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日本専門医機構の地域医療への対応方針を了承

日本専門医機構の地域医療への対応方針を了承

【厚労省・医師養成検討会】
内科学会が新たな研修プログラムを紹介

 厚生労働省の「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」(遠藤久夫座長)は5月25日、同検討会が求めていた新専門医制度における地域医療への配慮について、日本専門医機構の吉村博邦理事長から新整備指針を改正する方針の説明を受けて了承した。
 また、日本内科学会から新たな研修プログラムの説明を受けた。
吉村理事長が整備指針の改正を説明
 同検討会は、新専門医制度において求められる地域医療への配慮として、①専門医取得は義務付けではない②地域医療従事者や女性医師等に配慮したカリキュラム制の設置③研修の中心は大学病院のみではなく、地域の中核病院等であることの3点に整理。これに加えて、荒井正吾奈良県知事が主張した行政との連携強化、すなわち、機構は研修プログラム承認後も都道府県協議会に地域医療確保の動向を情報提供し、協議会が意見を提出した際は研修プログラムを改善する─の4点に対応して、吉村理事長が新整備指針を改正する考えを示した。
 吉村理事長は同検討会が要望する見直しに対し、日本専門医機構の執行部を昨年7月に刷新し、新専門医制度の見直しを進めた経緯を紹介。新たに策定した整備指針、運用細則、Q&Aをみれば、同様の趣旨が盛り込まれているという認識を示した上で、整備指針の改正内容を説明した。
 専門医取得の義務付けについては、現在、原則として「基本領域学会の専門医研修を受けることを基本」としているが、「すべての医師が取得しなければならないものではない」ことを明確化する。その一方で、「医師として国民に信頼される安全・安心な医療を提供するための専門医研修は適正に施行されるべき」とした。
 カリキュラム制の設置では、現在は「原則として研修プログラム制による研修を行う」としているのを「原則」は維持しつつ、「柔軟な対応を行う」ことを明記する。柔軟な対応を行う対象としては、「専門医取得を希望する義務年限を有する医科大学卒業生、地域医療従事者や出産、育児等により休職・離職を選択した女性医師等、介護、留学など相当の合理的理由がある医師等」をあげた。
 その場合に、「研修カリキュラム制の研修年限の上限は特に設定しないが、少なくとも研修プログラム制で必要とされる期間」を求めている。
 研修場所については、連携病院で採用した専攻医が希望した場合、「できる限り長期間連携病院における研修期間を設定するなど、柔軟なプログラムを作成する」とした。また、「幅広い疾患の症例の豊富な市中病院を重要な研修拠点」とし、「大学病院に研修先が偏らないようにする」との文言を新整備指針に盛り込む。
 都道府県協議会については、荒井知事が、プログラム作成で地域医療への配慮を行ったとしても、「ひとたび研修プログラムが認定された後は、専門研修施設に医師配置が委ねられる」と指摘。その上で、専門医制度が「医師偏在の責任を主体的に持つとは考えにくい」とし、国と地方公共団体が関与することが必要と主張していた。
 この意見を踏まえ、新整備指針では、「研修プログラム承認後も機構は、連携施設等の医師配置の状況を含む研修プログラムの研修実績を各都道府県協議会に情報提供する。協議会は必要があれば意見を提出し機構は、関係学会と調整し、改善を行う」とする。
 厚労省は都道府県協議会が地域で機能するよう、6月中に改めて通知を出すとともに、説明会を開催する方針を示した。あわせて、都道府県に対して開催費を補助する予定であるとした。
 吉村理事長が説明した改正内容を検討会として了承した。吉村理事長は6月2日の理事会で正式に新整備指針を改正する予定を示した。
内科学会の取組みを評価
 同日の検討会では、近畿大学医学部教授の宮崎俊一参考人が内科領域の研修プログラムを説明した。委員からは、「地域医療への配慮」と「キャリア形成への配慮」を両立させる取組みを評価する意見が相次いだ。
 宮崎参考人によると、当初は「厳正な整備基準」に基づき、プログラム作成に着手したが、様々な関係者の意見を踏まえ、基幹施設の要件などを見直したという。
 大学以外の市中病院の手上げを促進した結果、当初200 ~ 300のプログラムの予定が昨年の段階で523と、ほぼ倍増した。基幹施設の8割以上が市中病院で、基幹施設と連携施設の総数は現制度の2.4倍の2,937施設になった。
 専攻医のキャリア形成へのきめ細かな対応を可能とするJ-OSLER という専攻医登録評価システムに委員の注目が集まった。修了要件の見直しやプログラムの改善をリアルタイムで客観的に検証できるシステムであり、施設の規模によらず、研修・指導に前向きな施設やプログラムを把握できるという。
 また、「全国どこのプログラムでも研修実績が損なわれることなく、研修の中断や再開が可能」と説明した。
 委員からは、同システムを、他の学会にも導入すべきとの意見が出た。なお、他の学会のヒアリングも次回以降に実施する予定だ。

 

全日病ニュース2017年6月15日号 HTML版

 

 

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    2017年4月1日 ... 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は3月17日に会見を開き、同日の理事会で専門医
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  • [2] 新専門医制度は2018年度から一斉にスタート|第876回/2016年8月1 ...

    http://www.ajha.or.jp/news/pickup/20160801/news01.html

    2016年8月1日 ... 日本専門医機構(吉村博邦理事長)は7月20日に理事会を開き、当初予定していた
    2017年度からの新専門医制度の実施を1年 ... 新たなプログラム研修を開始する
    学会には、地域医療に十分配慮することを要請した上で、暫定的なプログラムとして
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    専門医の位置づけ、いわゆるダブルライセンス問題、専門医取得しない選択肢も ...

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  • [5] 1 平成 28 年 6 月 7 日 新たな専門医の仕組みへの懸念について 公益 ...

    http://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/160608_1.pdf

    2016年6月7日 ... 日本医師会、四病院団体協議会ともに、2 年前の日本専門医機構の発足当. 時から
    社員 ... 新たな専門医の仕組みにおけるプログラム作成や地域医療に配慮した病院群
    ... ように十分配慮した上で、専門医研修を始めるよう、一般社団法人日本専門医 ... で
    活躍している医師が、専門医取得、更新を行うにあたり、医師の診療体.

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