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「先発品と後発品の価格差を患者の追加負担としてはどうか」

「先発品と後発品の価格差を患者の追加負担としてはどうか」

【厚労省・医療保険部会】
改革工程表に基づき厚労省が議論を提起。反対・慎重が多数

 社会保障審議会・医療保険部会(遠藤久夫部会長)が5月17日に開かれ、厚生労働省は「先発医薬品と後発医薬品の価格差を(先発品を選んだ)患者の自己負担とする」考え方を提案し、議論を求めた。
 この日の議論は反対もしくは慎重に検討すべきとする意見が大勢を占めたが、この課題は経済・財政再生計画の改革工程表で2017年度半ばをめどに結論を出すことが求められており、引き続き検討課題となるのは必至だ。
後発医薬品シェア80%以上の達成時期が課題
 経済・財政再生計画の改革工程表は、「先発医薬品価格のうち後発医薬品に係る保険給付額を超える部分の負担の在り方について、関係審議会等において検討し、2017年央を目途に結論」を出すことを求めている。
 4月11日の経済・財政一体改革推進委員会の社会保障ワーキング・グループで、厚労省は、「薬剤の適正使用に向けた取組」の一環として、①後発品数量シェア80%以上の目標達成時期と求められる更なる使用促進策および②上記も踏まえた先発品価格のうち後発品に係る保険給付額を超える部分の負担のあり方が喫緊の課題であるとし、改革工程表に基づいた取り組みを進める方針を表明している。
 「調剤メディアス」によると、後発医薬品の数量シェアは昨年9月で66.5%。
 改革工程表の「2017年央に70%以上とする」目標に3.5ポイントまで迫っているが、この数字は薬局で調剤されたものだけで、後発品の使用割合が低くなる入院や院内処方は含まれていない。
 改革工程表は、さらに、「2018年度から2020年度末までの間のなるべく早い時期に80%以上」とする目標を掲げ、「2017年央に80%以上の目標の達成時期を具体的に決定する」としている。
 委員からは、「80%は多分クリアできるのではないか」という見方もあったが、80%が「2018年度から2020年度末までの早い時期」に本当に達成されるのか、また「早い時期」をどの時期とするのかについて、後発品メーカーの製造余力の問題もあり、課題となっている。
先発品の薬価を後発品まで引き下げる案も
 厚労省がこの日の部会に示した考え方は、(1)先発品と後発品の差額を患者負担とする、(2)患者負担とするのではなく先発品の薬価を後発品まで引き下げる、という2案。
 (1)は、先発品の使用は「選定療養」と位置づけ、後発品の薬価までを保険外併用療養費として給付し、後発品の薬価を超える部分は、医療機関等が患者から徴収するというもの。
 ただし、この考え方については、患者の立場から、◇先発品を使用した場合に患者負担がこれまでよりも増える、◇患者によっては、身体症状等により先発品を使用しなければならない場合がある─と論点を整理した。
 また、製薬企業の立場から、◇後発品へのシフトが進むために先発品企業の経営に一定の影響が出る、◇需要が大きく増えることによって後発品の安定供給にも一定の影響が出る可能性がある、さらに、◇先発品企業が先発品の価格を引き下げると後発品企業の経営にも影響が出るのではないか─と産業政策面からの論点を示した。
 次に、(2)の「先発品の薬価を後発品まで引き下げる」考え方については、◇先発品と後発品の価格差がなくなるので後発品を使用するインセンティブがなくなるのではないか、◇価格差がなくなることによって、先発品企業だけでなく、価格優位がなくなる後発品企業の経営に大きな影響が出るのではないか─とする論点を提示した。
 この日の議論では、(1)の患者に追加負担を求める考え方に対しては、多くの委員が明確に反対するか、「慎重な議論を求める」姿勢を示し、賛成もしくは前向きな議論を求めたのは経済団体の委員など数名にとどまった。
 (2)の「先発品の薬価を後発品まで引き下げる」案に対しても、「価格競争がなくなるためにかえって両方の薬価が高止まりしてしまわないか」「先発品企業における新薬開発にブレーキがかかる可能性がある」など、疑問視する声が多かった。
 遠藤久夫部会長は「幅はあるものの慎重な意見が多く、積極的に進めようとする意見は見当たらなかった」とまとめた。

 

 

全日病ニュース2017年6月1日号 HTML版

 

 

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