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「医師確保計画」で都道府県の体制を強化

「医師確保計画」で都道府県の体制を強化

【厚労省・医師需給分科会】医師の偏在度合い示す指標を作成

 医療従事者の需給に関する検討会・医師需給分科会(片峰茂分科会長)は10月11日、厚生労働省が示した都道府県の医師確保実施体制の強化策を大筋で了承した。「医師確保計画」を新たに医療計画に位置づけ、定量的な現状分析をするため医師の偏在度合いを示す指標を作成する。医師確保対策を議論する会議体を地域医療対策協議会に集約化することでも一致した。
 都道府県は医療計画に「医療従事者の確保に関する事項」を記載している。しかし、記載内容にばらつきがあり、必ずしも十分な現状分析・目標設定に基づく具体的な対策になっていないという。別に、都道府県は医療計画に地域医療対策を定めているが、「医療従事者の確保に関する事項」との関係が整理されておらず、そもそも地域医療対策を定めていない都道府県もある。
 これらの状況を踏まえ、定量的な現状分析に基づく実効的な医師確保対策が進められるように、「医師確保計画」を法律に位置づける。「医師確保計画」に、①医師の確保方針②医師偏在の度合に応じた目標設定③目標の達成に向けた施策を盛り込む。医療計画は6年だが、在宅医療に関する事項と同じく、3年ごとに見直し、PDCA サイクルを回し、実効性を確保する。
 地域医療対策協議会に集約
 医師確保対策を議論する場としては、地域医療対策協議会(地対協)に機能を集約化する。地対協は2006年の医療法改正で、医師確保対策を協議する場として法制化された。しかし現状の実施状況をみると、直近5年間で5県が一度も開催していない。34都道府県は年に1回程度の開催となっている。開催が少ない理由はいくつかあるが、その一つに関連する会議や構成員の数が多く、重複もあり、調整が難しいことを理由にする都道府県が多い。
 これらの問題は、全日病副会長の神野正博委員をはじめ、同分科会の委員から改善を求める意見が出ていた。医師確保に直接関係する会議体としては、◇都道府県医療審議会◇地域医療対策協議会◇地域医療支援センター◇へき地医療支援機構◇新専門医制度における都道府県協議会があるほか、間接的に関連する会議体として、◇地域医療構想調整会議◇医療勤務環境改善支援センターがある。厚労省は、各会議体の連携が乏しく、重複した検討が行われている場合があると指摘した。
 これらを踏まえ、医師確保対策は地対協に機能を集約化することを提案した。医師確保対策を担う医療機関が中心になるよう構成員を見直すとともに、へき地医療支援機構と新専門医制度における都道府県協議会は統合する方向だ。
 都道府県の地域医療支援事務についても改善を図る。具体的には、◇都道府県は必ず大学医学部・大学病院と連携し、地対協で協議する◇医師の派遣先は、理由なく公立病院・公的病院に派遣先が偏らないようにする◇地対協の協議を経て、地域枠医師の派遣方針を決定することを明確化◇キャリア形成プログラムを策定することを徹底◇派遣医師の負担軽減のための援助(休暇取得や能力開発等が可能な労働条件の確保等)を行う─をあげた。
 あわせて、医師派遣と勤務環境改善対策が密接に関連する状況を踏まえ、地域医療支援センターと医療勤務環境改善支援センターの連携を強化するための「制度上の工夫」を行うとした。
 神野委員はこれらの論点に対し、「医師確保計画」の策定など基本的な方向性に賛意を表明。その上で、医師派遣が公立病院・公的病院に偏らないようにすることを明確化することを求めた。また、医療勤務環境改善支援センターによる医師の勤務環境改善に向けた取り組みに関連して、「会場が労働基準監督署であるなど、指導が行われる可能性に医療機関が不安を感じる体制になっており、配慮が必要」と指摘した。
 「医師確保対策」の目標設定に関しては、医師偏在の度合いを示す指標の作成が課題になる。厚労省は、「人口10万人対医師数」など単純な指標ではなく、医療需要(ニーズ)を把握して、例えば、二次医療圏など、データが入手できる単位で、「医師少数地域」や「医師多数地域」を指定し、都道府県内で「医師多数地域」から「医師少数地域」に医師を派遣するイメージを描いた。都道府県をまたいだ対応も検討する。
 医療需要(ニーズ)を把握するには、多くの要素を勘案する必要がある。将来の人口変化や患者の流出入、医師の年齢など様々だ。厚労省は入院・外来の区別や小児科・産科など診療科別の要素を加える意向も示した。医療需要(ニーズ)に応じて、医師を確保する方針に対し、神野委員は、「将来人口減少で医療ニーズが少ないと見込まれる地域でも、最低限の医師数による医療ニーズは確保されるべきだ」と訴えた。

 

全日病ニュース2017年11月1日号 HTML版

 

 

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