全日病ニュース

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ウェブサイト上の不適切表示を規制すべく法改正へ

ウェブサイト上の不適切表示を規制すべく法改正へ

厚労省・医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会

 厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」(座長=桐野高明・東京大学名誉教授)は9月7日、医療機関のウェブサイトの取扱いについて検討結果をとりまとめた。医療機関のウェブサイトは引き続き医療法上の広告規制の対象とせず、美容医療などの虚偽・誇大な表示に対する規制を新設する方針を打ち出した。
 これを受けて厚労省は、来年の通常国会に医療法改正案を提出する方向で検討を進める。
 規制の範囲は、美容医療や自由診療に限定することなく、医療機関のウェブサイトに共通の規制とすることとしている。また、規制の実効性を高めるため、監視・是正体制を強化する必要があると指摘。規制の内容や違反事例をガイドラインで明確化するほか、不適切なウェブサイトの情報収集を行い、都道府県に提供するネットパトロール監視体制の構築を提案した。
 医療機関のウェブサイトに対し、医療法による規制が新設されることになる。
美容医療に関するトラブルが増加
 医療に関する広告は、国民・患者保護の観点から、医療法で認められた事項以外は広告することが禁じられてきた。しかし近年では、国民・患者に情報提供し、選択を支援する観点から客観性・正確性を確保できる情報は広告可能とし、その範囲を順次拡大してきている。
 具体的にどのような情報が医療広告に当たるかは、「医療広告ガイドライン」(2007年3月30日医政発第0330014号医政局長通知)で判断基準が示されている。それによると、医療法上の広告に関する3要件は、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)、②医業・歯科医業の提供者名または病院・診療所名が特定可能であること(特定性)、③一般人が認知できる状態にあること(認知性)とされている。
 医療機関のウェブサイトは、医療機関の情報を得る目的で閲覧するものであり、この3要件を満たさないことから医療法上の広告規制の対象とされてこなかった。
 一方で近年、美容医療サービスとその宣伝媒体としてのインターネットが一般化する中で、消費生活センターに美容医療に関する相談が寄せられるようになった。こうした中で厚労省は、医療機関のウェブサイトの取扱いを検討。ウェブサイトを一律に広告として規制することはデメリットが大きいことから、ガイドラインを策定して関係団体の自主的な取組みを促すとともに、行政指導により改善を図ってきた。
 しかし、美容医療に関する消費者トラブルは増加を続け、昨年7月には、消費者委員会より厚労省に対し、「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」が出された。
 こうした経緯から、今年3月に「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が設置され、4回の会合を経て検討結果がとりまとめられた。
ウェブサイトの適正化で規制新設
 美容医療分野を中心に医療機関のウェブサイト閲覧を契機として医療機関を受診することが一般化していることから、ウェブサイトにおける情報提供の適正化を図る必要がある。
 ただし、医療機関のウェブサイトを医療法上の広告として扱うことは、患者が知りたい詳細な情報が得られなくなるなどデメリットが大きい。このため、ウェブサイトは引き続き医療法上の広告規制の対象としないが、虚偽・誇大で不適切な表示に対する規制を新たに設ける方針を打ち出した。
 また、美容医療以外でも不適切な表示があり得ることから、規制の範囲を美容医療や自由診療に限定することはせず、医療機関のウェブサイトに対する共通の規制とする。
 ウェブサイトを適正化するには、医療法の規制の対象とすることに加え、監視・是正体制を強化し、実効性を確保することが重要だ。規制遵守を徹底するため既存の体制や取組みを前提とせず、新たな効果的な方法を講じるべきとし、ネットパトロール監視体制の構築やプロバイダによる違反広告の削除基準・手続きの整備を提案した。
 患者/消費者教育を重視し、厚労省のウェブサイトにおいて注意喚起・相談窓口の一覧ページを作成するほか、消費者庁や消費生活センター、保健所などを通じて、消費者、患者への注意喚起を実施すべきとしている。
 美容医療の関係団体やインターネット事業者等、すべての関係者の取組みにより、情報提供の適正化を進める方向を指し示している。

 

全日病ニュース2016年10月1日号 HTML版

 

 

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  • [1] 医療機関HPの規制議論が再開 消費者委員会が規制強化を求める|第 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160601/news07.html

    2016年6月1日 ... 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が5月18日に開催され、医療機関
    設けるウェブサイト( ... 医療広告に関しては、医療法を踏まえ、厚生労働省告示と医療
    広告ガイドラインで限定的に認められた事項(13項目)以外は、原則 ...

  • [2] 美容医療のネット広告に規制新設へ|第878回/2016年9月1日号 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160901/news14.html

    2016年9月1日 ... 医療機関ウェブサイト医療法上の広告とすることに対しては、医療情報の提供に
    支障が生じると懸念されている。一方で、美容医療を中心に虚偽・誇大な表示が問題と
    なっていることを踏まえ、不適切な表示を禁止する規制を新設し、情報 ...

  • [3] 「プライバシー尊重と個人情報保護」:みんなの医療ガイド:お知らせ ...

    http://www.ajha.or.jp/guide/12.html

    全日病(全日本病院協会)の「みんなの医療ガイド」の「プライバシー尊重と個人情報
    保護」。国民皆保険制度とは?、日本の医療費、医療機関を受診した場合の医療費、
    高額療養費制度、医療費はどうやって決まる?、混合診療について、特定療養費とは?

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