全日病ニュース

全日病ニュース

結核罹患率14.4で指針の目標は達成

結核罹患率14.4で指針の目標は達成

依然「低まん延国」の水準は上回る

 厚生労働省は8月12日、2015年の結核登録者情報調査年報の集計結果を公表した。罹患率は14.4で、前年より減少した。2015年に新たに結核患者として登録された人は約1.8万人となっている。罹患率を「15以下」とする「結核に関する特定感染症予防指針」の目標は達成したが、依然として「低まん延国」の水準は上回っている。
 結核の人口10万人に対する罹患率は14.4で、前年から1.0減少した。2011年に策定した「結核に関する特定感染症予防指針」では、2015年に「15以下」にすることを目標にしていたため、目標は達成した。同指針では、DOTS(直接服薬確認療法)の推進を特徴としていた。
 しかし日本は、依然として、「低まん延国」の水準である「10以下」を上回る状況だ。諸外国の状況をみると、米国2.8、イタリア5.1、ドイツ5.4、フランス7.1と主要先進国は10を下回っている。厚生科学審議会の結核部会では、指針改正により、2020年の目標値を「10以下」に設定する方向で議論している。
 日本の状況を概観すると、2015年に結核により死亡したのは1,955人で、前年から145人減った。死亡率は1.6となっている。
 2015年に新たに結核患者として登録されたのは1万8,280人で、前年より1,335人減少した。うち菌喀痰塗抹陽性肺結核の患者数は7,131人で、前年から520人減少した。結核罹患率を年齢階級別にみると、高齢層ほど高く、70代は26.9、80歳以上は70.8である。
 職業との関連では、20~ 59歳の新規患者の23.7%が、無職臨時日雇等の人だ。年齢が上がるほどその割合が高くなる。55 ~ 59歳で40.8%が無職臨時日雇等の人である。
 結核罹患率を都道府県別にみると、最も高いのは大阪の23.5で、◇兵庫17.1◇東京17.1◇大分17.1◇奈良16.8が続く。罹患率が低いのは◇山形7.3◇長野8.3◇宮城8.5◇秋田8.5◇山梨8.7となっている。
 結核登録者情報調査年報では医療従事者の罹患状況も公表している。新登録結核患者のうち、看護師・保健師の登録患者は219人であり、全新登録結核患者の1.2%となっている。医師の登録患者は61人で、全新登録結核患者の0.3%。年齢階級別では30~ 39歳が最も多く、1.1%を占める。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版