全日病ニュース

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喫煙とがんなどの疾患との因果関係を判定

喫煙とがんなどの疾患との因果関係を判定

飲食店などでの屋内禁煙化の強化促す

 厚生労働省は8月31日、喫煙の健康影響に関する検討会報告書(たばこ白書)を公表した。喫煙とがんなどの疾患との因果関係を、たばこ白書として、初めて科学的に判定している。また、日本の受動喫煙防止対策は世界最低レベルと指摘。屋内禁煙に対する規制の強化を促した。
 たばこ白書は、1986年、1993年、2001年に発行されており、今回15年ぶりの改訂版となる。日本人の喫煙と各疾患の因果関係を明らかにし、疾患ごとに「確実」「可能性あり」「不十分」「ない」の4段階に分けた。
 因果関係が「確実」な疾患は、がんや循環器疾患、呼吸器疾患などだった。
 能動喫煙との関係では、◇がん(肺、口腔・咽頭、喉頭、鼻腔・副鼻腔、食道、胃、肝、膵臓、膀胱、子宮頸部)◇循環器疾患(虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢動脈硬化症)◇呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患= COPD、肺機能低下、結核死亡)などがあがった。
 受動喫煙との関係では、肺がんや虚血性心疾患、脳卒中、小児喘息、乳幼児突然死症候群などが示された。
 「可能性あり」の疾患は、能動喫煙では、大腸がんや乳がん、急性骨髄性白血病、胸部大動脈瘤、気管支炎、歯の喪失、認知症、女性の生殖能力の低下などだった。受動喫煙では、鼻腔・副鼻腔がんや乳がん、急性・慢性呼吸器症状、低出生体重児・胎児発育遅延などがあがっている。
 また、WHO(世界保健機構)による評価で、日本の受動喫煙防止対策は「世界最低レベル」と強調した。医療機関や学校、飲食店など公共の場(8施設)のすべてで屋内全面禁煙とする法律等を施行している国は49か国(13億人)に及ぶ。しかし、日本は健康増進法25条に公共の場で受動喫煙防止を講じる旨が規定されているものの、努力義務規定にとどまっている。
 世界では、受動喫煙が原因で年間60万人が死亡しているとの推計がある。同様の手法で推計すると、日本は年間1万5,000人を超えることを示した。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版