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効果的な医師偏在対策に向け第2次中間報告を了承

効果的な医師偏在対策に向け第2次中間報告を了承

【厚労省・医師需給分科会】無床診療所開設の規制に関しては両論併記

 厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂座長)は12月8日、医師偏在対策をまとめた第2次中間報告を大筋で了承した。医療従事者の需給に関する検討会で決定した上で、法律改正事項は来年の通常国会に提出する医療法等改正案に盛り込む。
 地域の医師不足は深刻だが、将来の医療ニーズを考えると、医師養成数はこれ以上増やすべきではないとの意見がある。養成数を抑制した上で、地域の医師不足を改善するには、効果的な医師偏在対策が不可欠であり、同分科会で、医師偏在対策を議論してきた。
都道府県が医師確保計画を策定
 今回の中間報告は、都道府県が主体的に取り組む対策を数多く盛り込んだのが特徴だ。都道府県が「医師確保計画」を策定。「医師偏在の度合い」を示す定量的な指標を作成して、確保すべき医師数の目標を地域・診療科ごとに設定する。都道府県知事は、「医師偏在の度合い」に応じて、「医師少数地域」や「医師多数地域」を指定し、具体的な医師確保対策に結びつける。
 都道府県の医師確保に関する各種会議体は、地域医療対策協議会(地対協)に集約化。地域医療支援センター運営協議会やへき地医療支援機構、専門医協議会などを地対協に移管する。
 また、医師養成の各段階で、医師確保策を講じる。
 医学部段階では、出身地と大学の所在地が同じであれば、高い定着率が期待できることを踏まえ、大学医学部の入学枠に地元出身者枠を設定し、増員を要請する制度を設ける。
 臨床研修段階では、臨床研修病院の指定・定員設定の権限を国から都道府県に移管する。その際に、都道府県は地対協の意見を聴く。国は臨床研修の指定基準を定める。大都市のある都道府県への偏在を防ぐため、臨床研修医の募集定員の上限は、2025年度に希望者数に対して1.05倍になるよう段階的に圧縮する。
 専門研修段階では、日本専門医機構による新専門医制度が来年度から始まることを踏まえ、国が必要な措置を機構に要請できる仕組みにするとともに、研修プログラムの認定前に国や都道府県が機構に意見を述べることができるようにする。
 無床診療所が都市部に偏っている状況に対しては、開業を考える医師に「外来医療機能の偏在・不足等の客観的な把握が可能」となる情報を提供することで、適切な経営判断を期待するとした。分科会の議論では、全日病副会長の神野正博委員をはじめ、多くの委員が無床診療所の開設に一定の規制を設けるべきとの意見が出たが、日本医師会の委員などが反対した。
 また、医師が少ない地域で一定期間勤務した医師を認定する制度を創設する。認定された医師には一定の医療機関の管理者となるインセンティブを付与することとし、地域医療支援病院を候補とした。神野委員は、地域医療支援病院の医師を派遣する機能が不明確であるとして、指定要件そのものの見直しが必要と指摘した。
 管理者要件を設定する医療機関を地域医療支援病院に限るとインセンティブの効果が小さいとして、「診療所を含めた他の医療機関も対象とすべき」との意見があり、反対意見とともに報告書に両論併記した。

全日病ニュース2018年1月1日・15日合併号 HTML版

 

 

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