全日病ニュース

支払い意思額の調査票に疑問点相次ぐ

【中医協・費用対効果評価専門部会】調査結果は試行的実施の品目で活用

　中医協の費用対効果評価専門部会（荒井耕部会長）は７月12日、来年度の制度化を目指す医薬品や医療機器の費用対効果評価の仕組みに関し、効果を測る基準となる支払意思額の調査票について議論した。委員から様々な疑問点が指摘されたため、厚生労働省は一定の見直しを行い、再度委員に示して、理解を深める考えだ。また、今回の支払い額の参照値は試行的実施の品目で活用する。
　支払い意思額の調査は、厚生労働科学研究費補助金による「国内の支払い意思額に関する調査」（研究者＝福田敬・国立保健医療科学院部長）として実施する。本来は中医協の了解を得るものではないが、費用対効果評価の仕組みにおいては、重要な「参照値」となるため、費用対効果評価専門部会での理解を得る必要があるとされた。
　費用対効果評価の「よい・悪い」を判断するには、増分費用効果比（ICER）を使って総合的評価（アプレイザル）を行う。ICERでは、新たな治療法に対し、１QALY（質調整生存年）を獲得するために、Ｘ％の人がＹ円を支払う意思があるということを、受諾確率曲線の形で示す。
　受諾確率曲線の位置により、費用対効果の「よい・悪い」が５段階で評価される。今回の調査はその受諾確率曲線を導くためのもの。具体的には、３千人以上を対象としたアンケート調査で、調査員が訪問し面接する。
　質問では、完全な健康状態で１年間生存することを可能とする新しい治療法が開発され、その治療法に係る費用の総額がＸ円であるとき、公的保険から支払うべきと考えるかを『はい』または『いいえ』で答えてもらう。あらかじめ設定した金額の組み合わせに基づき、得られた回答に応じて金額を上下させ、再度、同様の質問をする。
　また、支払い意思額に影響すると考えられる収入や健康上の問題もあわせて調査し、必要に応じて補正を行う。
　例えば、年収や健康状態を示す活動状況を質問し、その結果が支払い意思額の回答に影響を与えているかを分析し、必要に応じて補正を行う。
　過去の調査では、１QALYあたり500 ～ 600万円程度というデータがある。WHO（世界保健機構）は、１人当たりGDPの１～３倍という数字を提示している。
　委員からは、「多くの人は公的保険として支払うべき金額を十分理解できない」、「対面調査というが回答者の質問に調査員が違う答えをすれば、調査結果がゆがむ」、「年収など回答者の背景が受諾確率曲線にどう落とし込まれるかがまだよくわからない」など様々な疑問が出た。厚労省は、同日の委員の指摘を受け、調査票の見直しを検討するとともに、補足的な資料を準備する考えを示した。
　調査は当初今夏に実施するとしていたが、再度中医協に示す必要が生じたため、遅れることも想定される。また、今回の調査結果は現在試行的に実施している13品目で活用し、来年度以降の制度化での活用方法は改めて検討することを明らかにした。