全日病ニュース

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機能分化・連携と地域包括ケアの中、重要性を増すMSWの役割

【病院医療ソーシャルワーカー研修会開催の報告】

機能分化・連携と地域包括ケアの中、重要性を増すMSWの役割

日本で初めて?! MSW・看護師・事務の3職種で語り合う病院MSW研修会

 晴天の建国記念日となった2月11日と12日、全日病の「病院医療ソーシャルワーカー研修会」が日本医療社会福祉協会との共催で開催された。
 専門職としての医療ソーシャルワーカー(MSW)業務だけではなく、チームの中、組織の中のMSWの機能や役割を学び、会員組織において真に求められる人材を育成することが研修会の目的で、昨年から3回目の開催である。
 初日は西澤会長の開催趣旨を含めた挨拶で始まり、猪口副会長には「地域包括ケアと病院」と題して、地域包括ケア病棟の役割、地域包括ケアと入院医療の連携、医療連携のための病院マーケティングについて講演していただいた。
 日本医療社会福祉協会佐原会長には、「医療機関のソーシャルワーカーの存在」をテーマとする講演をしていただいた。
 佐原会長の話の中で、日本の福祉の歴史は1,300年前にさかのぼり、MSW協会の歴史は61年あるということを知った。
 2日目は、NTT東日本関東病院の原田主任SWより、「課題解決のための組織内システム構築―SWの院内外へのアプローチ」と題して、組織内でMSW部門を確立するノウハウや教育体制などについて、高知県立大学社会福祉学部の井上講師からは、「多職種連携における専門性の視点とジェネラリストの視点」として、退院支援は患者の望みをかなえることではなく、院内外のプロセスであることを、それぞれご教示いただいた。
 研修会参加の要件は、各病院のMSW、看護師、管理部門の3職種からなる3名(2名でも可)とした。
 このような組み合わせの研修会はおそらく日本で初めてではないだろうか。少なくとも全日病では初の試みであった。
 これをもっとも有効にするのはグループワークである。初日は職種ごとに、①MSWの現在行っている仕事、②MSWにやってほしい役割、③MSWがやりたい仕事、について議論し、課題を抽出。MSWの仕事の幅の広さ、各職種間での認識の違いを共有した。
 2日目はワールドカフェ方式で、「地域包括ケアの中の私たちの病院を位置づける」「病院全体で取り組む退院支援とは」「困難事例への取り組み―具体的な事例を通して」について議論した。
 席替えをしながら出会いの場を増やし、参加者がすべての課題について忌憚のない意見交換を行い、3職種が垣根なく語り合う雰囲気が2日間を通して醸成されていった。
 最後に、プライマリ・ケア検討委員会の丸山委員長は、参加者に向けて、機能分化と医療連携の高度化に貢献できるMSWの仕事が今後ますます重要性を増してくること、その仕事は、組織的にその地位の確立に取り組むことにより、地域包括ケアシステムの中で地域に貢献し続ける病院でいることができる、と激励された。
 今回の研修を通して、病院MSWの仕事が見える化されていないこと、その評価が不明確であること、などの課題も明らかになった。
 有意義で、参加者の笑顔が印象的な研修会となった。また、多職種が集まった研修会だからこそ新たな気づきを得ることができた。全日病の、これからの研修会の一方法を示したように思う。
 病院MSWの研修会は2015年度も2回予定している。より多くの病院の参加を期待する。