全日病ニュース

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介護療養病床存続を求める声が圧倒的。機能強化へ、各病院が様々なビジョン

介護療養病床存続を求める声が圧倒的。機能強化へ、各病院が様々なビジョン

【全日病の「経営セミナー」】
迫井老健課長「看取り、ターミナル、認知症身体合併症の機能は存続する必要」

 全日病が主催する「2025年に生き残るための経営セミナー」の第6弾「超高齢化社会での介護療養病床の重要性」が、10月21日に本部会議室で開催された。
 「経営セミナー」第6弾を企画した安藤高朗副会長は、冒頭の挨拶で、「このセミナーを開催した目的は、介護療養型医療施設を運営してきた我々自身の手でその機能を明らかにするとともに、今後の課題を確認し、どのように地域包括ケアに役立つ病床にしていくのかを検討することにある。その上で、介護療養病床の機能の存続に向けて行政に対する要望を考えていきたい」と説明した。
 安藤副会長は、また、全日病として、慢性期医療と介護療養病床の実態を探るアンケートを10月に実施したことを明らかにした。
 調査は2本からなり、「慢性期医療に関する調査」では、医療療養の25対1病床、障害者施設、特殊疾患病棟を対象に患者の実態や地域包括ケア病棟届出の有無と転換意向を、「介護療養病床に関するアンケート」では、介護療養病床の患者と機能の実態、転換意向、病院として存続することへの賛否をたずねる内容になっている。
 調査結果を基に、西澤執行部は、今後の「経営セミナー」で、2017年度末に廃止が見込まれる医療療養25対1病床の問題に取り組んでいくことを検討している。
 講師に招かれた厚生労働省老健局の迫井正深課長は「超高齢化社会を迎える中で介護療養病床をどう位置づけるか」と題して講演。
 「介護保険法に書き込まれた廃止規定は有効であるが、それと役割・機能は別だ。看取り、ターミナル、身体合併症の認知症患者と、介護療養病床が現に果たしてきた機能は今後も存続していく」と述べ、同病床に期待される機能として、看取り、ターミナル、認知症身体合併症の3点をあげた。
 その上で、これら機能を全うする上で必要な、他の介護施設や医療療養とことなる取り組みや人的配置を考えていく必要を述べた。
 事例発表として、京都西南病院(清水紘理事長)は看取りの場、松谷病院(松谷之義理事長)は認知症身体合併症を診る病床という立場から、重度要介護者に入院医療を提供している現状を報告し、その病床の存続を訴えた。
 その後、参加者は8 つのグループに分かれて各病院の実態を報告しあう中で、介護療養病床が果たしている機能の現状について意見を交換、グループごとに、介護療養病床の今後の機能のあり方や取り組むべき課題を整理するとともに、医療行政に対する要望などの意見を発表した。
 発表では、今後の課題(自院として取り組みたいこと)として、「ターミナルと看取り」「身体合併症をもつ認知症患者」「在宅復帰に向けたリハの充実」「重度患者に対するケアの質向上による他施設との差別化」「地域との連携」「介護職員の専門職としての確立」などの意見が多かった。
 在宅復帰の機能強化をめざす意見の中には、「病院から在宅、具合が悪くなったらまた病院、そして看取るところまでの流れをつくっていきたい」など、介護療養病床を地域包括ケアに積極的に位置づける意識が強くうかがわれた。  ケアの質向上については、嚥下のリハ、経口摂取への移行、あるいは「おむつ代の廃止も含めた排せつ介助」といった在宅復帰に向けた取り組みの必要を唱える病院が少なくなかった。
 こうした機能強化に取り組む上で必要なものとして、参加病院からあがったのは、マンパワーの確保、スタッフの教育研修、処遇改善への支援と、主にヒトの問題であった。他方で、在院日数短縮やアウトカムに対する評価を求める意見も多かった。
 こうしたことを踏まえ、「行政に望むこと」としてあがったのは、なによりも「介護療養の存続」であった。仮に廃止が避けられないとしても「早期に介護療養病床の将来の姿を示してほしい、そして、転換するための時間を与えてほしい」という切実な声であった。
 あるいは「機能を残すのであれば施設ではなく病院(医療提供の場)として存続させてほしい」という意見もあった。