全日病ニュース

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次期介護報酬改定でロボット・ICT の評価を厚労省が提案

次期介護報酬改定でロボット・ICT の評価を厚労省が提案

【厚労省・介護保険部会】
介護保険法改正へ2巡目の議論が始まる

 来年の通常国会提出に向けて介護保険法改正の議論を行っている社会保障審議会の介護保険部会(遠藤久夫部会長)は、9月7日の会合から2巡目の議論に入った。
 厚生労働省は、議論テーマとして、(1)介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)、(2)保険者の業務簡素化(要介護認定等)、(3)認知症施策の推進の3点を示す中で、年末のとりまとめに向けて一歩踏み込んだ方向性を論点で明らかにした。
 厚労省が示した論点は右表の通りだが、介護人材の確保に関連してロボット・ICT の活用の介護報酬による評価を提起している点が注目される。また、書類の簡素化とともに介護業務の標準化(介護の手順・基準の明確化)を提案。認知症施策に関しては、新オレンジプランの基本的考え方を介護保険法等に盛り込む必要性を提起した。
●生産性向上・業務効率化等をめぐる議論
 ロボットやICT の活用について、日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員は医療と連携したシステムとすることを要望するとともに、その導入コストを支援していく必要があると述べた。書類の簡素化に関しても、ICT や書類の共通化など、「医療と介護の(情報の)連携が前提となる」ことを訴えた。
 多くの委員がロボットやICT の活用を肯定する中で、全国老人保健施設協会会長の東委員は「元気な老人に周辺業務をお願いする介護助手の方がより重要だ」と述べた。
 ロボットに関しては、複数の委員が「介護ロボットは在宅や認知症に対する介護では役に立たない」と疑問を示し、“介護ロボットが有効な施設系”に有利な導入支援となることに警戒感を表した。また、「ロボットもよいが、併せて外国人人材や高齢者の人材育成を検討すべき」との意見があった。
 「人員・設備基準の見直し等の検討」に関連して、「常勤・兼務のあり方も見直すべき」とする意見があったほか、「人員の緩和によって2025年に介護人材がどのくらい節減可能になるか考えてみるべきだ」といった声もあった。
 一方、日本看護協会常任理事の齋藤訓子委員は「業務の類型化を行って、人の手に委ねるものとロボットに委ねるものとを判別しないとうまくいかない」と述べた上で、「導入による負担軽減を安易に人員削減に結びつけるのは安全確保の上で危険だ」と指摘した。
 ロボット活用に際した視点は書類等の見直しや簡素化にも通じ、少なからぬ委員から「業務とフローの整理や標準化」とパラレルに取り組むべきとの意見が出た。あるいは、書類の簡素化を阻んでいるのは「バラバラな書類様式で届出や報告を求めてくる市町村である」との声もあった。
●介護業務の標準化をどう進めるか
 介護業務の標準化の問題に関して、厚労省は「国として1つの手順をつくるのではなく、各施設の中で蓄積された根拠と説明可能なものをつくっていただくイメージ」(老健局辺見振興課長)というスタンスで臨む考えだ。
 事業主責任による「介護の手順・基準の明確化」とそれを研修で普及浸透させていくという厚労省の考え方に、複数の委員から支持する声があった。
 これに関して、上智大学教授の栃本委員は「標準化とは手順の統一ではないし、決して形式的なマニュアルではない」と強調。その上で「本当に効果がある、エビデンスのあるスキルや機械あるいはプロセスであればケアスタンダードとなり得る」とする見解を明らかにした。
 ロボットやICT の活用に対する支援に関しては、多くの委員が介護報酬による評価を肯定する一方、公費(補助金等)の投入を望む声もあった。
 このほか、人材確保に関して、全国町村会の委員は、地域差を解消するために「人材確保安定化基金」の設置を希望した。
●その他の議論
 厚労省が提案した①更新認定有効期間の上限を現行の24ヵ月から36ヵ月に延長する②状態安定者は二次判定の手続きを簡素化する方針は、いずれも概ね同意を得た。
 認知症施策の推進に関して「認知症の人と家族の会」の委員は、「早期診断と早期対応の重層的な体制というが、いまだその具体的な姿がみえてこない」と不満を表明した。
 医療系の委員からは、「身体合併症を伴う認知症患者の多くが一般・療養病床に入院しているが、4月改定で看護必要度のB項目に入った以外、評価がほとんどない。医療と介護の間でも連携を十分評価していかないと見通しは厳しい」、「認知症を予防する施策が欠如している」、「医療計画と認知症施策との整合性を図るべきではないか」などの意見が示された。

【論点(要旨)】
(1)介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)
・ 介護報酬改定の際にロボット・ICT を活用している事業所に対する介護報酬や人員・設備基準の見直し等を検討してはどうか。
・ 提出が必要な書類等の見直しやICT を活用した書類の簡素化を進めるべきではないか。
・ 各施設・事業所において介護の手順・基準を明確にする等により、根拠に基づく介護を行うことができるよう介護職員の人材育成を進めていくべきではないか。
(2)要介護認定の見直し等
・更新認定有効期間の上限を36カ月に延長することを可能としてはどうか。
・ 状態安定者は二次判定の手続きを簡素化してはどうか。状態が安定しているかどうかを確認する際の具体的な要件については、要介護認定の実態研究を実施し、その結論等を踏まえ設定することとしてはどうか。
(3)認知症施策の推進
・ 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)は、政府全体の総合的な取組として、引き続き推進していくことが必要ではないか。
・ 新オレンジプランで示されている基本的考え方(普及・啓発、介護者支援、本人視点の重視など)を介護保険法等に盛り込む必要があるのではないか。
・ 地域における認知症に関する医療・介護等の連携をさらに推進していくため、その時の容態にもっともふさわしい場所で適切なサービスが提供される循環型の仕組みを構築していく観点を介護保険事業(支援)計画等に盛り込む等、各地域で計画的に取り組む必要があるのではないか。特に医療との連携の観点から、都道府県による市町村に対する適切な支援が必要ではないか。
・ 認知症初期集中支援チームについて、早期に認知症の鑑別診断が行われ、速やかに適切な医療・介護等につなげるための介入を行うという機能を果たしつつ、さらに、必ずしも初期でない認知症の人への支援やいわゆる困難事例への対応等も必要とされていることから、より効果的にチームを機能させる必要があるのではないか。
・ 家族をはじめとする認知症の人の介護者への支援について、精神的側面への支援を含めたより重層的な介護者への支援の在り方等について検討が必要ではないか。
・ 若年性認知症について、若年性認知症支援コーディネーターが地域障害者職業センターや認知症地域支援推進員等関係機関と連携を推進していく必要があるのではないか。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版

 

 

全日病サイト内の関連情報
  • [1] 介護保険最新情報Vol.501

    http://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2015/151105_1.pdf

    2015年11月5日 ... 厚生労働省老健局 総務課認知症施策推進室. 高齢者支援課. 振. 興. 課. 老人保健課.
    平成27年度介護報酬改定検証・研究調査への協力依頼について ... 次期介護保険
    制度の改正及び介護報酬の改定に必要な基礎資料を得ることを目.

  • [2] 平成26年度介護報酬改定検証・研究調査への協力依頼について

    http://www.ajha.or.jp/admininfo/pdf/2014/140825_1.pdf

    2014年8月22日 ... 各市区町村介護保険担当主管部(局) 御中. 厚生労働省老健局 振. 興. 課. 老人保健
    . 平成26年度介護報酬改定検証・研究調査への協力依頼について ... 次期介護保険
    制度の改正及び介護報酬の改定に必要な基礎資料を得ることを目.

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