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ホーム全日病ニュース(2019年)第935回/2019年3月1日号臨床研修病院の指定権限の委譲で省令改正案を了承...

臨床研修病院の指定権限の委譲で省令改正案を了承

臨床研修病院の指定権限の委譲で省令改正案を了承

【厚労省・臨床研修部会】都道府県の恣意的な判断に根強い懸念

 厚生労働省の医道審議会医師分科会・医師臨床研修部会(桐野高明部会長)は1月31日、臨床研修病院の指定権限の委譲など改正医療法・医師法関連の省令改正案を了承した。臨床研修病院の指定の継続や取消しの権限が国から都道府県に移る。地域の医療提供体制を構築する上で、都道府県に大きな役割を担ってもらうという方針に則った見直しだが、委員からは、恣意的な対応が行われた場合のチェック体制を懸念する意見が相次いだ。
 昨年成立した改正医療法・医師法を踏まえ、これまで国が主導した臨床研修の体制も、2020年度から国から都道府県に権限が移る。ただ、同検討会では臨床研修病院の取扱いなどで、都道府県の事務能力や公平な判断が行われるかを疑問視する声があがっている。
 厚労省はこれまでの指摘を踏まえ、課題を3点に整理。対応策を示した。課題は◇都道府県の臨床研修制度への十分な理解◇臨床研修病院の指定の取消しを含んだ判断を行なう訪問調査における適切な評価◇都道府県の地域医療対策協議会等により恣意的な判断があった場合の対応─である。
 都道府県に臨床研修制度を十分に理解してもらうための対応では、事前説明会を複数回開催するほか、担当者向けの手順マニュアルの作成やQ&Aのホームページへの掲載などを実施する。
 臨床研修病院の指定の継続・取消しに関しては、都道府県が書面調査で指定基準を満たしていない疑いがあれば、臨床研修病院に訪問調査を行なう。これまでは地方厚生局が行っていたが、都道府県が実施することになる。訪問調査の際には、引き続き卒後臨床研修評価機構(JCEP)の職員が同行し、これまでに得た知見を活用する。
 また、研修医への聴取を含めた訪問調査の結果は、これまで3段階だった総合評価を4段階とし、下から2番目の評価が連続した場合は、指定取消しの対象とするのを原則とする。
 臨床研修病院の指定や募集定員の設定は都道府県の権限だが、厚生労働大臣に知らせる必要がある。もし、都道府県の地域医療対策協議会などを通じ、特定の関係者の意向が反映され、都道府県が恣意的な判断をした疑いがあれば、厚生労働大臣は都道府県知事に通知するとともに、当該臨床研修病院の調査をすることができる。ただし、病院の同意を得なければならない。
 これについて、都道府県の恣意的な対応を懸念する根強い意見が出た。厚労省は、今後の医師偏在対策においては、国よりも地域の実情がわかる都道府県が権限と責任を持って、具体的な施策を講じていくことの意義を強調した。その上で、恣意的な対応をチェックできる体制を整えつつ、問題があれば、都道府県に適切な対応を促すと説明し、理解を求めた。
 なお、設定基準の妥当性が疑問視される基幹型病院の「年間入院患者3千人以上」との要件については、そのあり方を含め、引き続き検討していく。

研修医の病院への配分方法を変更

 都道府県別の臨床研修医の募集定員の上限の設定は、従来の方法を踏襲し、東京、神奈川、愛知、大阪、京都、福岡の大都市のある6都府県に、医師が集中しないよう都道府県調整枠を活用した上限設定とする。大都市の都府県の上限は、目標値を定めてさらに厳しく設定することになっている。
 上限の枠内で都道府県が、各臨床研修病院に研修医をどう配分するかの方法は大きく変わる。基本的には、各研修病院への配分は地対協の議論を踏まえ、都道府県が決定するが、新たに指定される医師少数区域に重点的な配置を行う方式となる。
 地対協で、医師少数区域への定員重点配置を念頭に、地域密着型臨床研修病院を含め、各病院の採用規模を確認しつつ、都道府県は定員案をまとめ、厚労省に通知する。問題がなければ、上限内で各研修病院の定員が設定される。その際に、過去の実績にかかわらず、都道府県の実情に応じて、個別病院の定員を設定できるとしている。

地域密着型病院で地域枠は別設定
 2020年度から新たに指定される地域密着型臨床研修病院の地域枠を限定選考する手法も了承した。地域密着型臨床研修病院は、「地域医療に従事することを重視する研修医を対象とした研修プログラム」がある基幹型臨床研修病院である。医師少数区域における地域医療の研修が12週以上であり、臨床研修後も総合的な診療の研修が受けられる体制があることも条件となる。
 地域密着型臨床研修病院は、臨床研修期間中に従事要件等が課されている地域枠の医師について、一般の医師とは別に採用することができる。ただ、地域枠を特別扱いし過ぎるのも適切ではないため、一定の制限を設ける。
 具体的には、地域枠の医師の採用人数は、マッチング枠のうち、「募集定員の2割または5名の少ないほう以下」とした。例えば、地域密着型臨床研修病院で15人の採用枠があった場合、地域枠の上限は3人となる。
 また、全日病副会長の神野正博委員は、地域密着型臨床研修病院の指定などにおいて、厚労省が示した通知案通りに手続きが行われることを検討会の場で厚労省に改めて確認。公民が差別されない公平な判断が行われることを求めた。

 

全日病ニュース2019年3月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 第935回/2019年3月1日 ヘッドライン:全日病ニュース:全日病の発言 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/summary/20190301.html

    2019年3月1日 ... 全日病ニュース』は全日本病院協会が毎月1日と15日に発行する機関紙です。 ※注
    一般ページでは1ヶ月前の ... 臨床研修病院の指定権限の委譲で省令改正案を了承:
    道府県の恣意的な判断に根強い懸念. <厚労省・災害医療検討会>

  • [2] 医師法第16 条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令の施行について

    https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2018/180705_2.pdf

    2018年7月3日 ... 一部改正. 平成30年7月3日). 各都道府県知事 殿. 厚生労働省医政局長. 医師法第
    16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令 ... を図るため、地方厚生局において
    臨床研修病院、大学病院、医療関係団体等の参加を得て連絡 ... ついては、貴職にお
    かれても、臨床研修省令の趣旨、内容等について御了知の上、貴管内.

  • [3] 【資料】医療法及び医師法の改正法案の概要|第914回/2018年4月1 ...

    https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20180401/news10.html

    2018年4月1日 ... 改正の趣旨 地域間の医師偏在の解消等を通じ、地域における医療提供体制を確保する
    ため、都道府県の医療計画における医師の確保に関する事項の策定、臨床研修病院
    指定権限及び研修医定員の決定権限の都道府県への移譲等の措置を講ずる。 1.
    医師少数区域 ... 医療機関における安全管理体制の確保については、「医療法施行規則
    の一部を改正す. る省令の施行 ... 医療を提供するに当たって、 医師等 ...

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