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次期医療計画で病院にBCPの策定求める

次期医療計画で病院にBCPの策定求める

【厚労省・医療計画検討会】
7医療計画における5事業見直しの方向を議論

検討会に出席する西澤会長(右から2人目)

 厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」は9月9日、2018 年度からはじまる第7次医療計画の5事業(救急、災害時、へき地、周産期、小児)について検討し、見直しの方向を概ね了承した。救急では、かかりつけ医との関係を深めることなどにより、救急車の不要不急の利用を少なくする取り組みを求めることとした。災害時の対応として、一般病院にもBCP(事業継続計画)の策定を促す記載を盛り込む。

 医療計画における5事業は政策的に推進する医療で、①現状把握②医療機能③数値目標④医療機関の名称─を医療計画に記載する。5事業の項目自体は、次期計画でもこれまで通り。今回、項目の内容の見直しを議論した。
 救急医療については、高齢化を背景に、2014年までの10年間で救急出動件数が約95万件(約19%増)、搬送人員が約66万人(約14%増)の増加となっている。2009年以降、6年連続で増加していて、今後も増えると見込まれる。
 救急車が到着しても、医療機関への照会回数が4回以上となるケースは全体の3.2%、現場での滞在時間が30分以上に及ぶのは5.3%ある。特に首都圏など大都市部で、照会に時間を要する事例が多い。
 厚労省は、三次救急医療機関の整備が進む一方で、二次救急医療機関は2011年度以降、年間約100施設ずつ減少していることを指摘。二次救急医療機関によって受け入れる救急患者数に大きな差があることも問題視した。一方、救命救急センターの充実評価に関しては、ほとんどのセンターがA評価となっており、評価基準を見直す考えを示した。

救急車の利用で住民の理解求める

 見直しの方向としては、救急搬送の受け入れ体制を充実させるため、メディカルコントロール協議会を活用し、「搬送困難事例受入医療機関支援事業」を創設する考えを示すとともに、救急車の安易な利用を避けるため、住民への理解を促す取り組みが必要とした。
 また、患者が救急病院にとどまる「出口問題」に対しては、地域包括ケアシステムの構築による受け入れ先の確保に期待を示した。
 委員からは、患者が救急車の利用をためらうような取り組みは避けるべきとの意見が相次いだ。厚労省は「不適切な救急車の利用」を明確に示すことはせず、例えば慢性期の患者では、「医師の診療が必要な場合でもできる限り、地域のかかりつけ医で完結させる」ことなどを求めるとした。
 災害医療については、災害時にも診療を継続できる体制を迅速に整えるためのBCP(事業継続計画)の策定を医療機関に促すことを提案した。BCPを策定しているのは災害拠点病院でも2013年の時点で3割程度にとどまる(策定中含む)。EMIS(広域災害救急医療情報システム)の導入とあわせ、一般病院にも策定を求めていくとした。
 へき地医療については、へき地医療拠点病院の充実を謳い、指定要件の見直しを行う方向だ。具体的には、「巡回診療」「医師派遣」「代診医派遣」の3事業の実績要件の見直しや段階評価の導入を検討する。これに関連し、全日病会長の西澤寬俊委員は「社会医療法人や病院協会が担っている、へき地医療の現状を改めて把握した上での議論が必要」と指摘した。
 また、「へき地保健医療計画」は医療計画に一本化する。
 周産期医療についても、「周産期医療体制整備計画」を医療計画に一本化する。周産期の医療を確保する圏域は、二次医療圏を原則としつつ、医療資源の実情に応じ、弾力的に設定する方向を示した。北海道などを念頭に、出生数規模や流出入の割合などを考慮して設定するとしている。
 小児医療は小児科を標榜する病院数が減少する一方で、集約化や重点化が一定程度進み、1施設あたりの医師数は増加している。だが小児人口が少なく、拠点となる医療機関がない地域もある。厚労省は日本小児科学会の提言を踏まえ、圏域に小児中核病院や地域小児医療センターのどちらもない場合には、地域振興小児科(独立型)を設置し、地域に必要な医療を確保する考えを示した。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版

 

 

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