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ホーム全日病ニュース(2020年)第964回/2020年6月1日号病院機能評価受審支援相談事業(アドバイス)を受けて

病院機能評価受審支援相談事業(アドバイス)を受けて

病院機能評価受審支援相談事業(アドバイス)を受けて

医療法人春風会 樫村病院   岡本 佐智子

 当院は、香川県の「高松市」と「さぬき市」の中間に位置し、半世紀以上にわたって地元に寄り添った医療を行ってきました。
 当院の受審目的は、医療機関としての全国標準レベルの「医療の質」と「組織の質」の向上。そして「全ての業務の標準化」を目指しています。
 当院では受審に向け、1月31日にキックオフミーティングを行い、2月15日に受審セミナー後の概要説明、組織並びに体制の明確化、受審の流れ、今後の日程等の説明がありました。参加者からの緊張感の漂う中での説明は、一人ひとりが受審という機会を通じて現状を把握すること。そして、課題を明確にするところから始まり改善を図る一連のプロセスであることの認識を共有しました。
 今回は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、訪問アドバイスからNETに変更して先生方からのアドバイスをいただきました。

●全体的なアドバイス
1.マニュアルの作成
・地域連携・患者支援体制についてのマニュアル
 古くから現在まで、多岐にわたって行われていた患者支援体制の業務を具体化すること。業務を整理することが求められている。その上で担当者の役割を明確にし、手順や業務フローをマニュアル化することで業務の共有化を図る。…前方・後方連携調整、紹介患者の受け入れの仕組み(紹介もとへの返事がされていること)、退院支援・ベッドコントロール等・救急対応マニュアル虐待への対応は、日本医師会・県で作成しているので参考にして作成・診療録開示マニュアル
2.患者の権利について
・権利に関する研修…新人研修は必須であるが中途採用者にも研修が必要。明文化し、院内・外部への周知も必要・セカンドオピニオンの院内掲示・手順の作成
 「紹介」「受け入れ」とも患者の権利であり、明文化のみならず、患者の目に付くところに掲示されていることが求められる
 病院として、説明と同意の方針を明確にして、実施時の注意点及び侵襲性のある検査や治療など、必要な範囲を明文化すること・倫理的課題の対応の明確化
 病院として判断を下す仕組み、検討する仕組みは必要であり、倫理委員会としての合議体は必要としないが、幹部で行うか、他の委員会で行うか明確にすること。また、親族のいない患者への同意取得などの方針、対応はあらかじめ作成しておくことも必要である
3.必要なクリニカルパス作成
・内視鏡検査・大腿骨骨折・鼠径ヘルニア等
4.診療録について
・医師の退院サマリーの作成・診療録記載基準作成
5.看護記録
・看護の質的監査…看護記録・看護計画は個別性が重要視され、看護が見えることや、同意を得た記録が必要である・看護サマリーの活用…退院患者を外来でフォローしている場合、看護サマリーを活用することで継続看護に生かされる・医師・看護師の説明・指導などの内容を記載する場合、患者の理解度を含めた記載が必要である・ICに同席できない場合の取り決めも必要。医師のみによるIC後、看護師が確認し、その結果を診療録に記載すること
6.退院時アンケート…意見箱の設置・運用方法・フィードバックも必要
7・患者満足度調査・職員満足度調査の推進
8.医療安全について
・医療安全管理者・医薬品安全管理者・医療機器安全管理者の権限の明確化・全体研修会での欠席者への対応・周知の方法・院内・外の情報の活用方法・フィードバックの方法・緊急コードの設定
9.感染対策について・個人別の消毒液の使用量の測定・ゴーグル・フェイスシールドの整備・新型コロナウイルスへの対応を作成
10. 転倒、転落リスク評価について・リスク評価を年齢で決めるのは危険だと思う。病床の特質上、全患者のリスク評価が必要だと考える
11.リハビリテーションについて
・リハビリテーション実施時間を一律に記載するのは適切ではない
12.身体抑制について
・身体抑制に対し包括的指示の検討
13.地域に向けての教育・啓発活動
・どんぐり通信の編集担当、発行部数、発行回数、その活用状況を整理しプレゼンをする・ホームページ・医療netさぬき等の活用・院内での医師、職員による講演活動の実施。実施後の記録を提示する・広報活動・院内での待ち時間を利用してのレクチャーの実施(医師、看護師、薬剤師、療法士、栄養士等)

●今後の課題
 アドバイスをいただき、当院の弱みが明確になりました。弱みが強みになるよう前に進みたいと思います。そのためにも全職員が一丸となることが絶対条件です。各部署に配布している指針・マニュアルを共有するにはどのようにすればいいのか、今後も検討し続けます。
 また、看護計画に関しても、実際にその症例でどのような計画を立案したのか、その計画は患者と関わり、ケアに生かされたのかを見ることが重要です。そして、チームとしてどう関わったのかを振り返り評価をすることが責務であると考えます。
 さらに、医療安全や感染管理はあらゆる場面に関わりがあり、直接患者の不利益につながることになるので、問題解決を早急にするためにもマニュアルの整備と実効性のある対策にしたいと考えています。
 職員一同、目標に向かって進んでいきたいと思います。

 

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