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医師の働き方改革に関する検討会報告書の概要(3月28日了承)

医師の働き方改革に関する検討会報告書の概要(3月28日了承)

【資料】

□ 医師の働き方改革に関する検討会(座長:岩村正彦東京大学大学院法学政治学研究科教授)において、医師の時間外労働規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策等についてとりまとめを行った(2019年3月28日)。

1.医師の働き方改革に当たっての基本的な考え方

医師の働き方改革を進める基本認識
□ 我が国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており危機的な状況。昼夜を問わず患者への対応を求められうる仕事で、他職種と比較しても抜きん出た長時間労働の実態にある。
□ 健康への影響や過労死の懸念、仕事と生活の調和への関心の高まり、女性医師割合の上昇等も踏まえ、改革を進める必要がある。
□ 医師の長時間労働の背景には、個々の医療機関における業務・組織のマネジメントの課題のみならず、医師の需給や偏在、医師の養成のあり方、地域医療提供体制における機能分化・連携が不十分な地域の存在、国民の医療のかかり方等の様々な課題が存在する。
 これらに関連する各施策と医師の働き方改革が総合的に進められるべきであり、規制内容を遵守できる条件整備の観点からも推進する必要がある。

医師の診療業務の特殊性
(応召義務について)
□ 医療機関としては労働基準法等の関係法令を遵守した上で医師等が適切に業務遂行できる体制・環境整備を行う必要。応召義務を理由に、違法な診療指示等に従うなど、際限のない長時間労働を求められていると解することは正当ではない。

(医師の診療業務の特殊性)
□ 公共性(国民の生命を守るものであり、国民の求める日常的なアクセス、質等の確保が必要)
□ 不確実性
 (疾病発生が予見不可能である等)
□ 高度の専門性
 (業務独占、養成に約10年要する)
□ 技術革新と水準向上
 (新しい診断・治療法の追求と活用・普及の両方が必要)

2.働き方改革の議論を契機とした、今後目指していく医療提供の姿



□ 労働時間管理の適正化が必要。その際、宿日直許可基準における夜間に従事する業務の例示等の現代化、医師の研鑽の労働時間の取扱いについての考え方等を示す必要がある。
□ 医師の労働時間短縮のために、医療機関のマネジメント改革(意識改革、チーム医療の推進(特定行為研修制度のパッケージ化等)、ICT等による効率化)、地域医療提供体制における機能分化・連携や医師偏在対策の推進、上手な医療のかかり方の周知を全体として徹底して取り組んでいく必要がある。また、働き方と保育環境等の面から、医師が働きやすい勤務環境の整備が重要になる。
□ 個々の医療機関に対するノウハウ提供も含めた実効的な支援策、第三者の立場からの助言等が重要になる。
□ 上手な医療のかかり方を広めるための懇談会でとりまとめた方策を国が速やかに具体的施策として実行する。

3.医師の働き方に関する制度上の論点

時間外労働の上限規制の構成

具体的な内容は5頁の図表参照

 診療従事勤務医の時間外労働の上限水準として、脳・心臓疾患の労災認定基準を考慮した(A)水準を設定。このほかに、2つの水準を設定する。


□ 地域医療提供体制の確保の観点(①2024年時点ではまだ約1万人の需給ギャップが存在し、さらに医師偏在解消の目標は2036年、②医療計画に基づき改革に取り組む必要性、③医療ニーズへの影響に配慮した段階的改革の必要性)から、やむを得ず(A)水準を超えざるを得ない場合を想定し、地域医療確保暫定特例水準((B)水準)を設定する。
 ※「臨時的な必要がある場合」の1年あたり延長することができる時間数の上限(1,860時間)については、過重労働を懸念する声があがっており、本検討会においても、医師の健康確保や労働時間短縮を求める立場から賛同できないとの意見があった。
□ 地域医療の観点から必須とされる機能を果たすためにやむなく長時間労働となる医療機関として、その機能については、具体的に以下のとおり。

◆「救急医療提供体制及び在宅医療提供体制のうち、特に予見不可能で緊急性の高い医療ニーズに対応するために整備しているもの」・「政策的に医療の確保が必要であるとして都道府県医療計画において計画的な確保を図っている「5疾病・5事業」」双方の観点から、

ⅰ 三次救急医療機関
ⅱ 二次救急医療機関 かつ「年間救急車受入台数1,000台以上又は年間での夜間・休日・時間外入院件数500件以上」かつ「医療計画において5疾病5事業の確保のために必要な役割を担うと位置付けられた医療機関」
ⅲ 在宅医療において特に積極的な役割を担う医療機関
ⅳ 公共性と不確実性が強く働くものとして、都道府県知事が地域医療の確保のために必要と認める医療機関(例)精神科救急に対応する医療機関(特に患者が集中するもの)、小児救急のみを提供する医療機関、へき地において中核的な役割を果たす医療機関

 以上について、時間外労働の実態も踏まえると、あわせて約1,500程度と見込まれる。

◆特に専門的な知識・技術や高度かつ継続的な疾病治療・管理が求められ、代替することが困難な医療を提供する医療機関(例)高度のがん治療、移植医療等極めて高度な手術・病棟管理、児童精神科等


□ ①臨床研修医・専門研修中の医師の研鑽意欲に応えて一定期間集中的に知識・手技を身につけられるようにすること、②高度な技能を有する医師を育成する必要がある分野において新しい診断・治療法の活用・普及等が図られるようにすること、が必要であり、集中的技能向上水準((C)-1水準)、(C)-2水準)を設定する。

B・C水準の適用の対象、手順等
(B水準)
 医療機関機能、労働時間短縮の取組等の国が定める客観的要件を踏まえ都道府県が対象医療機関を特定⇒特定された機能にかかる業務につき(A)水準超での36協定が可能に。新たに設ける「評価機能」が医療機関ごとの長時間労働の実態や取組状況の分析・評価を実施。結果を医療機関・都道府県に通知・住民に公表し、当該医療機関と地域医療提供体制の双方から労働時間短縮に向けて取り組む。
(C)-1水準(研修医)
 臨床研修・専門研修プログラムにおいて想定最大時間外労働(実績)を明示。これが(A)水準を超える医療機関を都道府県が特定(※超えない場合は(A)水準の適用)⇒「臨床研修・専門研修に係る業務」につき(A)水準超での36協定が可能に。医師は明示時間数を踏まえ自らプログラムを選択・応募する。
(C)-2水準(高度特定技能)
 高度技能育成を要する分野を審査組織(※高度な医学的見地からの審査を行う)が特定。必要な設備・体制を整備している医療機関を都道府県が特定⇒「高度特定技能育成に係る業務」につき(A)水準超での36協定が可能に。医師が自由な意欲により計画を作成し、審査組織の個別承認を経たのちに実際の適用となる。

 ※現在、一般労働者の副業・兼業に係る労働時間管理の取扱いについては「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」において検討されている。このため、兼業(複数勤務)を行う医師に対する労働時間管理等の在り方については、改めて検討する。

B・C水準の将来のあり方
 ※下表を参照

4.おわりに


□ とりまとめ内容の制度化・実施の際には、追加的健康確保措置が実効性をもって運用され、医師の健康を確実に担保するとともに、(B)水準の解消等に向けて労働時間短縮を着実に推進することが最重要となる。
□ 個々の医療機関が労働時間短縮・医師の健康確保を進めた上で、労使で十分に話し合い、時間外労働について36協定を締結することが重要。さらに、地域医療確保のためにも、医療機関に対する実効的な支援等について確実に実行に移していけるよう、厚生労働省を始めとした行政の速やかな具体的対応を強く求める。
□ 医師と国民が受ける医療の双方を社会全体で守っていくと強く決意する。

 

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