合は、理事は現行医療法人制度と同様に評議員会で選任するが、評議員は寄付行為で定める方法で選任することにしてはどうか。
・新型法人は参加法人等を統括するが、参加法人等による新型法人の事業計画や予算等重要事項に対する関与は、事項ごとに、(1)参加法人等が新型法人に意見聴取・勧告を行なうという一定の関与にとどまる、(2)協議・承認(不承認の場合は修正を指示する)を行なう強い関与、のどちらかを選択できることにしてはどうか。
・新型法人の理事長要件をどう考えるか。
・新型法人への加入手続きは新型法人の定款で定めてはどうか。新型法人からの脱退は貸付金の精算等を条件に任意に可能とするが、新型法人の定款等で脱退手続きを定めることも可能としてはどうか。その場合でも、止むを得ない理由がある場合はいつでも脱退可能としてはどうか。
・社団の場合は、新型法人が地域の関係者からなる地域協議会を開催し、地域協議会は新型法人に意見具申できるようにしてはどうか。財団の場合は評議員に地域の関係者を一定割合以上任命してはどうか。また、いずれの新型法人も理事に地域の関係者を任命することにしてはどうか。
4. 新型法人の非営利性の確保
 新型法人における剰余金の配当は禁止してはどうか。また、残余財産の帰属先も、現行医療法人制度と同様に国や公共団体等に限定してはどうか。
5. 新型法人の業務内容
・新型法人の主な業務は複数法人等における統一的な事業実施方針の決定としてはどうか。
・新型法人は法人全体のキャリアパスの構築、医薬品等の共同購入、参加法人等への資金貸付等を実施できるようにしてはどうか。その場合に、資金貸付等については貸付だけを認めるものとし、税法上の取り扱いを考慮して贈与は認めないことにしてはどうか。
・以下についてどう考えるか。
①参加法人等から新型法人の管理運営経費を徴収すること
②新型法人は原則として出資はできないものとした上で、関連事業(介護・共同購入等)を行なう株式会社への出資(一定条件を付することも含めて)
③新型法人自身が病院等を経営すること6. 新型法人の透明性の確保公認会計士等による外部監査の実施やHP等による財務諸表公告を義務づけてはどうか。